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第8回 金の需要について

金の需要について

前回のレポートでは金の供給について解説しました。今回は需要について解説したいと思います。まず、金の用途別の需要について見ていきましょう。

金の需要は用途別では、「実需用」と「投資需要」と「その他」に分けることができます。実需用は、宝飾品向け、産業向け、歯科向けに分類され、投資需要は、地金、公的コイン、メダル/模造コイン、ETF等の投資商品に分類されます。その他は鉱山会社のヘッジ買い戻しと公的部門の購入に分類されます。
一般に金の実需のことを貴金属市場では加工需要と呼んでいます。加工需要のうち圧倒的に比率が高いのが宝飾品需要で、2011年の実績では加工需要の81.3%を占めます。次いで比率が高いのがエレクトロニクスの接点部品として用いられる工業需要で重要の16.9%、最も比率が低いのが歯科用で1.8%となっています。特に歯科用はセラミックの普及等もあり、構造的に需要が減少しているようです。下のグラフはこの10年の加工需要の推移と金価格(暦年の平均値)を示したものですが、加工需要は金価格が上昇すると減少していることが分かります。価格上昇が需要減少に繋がる「レイショニング」が発生しているためと考えられます。

加工需要と金価格


(出所:GFMS、CME)

もう少し詳しく加工需要と価格の関係を見てみましょう。次のグラフは金の加工需要と金価格の回帰分析を行ったものです。グラフは横軸が金価格(ドル/トロイオンス)、縦軸が加工品需要(トン)となっています。グラフの中に「1,227と2,483」という数値が出ていますが、これは「その年の金の平均価格が1,227ドル/トロイオンスの時に、加工需要が2,483トンだった」ということを意味しています。一見して分かるように、金価格が上昇すると需要が減少し、金価格が上昇すると需要が増加していることが分かります。
更に、グラフの中の式(y=-0.7687 x+3,392.6、y:加工需要(トン)、x:金価格(ドル/トロイオンス))も金の価格が上昇すると需要が減少することを示しています。この式のことを回帰式と呼びますが、xにその時の金価格を代入すると、その価格に対応する加工需要の推測値(y)が求められます。xに掛っている係数が「マイナス0.7687」ですので、金価格(xの値)が1上昇すると、金の加工需要が0.7687トン減少し、逆に金の価格が1ドル下落すれば、金の加工需要は0.7687トン増加することを意味します。この数式の意味をまとめると、「金価格の動きと、加工品需要の動きは逆の動きをする」とまとめることができます。
R2は決定係数と呼ばれます。簡単に言うと、加工需要の増減の64.48%は金価格の変動によって説明が可能であることを意味します。逆に言うと加工需要の35.52%は金価格の変動以外の要素で決定されるということです。

  • このような統計手法を用いた分析を正確に行うには、統計的な誤差を考慮する必要がありますが話があまりに専門的かつ複雑になりますので、今回の解説では割愛しています。

金価格と加工需要の関係


(出所:GFMS、CME)

余談ですが、宝飾品向け、産業向け、歯科向け需要の中で最も金価格動向に敏感に反応するのが歯科需要で、この決定係数はなんと97.4%にも達します。最も金価格動向に反応し難いのが工業需要(エレクトロニクス向け需要)で、説明力は46.0%に留まります。金のボンディングワイヤ(半導体に用いられる極細の接続素材)が銅にパラジウムを被覆したものに置き換わる等の動きは見られますが、特殊な需要であるためあまり金価格の変動に影響を受けないものと考えられます。

次に投機需要を見てみましょう。投機需要は地金、コインその他、ETFによって構成されていますが、この中で最も比率が高いのが地金需要で、投機需要の70.4%を占めます。次いで比率が高いのがコインその他で19.6%、ETFの10.1%となっています。グラフは2000年~2011年迄の投機需要の推移ですが、保有手段に違いはありますがこの間、金価格の上昇と共に需要が増加していることが分かります。投機需要の増加が金価格を押し上げていると言ってもいいでしょう(逆に投機需要が無くなれば金価格は下落する可能性が高いとも言えます)。

