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第10回 金が下落する時を考える

金が下落する時を考える

金は上がる中長期的に見れば間違いなく、という論調をよく目にします。貴金属のこの10年の値上がりが顕著でさらにリーマンショック後も上昇しているためにそのように考えるのでしょう。この考え方はある意味で正しい主張と考えられます。なぜならば、「インフレ率がプラスであるならば、物価はそのインフレ率に応じて上昇する」からです。

例えば、昔の日本のタクシーは円タクと呼ばれ、1円でどこまででも乗っていくことができました。しかし今の東京地区のタクシーの初乗りは710円です。この差はどこから出てくるのか。経済成長、それに伴うインフレが背景です。時々庭先で小判が見つかると、「現在の価値で○○円」です、とニュースで報じられますね。この「現在の価値」に引き直すときに使われるのが物価上昇率(インフレ率)なのです。しかし最近はいろいろなニュースやブログを見ていると、「初乗りの710円は高すぎる」という声を聴きます。それは物価がデフレで下落しているにも関わらず料金が下がっていないためです。2006年~2007年にかけて原油価格の高騰や円安の進行で物価上昇率がプラスになったことはありますが、それ時期を除けばこの15年近く日本はデフレの状態が続いています。言葉を変えると、日本ではデフレ状態なので金価格がこれからも上昇する、という理屈が成り立たなかったのです。

日本物価前年比上昇率


(出所:総務省)

では、日本では金価格は未来永劫上がらないのでしょうか? それはそんなことはありません。ここまでの解説からもお分かり頂けるように、①円安が進む、②インフレ率がプラスになる、ということが起きれば円建ての金価格は上昇することになります。金融緩和、円安誘導に積極的な安倍政権の誕生により、①、②の両方が成立する可能性が高くなってきました(それは実際に既に発生していますが)。来るべき日本のインフレに備えるという意味で金をポートフォリオに組み込むことは一考に値する戦略です。

では、金は未来永劫「右肩上がりに」上昇を続けるのでしょうか? 世界の物価上昇率がプラスであればそれは成り立つでしょうし、その可能性は高いと考えられますので名目価格は上昇を続けると考えておいた方が良いでしょう。しかし、そればかりではないと私は考えています。全ての資産に同じことが言えますが、上昇する材料を列挙するばかりではなく、「どのようなときに下落するのか」を整理しておくことは今後、金をポートフォリオに組み込んでいくうえで非常に重要です。それは株が右肩上がりに上昇を続けると思ってポートフォリオに組み込んでいる人ばかりではないことと同義です(銘柄を随時入れ替えている人は多いのではないでしょうか)。そのため、2002年以降のドル建て金バブル(金の急上昇)の背景を今一度整理してみる必要があります。

ここまでの金価格上昇にはいくつかの理由がありました。列挙すると、①景気後退を受けて名目金利(政策金利)を中央銀行が低く抑える一方、金融量的緩和を行っているため物価上昇率がプラス(貨幣供給によるインフレ)となり実質マイナス金利の状態が発生していた(「インフレヘッジと金」をご参照下さい)、②金現物ETFなどの新商品の投入により、株式市場の資金が金市場に流入してきた(「金ETFの衝撃」をご参照下さい)、③投資対象としての金の知名度の向上(誰しもが金をポートフォリオに入れるのが当たり前になってきた)、④米国債の格下げや欧州危機の深刻化による「究極のリスク逃避先」としての地位が高まったこと(「安全資産としての金-現実的な視点危機的な視点」をご参照下さい)、⑤景気刺激のための米国の強力な金融緩和の影響でドル安が進行したこと(「金は為替か? コモディティか?」をご参照下さい)、⑥新興国の貿易収支の改善に伴う準備金の増加で金の積み増しが行われたこと(「金の需要について」をご参照下さい)、などがその要因です。しかしこれらの要因が剥落した場合には、金価格には下押し圧力がかかることになります。次にそれがどのような状態で発生するかを検証してみましょう。

①は現在の低金利政策が終了し政策金利の引き上げが検討された場合、欧米の経済政策が失敗に終わり欧米もデフレになった場合、量的緩和が解除され貨幣供給インフレが鎮静化した場合です。恐らくこれは最後の貨幣供給インフレが鎮静化した場合に発生する可能性が高いと考えられます。②はETFを通じた資金流入が終了した場合つまり、配当並びにキャピタルゲインが期待される株式が金よりもより選好された場合です。これは景気が本格的に回復した場合がそれに該当します。しかし株価の上昇が継続し「真正のインフレ」が発生した場合には再び金が物色されることになります。
③は「なんで金に投資していたんだろう」と皆が考えるようになった場合です。ですが有史以来、金が投資対象とならなかった時代は小職の知る限りでは数えるばかりだったと思います。ですので、濃淡はありますが、「なんで金に投資していたんだろう」と考える人が出てきて価格が下落した場合には、「なぜ金に投資しないんだろう。これだけ安くなってきたんだから」と、安値拾いの買いを入れる人が出てくる可能性の方が高いと言えます。これは金の知名度の向上の副産物的効果です。
④は欧州危機が一巡し、米国債の格下げが見送られているため徐々に顕在化しつつあるといえましょう。⑤は米国のドル安進行が回避された場合です。現在シェール革命で米国のエネルギー輸入による貿易収支の悪化には歯止めがかかりつつありますし、景気回復期待で良い金利上昇が起き始めていますので、これも④に続いて顕在化しつつあると言えます。
⑥は2010年以降の世界経済は先進国主導の時代から新興国主導の時代に移りつつありますので、目先急に下落要因になることはなさそうです。

このように、状況を整理してみると「ドル建ての金価格は右肩上がりの上昇を続けていくわけではない」と結論づけることができます。金がETFや新興国の勃興によるマネーフローの変化によって急速に上昇してきましたが、そういった「放っておいても右肩上がりに金価格が急騰する」状況が再び来ることは難しいと考えられ、今後は物価上昇に合わせたペースで納得感のある形で上昇(ないしはデフレの国は下落)して行くことになると思います。しかし、いずれにしても大切なことは、この10年間で金は「ポートフォリオに組み込むべき資産である」という考え方が幅広く投資家に受け入れられたことです。ですので、今後、金価格がかつてのように現在の生産コスト(世界平均で800ドル/トロイオンス程度。2011年末時点)を大幅に下回って推移することはないでしょう。これは金以外の原油や銀、銅といった商品にも当てはまることです。

今回の「金・新解体新書」で連載は終了しますが、この10回の連載をお読みいただいて金にご興味を持たれた方はぜひ、原油や銅などのその他の商品についても興味の幅を広げて頂ければ非常にうれしく思います。また紙面でみなさんとお会いできる日が来るのを楽しみにしております。10週間ありがとうございました。

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