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第2回 安全資産としての金-危機的な視点

安全資産としての金-危機的な視点

私もいろいろな金関連書籍を読みましたが、多くの書籍が「危機発生時の価値保存手段(経済的な価値を貯めておく方法)としての金重要性」を説き、金保有を推奨する内容でした。金はそのもの自体が価値を持つため、確かに危機が発生した時も価値保存手段として機能してくれそうです。
今回のコラムでは、危機が発生した時に具体的に何が起きるかについて考えてみたいと思います(併せて「安全資産としての金-現実的な視点」もチェックしてみて下さい)。

まず日本の財政が破綻する場合を考えてみましょう。日本の財政が破たんして国債のデフォルトが発生した場合、日本国債の価値が急落すると考えて下さい(今回の欧州危機におけるギリシャの例を見てもそれはお分かり頂けると思います)。デフォルトとは、償還される国債の償還元本ないしは月々の利払いが税収または新発国債の発行、国有資産の売却によって賄うことができない場合に発生します。「日本は国内で国債が消化されているのでデフォルトしない」という論調を目にすることがありますが、今後、高齢化が進む中で高齢者が生活のために預貯金を取り崩す可能性が高いこと、原子力発電所の停止による化石燃料需要の増加(海外から「燃やしてなくなるもの」を購入するため、資金が単純に日本国外に出ていく)等の影響によって、国債を購入するための資金が減少していく見込みですあることから、この図式が未来永劫保証されるわけではありません。

財政が厳しくなってくると国は様々方法で財政破綻を回避しようとします。もし財政危機が現実的になってきた場合、日本国憲法で認められている財産権を侵害する訳にはいきませんので、所得税の引き上げや財産税の導入等の課税強化によって税収不足を補おうとすると考えられます。この場合には金や株、国債、現金等の資産の種類に拠らず課税が強化されるはずですので、資産配分を変更することで対応することは現実的には困難です。資産を全て持って財政が健全な国に移住する、といったような選択をする以外の方法は恐らくないでしょう(海外移住に関わる資産持ち出しに関する税制は専門外ですので、ここでの説明は割愛します)。

次に歳出を削減する方法も考えられます。これも現在欧州で発生していることですが、この場合景気が悪くなり失業するリスクが高まりますので、預貯金等の保有額を増加させておく必要があります。ですがそもそも財政が厳しくなりますので債券の価値は下がるでしょうし、景気は悪くなりますので株価も下がります。この場合、自国以外の資産を購入するといったリスク回避の行動が強まると考えられ、特定の国のリスクを取らないで済む金や原油といった資産も当然物色されますので、金は有効な資金の逃避先ということになります(恐らく円安も進みますので、円ベースの「見た目の価格」は増加することが期待されます)。

また、日銀がお札をたくさん刷って国債を引き受ければ良いという意見もあります。国債の償還原資は私たちの税金です。この裏付けがないままに大量に紙幣を刷って日銀が国債を引き受け続けた場合、国債の価値が低下するのはある意味当然でしょう。財政規律に歯止めがかからなくなりハイパーインフレが発生、誰も価値のない国債を欲しがらなくなり最悪の場合デフォルトすることになります。この場合、国債がデフォルトしなかったとしても紙幣の増発はおカネの価値を引き下げるインフレ政策そのものですので、実物資産である金価格が上昇するのは、前回の説明の通りです。

実は戦後の日本はこれと似たような事が起きました。戦後の物資不足によって物価が上昇し、さらに旧軍人への退職金の支払いや、物価高騰に対応するための預貯金の引き出しが激しくなって銀行券の発行高が急激に増え「猛烈なインフレ」が起きたことがあったのです。戦後という特殊な状況での猛烈なインフレですので、現在の日本の状況と同じではありませんが、この時に起きたことは示唆に富みますのでここで説明します。