投機需要と金価格


(出所:GFMS、CME)

こちらも先程の加工需要と同様に、回帰分析を行ってみましょう。結果はグラフのとおりで、金価格の上昇に合わせて投機需要が増加していることが分かると思います。金価格の±1ドル/トロイオンスの変化に対して投機需要は±1.1747トン変化するということです。

金価格と投機需要の関係


(出所:GFMS、CME)

また、投機需要のところで説明をしなければならないのがETF(上場投資信託)の登場です。ETFに関してはいろいろなレポートで解説されていますのでここでは詳細な説明を割愛しますが(詳しくは来週掲載予定の「金ETFの衝撃」をご参照ください)、ETFの重要なポイントは、①金現物の裏付けがある上場投資信託であるため、投資家には実際に金現物を保有していなくても金現物保有と同様の効果がある、②株式市場に上場されているため株式市場の資金を金市場に呼び込むことに成功した、③金を有価証券化したことにより年金資金等の機関投資家が参入しやすくなり市場規模・流動性の改善をもたらした点です。ETFの登場によって劇的にマネーフローが変わったのです。また市場参加者の裾野が拡大することで、投資資産としての金の知名度が向上したことも見逃せない点でしょう。現在の金価格はこうした投機のマネーフローの変化によって引き起こされたと言ってよいと思います(これは投機需要のところでも説明しましたが、投機が金市場にメリットを見出さなくなった場合、この流れが逆転する可能性があるとも言えます)。

ここまでをまとめるとこの10年間、金価格・加工需要・投機需要の間には、「金価格上昇・加工需要減少・投機需要増加」、「金価格下落・加工需要増加・投機需要減少」という関係が存在するということが分かりました。

その他の需要の内、鉱山会社の買い戻し(ヘッジ外し)ですが、鉱山会社は販売する金の価格が下落した時のリスクを回避できるように、先物市場で金を売却したり、プットオプション(金価格が下がった時の保険)を購入したりしています(詳しくは「金の供給について」をご参照下さい)。ですが、2000年以降、金価格が上昇を始めたため鉱山会社はこのヘッジ取引の解消に動きました。簡単に言うと価格の下落を回避するために売っていたものを、逆に更に価格が上昇することを期待して買い戻し始めたのです。現物を市場から買い戻すことになりますのでこれも需要の一種となりますが、現在はこの買い戻しも一巡したようです。

鉱山会社のヘッジ外しと金価格


(出所:GFMS、CME)

最後に公的セクターの買いです。これも供給のところで解説しましたので詳細な説明は割愛しますが、長らく市場に対して金を供給していた公的セクターは2010年以降、ネット買い越しに転じています。これは先進国の金売却が殆ど行われなくなる中で、中国をはじめとする新興国の公的セクターが外貨準備等で買いを入れているためです。外貨準備のリスク分散の観点から今後も新興国の公的セクターによる金購入は続くと見られます。ですが、前述の鉱山会社のヘッジ外しと公的セクターの買いは、現時点で全体の需要に占める比率は加工需要と投機需要に比べると圧倒的に小さいため、その影響は然程大きくないと言えるでしょう。

ここまで用途別の需要を見てきましたが、最後に国別の需要も少し概観してみましょう。上記の通り、金の需要は純粋な工業需要よりも投機的需要の方が多いため、これらの国の消費者も大なり小なり投機的な目的で金を購入していると言ってよいでしょう。特徴的なのは、10年前にシェアの小さかった新興国(特に中国やタイ、ベトナム等。インドはそもそも消費が多かったがこの10年でさらにシェアを伸ばしている)の需要増加が顕著なことです。このことはこの10年で新興国が国力を伸ばし、「金を買うゆとり」が出てきたともいえます。


(出所:GFMS)

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