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第3回 安全資産としての金-現実的な視点

安全資産としての金-現実的な視点

金が安全資産、と呼ばれることがあります。金融に携わっていない人からすれば「よくわからないけれど、持っていれば安心・安全な資産」と思ってしまいがちです。恐らく、「どんどん上昇して価格が下落するリスクが無い」という意味で安全資産と思っている方も多いでしょう。でも、永遠に上がり続ける資産は存在しません。今回のこのコラムでは短期・中期的な「現実的な視点」で安全資産としての金について考えてみたいと思います(併せて前回のレポート「安全資産としての金-危機的な視点」もチェックしてみて下さい)。

金の値動きの仕組みを理解する上で必要ですので、「安全資産」の定義について考えてみたいと思います。まず、私が日々いろいろな方と話をしている中では、「米国債」「ドイツ国債」「金、銀等の貴金属」が安全資産に分類されているようです。場合によると「銅やアルミ等のベースメタル」「原油」が含まれることもあります。

これらに共通する点は、「その必要があれば多少のコストを払えば、高い確率でいつでも現金に換金できる流動性の高い商品」であるというところです。ドイツ国債以外は基軸通貨ドルで取引されていることも共通点の1つです。つまり、この定義を満たしていれば安全資産に分類される可能性が高いと言えます。ですが、「米国債」と「ドイツ国債」だけは、「国の信用力」によって償還確率が変動しますので必ずしも「高い確率でいつでも」現金に換金できる保証がありませんので、「条件付きの安全資産」と言えるでしょう。その他の「実物資産」はそのもの自体が価値を持っているため、「売却価格に保証はありませんが必ず換金できる」ので、安全資産であると考えられます。

なお、米国債と貴金属・ベースメタルは全く異なる資産クラスですが、比較をする上で分かりやすいように、貴金属やベースメタルを保有することを別の言葉を用いると、「絶対に破たんしないドルペッグ制(ドルの価値に自国通貨の価値が連動する)の国の物価連動債を購入しているのと同じ経済効果を持つ」と言えます。少しはイメージしやすいでしょうか?

米国債と貴金属・ベースメタルで共通していない点は、米国債は利息を生みますが、貴金属・ベースメタルは利息を生まないという点です(正確には、保有する金をリースの形で貸し出せば、リース料が入ります。ですが、リースレートが低いことや機関投資家でない場合、そんな面倒なことをして金を貸し出そうとは思いませんので、利息が付かないという整理が適切です)。もし長期に渡って保有する場合には、米国債を購入しておいた方が「利息」が付きますのでドル建て安全資産に投資を行う場合には市場参加者は米国債を選好します。

市場規模が大きく取引の流動性が高いことも米国債が選好されやすい理由の1つです。米国の国債発行残高は2011年末で15兆2,000億ドル(米国の「債務残高」ではない。債務残高には政府借入金も含まれる)であるのに対して、今までに掘られた金の合計数量を「潜在的な金市場規模」と考えると、有史以来人間が掘ってきた金の総量を巷でよく言われているプール3.5杯(競技用プール50メートル×25メートル×2メートル)とし、金の比重を19.3グラム/cm3、金価格を1,800ドル/オンスとして計算すると約9兆7,700億ドルとなります。この金は工業向けに使われているものや、市場と無縁の人が保有しているケースもあるため実際にここまでの市場規模ではないと考えられますが、燃えて無くなってしまう原油等の商品と比べた場合、その潜在的な市場規模は大きいといえます。ですが、信用状態に問題がない時、金は米国債の流動性にはまだ勝てないのです。

ではここで、市場参加者はどのような場合に金をドル建て安全資産として物色してきたかを見てみましょう。冒頭で解説した通り、国債が「信用力によって償還確率が変動する」ことももちろんなのですが、むしろ現在は、「米国債の利回りが低下しすぎて金利収入のメリットが取れないときに」物色される傾向の方が顕著なようです。上記の通り流動性や金利収入等のメリットがあるためまずは米国債やドイツ国債が物色されるという基本的な構造は変わっていないようです。

下のグラフは昨年2011年8月にS&Pが米国債の格付けを引き下げる、「米国債ショック」が起きた時の、主要資産クラスの価格を8月5日の格下げ当日の価格を100として指数化したものです。結果を見ると米国債格下げ時に金価格が顕著に急上昇しているのが分かります。しかし同時に、格下げ対象となっている米国債はドイツ国債と並んで価格が上昇(利回りが低下)しています。

そもそも今回の米国債格下げは2011年の5月頃から織り込まれていたため、1段階の格下げに留まったことが最終的に買い安心感につながったようです。つまり、米国債の信用は今回の格下げ時においても揺らがなかった、と整理することができます。

米国債格下げ後の主要資産クラスの価格(格下げ日=100)

しかしこの時、米国債が「予想以上に」積極的に物色されるという事態が起きました。これによって米国債の利回りは急低下します。念のために説明しておきますが、国債の利回りが低下するということはその国債が買われていることを意味します。利回りが低下するということは米国債投資の魅力(上昇余地)が低下したとも言えます。そのために、「同じドル建て資産クラスで、流動性が比較的高い金が物色される流れになってきている」と考えた方が適切かも知れません。金が米国債の代替運用資産としての位置付けになっているとも言えるでしょうか。

2011年5月以降の金価格と米国債10年債利回りの推移

昨年の5月からの金と米国債利回の推移をグラフにしてみるとこのことはよく理解できます。米国債の格下げの可能性が言及された2011年5月以降、金価格は上昇を始めました。米国債の価値が格下げによって大幅に下がる可能性が嫌気されたためです。これは質への逃避の時期だったと言えます。その後は米国債の利回りが低下する局面で代替安全資産として金が物色されるという動きになっています(米国債利回り低下・金価格上昇)。そして2012年の春先以降、米国債の利回りは低下(価格は上昇)しますが、金価格は下落します。これはギリシャを初めとする欧州危機問題の深刻化を受けて、「利息を生まない安全資産」である金が手仕舞い売りの対象となったためと考えられます。以前は(今でも)金は通貨との認識が強いですが、新しく市場に参入した人からすればドル建てで取引される「コモディティ(リスク資産)」の1つです。米国債やドルに問題がないときには市場参加者のリスク回避姿勢が強まると、金もリスク資産として売却されてしまいます。

その後、2012年7月以降金価格は顕著に上昇します。これは、QE3の影響で米国債利回りが低水準を維持しているため、国債の魅力が低下し同じドル建て安全資産の金が物色されたためです。今回のQE3は住宅ローン担保証券に購入対象を限定していますが、もし米国債がQE3の買い取り対象になった場合、米国債利回りの低下が予想されるのでその時には金はより積極的に物色されると考えられます(少し話がそれましたが、追加量的緩和が金価格を押し上げる仕組みの背景にはこんな現実的な理由もあると考えられます)。

「安全だから買われている」、というロジックだけではこの間の価格上昇は綺麗に説明しきれないのです。

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