その後日本政府は、このインフレを抑制する目的で、1946年2月16日、「金融緊急措置令」と「日本銀行券預け入れ令」を柱とする総合インフレ対策を発表しました。この話を詳細にすると長くなりますので簡単に説明すると、まず預金の支払いを停止してさらに市中の現金を強制的に銀行に預金させ、更にこれも払い出せないようにした上で、「一定金額だけ新円での引き出しを認める」という新円への切り替えを進めました。この期限までに預けられなかった旧円は期限到来と共に無価値となりました。更に、預け入れた資産に対して財産税が課税され(最高税率は90%、実質的には国庫への財産没収)ました。結局、インフレ抑制のための政府の対策で保有していた預貯金がなくなる、ということが発生したのです。

この間、猛烈なインフレが発生しました。終戦年の1945年に4.8円/グラムだった金価格は、5年後の1950年には401円/グラムまで上昇しています。上昇率は実に8,254%です。その他の商品価格の上昇率も日銀データを元に見てみると、1945年の終戦直後の平均物価水準は3.503(昭和9年~昭和11年=1.0)でしたが、5年後の1950年には246.8まで上昇しました(上昇率は6,945.4%)。生活に必要な食料品やエネルギーは特に上昇が顕著で、おのおの9,843.3%、8,291.2%上昇しています。

生活に必要な商品の価格がズバ抜けて上昇しているのはある意味当然ですが、金は必需品でないにもかかわらず、顕著に上昇しています。これは円という通貨自体の信用が国内で無くなってしまっているため、古くから通貨としての価値が認められている金が「円の代替通貨」として物色されたためです。金がそのように信じられているのは、金本位制が採用されていたことが影響していると考えられます(これは「金は為替かコモディティか」の回で解説予定です)。金以外にも自分の国の通貨が信用できなくなった場合(上記の日本の様な状況が発生する事が懸念される場合)、新興国等で米ドルや人民元が決済通貨として用いられるケースがあります。

金が「最悪の危機時」に最も強い通貨、価値保存手段であることがお分かり頂ける例の1つです。

日本国内金価格推移


(出所:田中貴金属)

全商品平均 食料用農産物 その他の食料品 繊維品
6,945.4% 9,843.3% 6,600.4% 9,642.7%
化学製品 金属・機械 建設材料 燃料・動力
3,523.7% 7,071.0% 5,292.8% 8,291.2%

(出所:日本銀行)

正直なところGDP3位の日本で財政破綻が起きる状態はあまり想定できません。もしそれが起これば世界経済に与える影響は尋常なものに収まらないと予想されるため、何としてもそれを食い止めようとすると考えられるためです。欧州危機時に新興国政府・中央銀行がユーロから金等に資金の投資配分を変更する動きが見られましたが、各国の危機対策進捗の影響もあってそれほど大規模なものにはなりませんでした。結局、先進国でのデフォルトは実際には起きないだろう、と多くの市場参加者が考えているのが現実なのではないでしょうか。

それでももし破綻リスクが不安である、ということであればここまで説明指せていただいた通り金は有効な資金逃避先ですので、総資産の3%~5%を金に投資することをお勧めします。ちなみに3%の算出基準は年金運用大手の「カルパース」の直近のインフレ資産(金を含む)への投資比率が総額の3%程度となっていることによるものです。逆に言えばそれぐらいの数量がポートフォリオに入っていても不思議ではないということです(ポートフォリオ総額が200万円ならば、6万円~10万円程度)。

日本以外の主要国が破たんするリスクを警戒しているのであれば、その破綻してしまった国で保管されていないのであれば、保護預かりや金価格にリンクするETF等を購入しておけば問題ないでしょう。米国債の格付けに問題が無ければ引き続き米国債が選好されると思いますが、その危機が取り上げられた場合には金価格は米国債よりも上昇しますので、「価格上昇メリット」を取りたいのであれば、米国債ではなく金の保有が推奨されます。

いずれにしても「危機発生を信じるならば、金を買っておくべき」という結論になります(ただし米国債の信用が急落してドルも下落した場合、ドル建て資産である金価格は円ベースでは下落しますのでご注意を)。

金・プラチナ等のリスクと費用について

お預かりする金・銀地金は、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)の受渡供用品銘柄として規定された純度99.50%以上の金、及び純度99.90%以上の銀地金です。プラチナ地金は、純度99.95%以上のロンドンプラチナ&パラジウム市場(LPPM)の受渡供用品銘柄として規定されたプラチナ地金です。

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