昨年12月に開催された注目のEU首脳会議では、ユーロ圏17カ国と他のEU加盟国が財政規律強化に向けた条約締結を目指すことで合意。財政再建への取り組みが進展することで、中長期的な不安については懸念後退の道筋が一応つきました。
ただ、こうした取り組みには時間がかかり、目先の短期的な不安についての懸念は払拭できていません。これから春先にかけて相次ぐ国債の償還と入札スケジュールが与える影響は!?
このコーナーでは、当社のマーケットアナリスト土信田雅之がユーロ通貨に影響を与えるイベントや経済指標のうち、特に重要なものをピックアップ。今後の見通しを占います。
イベント | 経済指標 | |
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1月25日 | 18:00IFO景気動向 | |
1月30日 | 欧州首脳会議 | |
1月31日 | 伊国債入札(2年債:90億ユーロ) | 19:00ユーロ圏失業率 |
2月1日 | 伊国債入札(5年債:100億ユーロ) 伊国債償還(258億ユーロ) |
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2月9日 | 19:00ユーロ圏PPI | |
2月9日 | ECB理事会(政策金利発表、21:45) | |
2月14日 | 19:00ZEW景況感調査 | |
2月15日 | 19:00第4Qユーロ圏GDP | |
2月19日 | ||
2月23日 | 18:00IFO景気動向 | |
2月26日 | G20財務相・中央銀行総裁会議(メキシコシティ、25日~26日) | |
2月28日 | スペイン国債償還(13億ユーロ) | |
2月29日 | 19:00ユーロ圏CPI | |
3月1日 | EU首脳会議(1日~2日) 伊国債入札(3年債:90億ユーロ、10年債:120億ユーロ) 伊国債償還(149億ユーロ、123億ユーロ) |
19:00ユーロ圏失業率 |
3月2日 | 19:00ユーロ圏PPI | |
3月5日 | アイルランド国債償還(55億ユーロ) | |
3月6日 | 19:00第4Qユーロ圏GDP | |
3月8日 | ECB理事会(政策金利発表、21:45) | |
3月13日 | 19:00ZEW景況感調査 | |
3月14日 | 19:00ユーロ圏CPI | |
3月20日 | ギリシャ国債償還(3年物:145億ユーロ) | |
3月26日 | 18:00IFO景気動向 |
カレンダーの記載内容にもある通り、欧州では3月末にかけて様々なイベントや指標の発表が予定されています。(赤文字は特に注目)欧州の情勢は、債務問題という言葉にあるように、簡単に言ってしまうと、「国の借金が返せるの?」ということなのですが、ギリシャから始まった問題はユーロ体制そのものにも懸念が波及するなど、複雑・拡大化してしまっています。
問題改善のためには、「これ以上借金(債務)を増やさない」、「返済資金を調達できるようにする」などを通じてデフォルト(破綻)させないことが必要です。なお、事態が深刻なギリシャではさらに、「借金の一部を帳消しにしてもらう」という協議も行われています。また、被害を拡大させないために、「セーフティネット(安全網)の整備&強化」も重要です。
そのため、欧州のイベントを見ていく際には、それぞれの注目点やポイントを押さえる必要があります。
昨年12月に開催されたEU首脳会議で、ユーロ圏17ヶ国と他のEU加盟国(英を除く26ヶ国)が財政規律の強化に向けた協定の締結を目指すことで合意しました。その主旨は、「財政規律を各国の憲法に明記」し、「規律が守れなかった場合には、EUの機関を通じて制裁を課す」というものです。各国議会での承認後に協定締結を目指す段取りになっています。事態の改善に向けて一歩前進したと言えますが、現時点(2012年1月16日)では草案段階です。引き続き協定案の具体的な内容や各国議会の承認状況など、政治動向が重要になります。
1月末と3月あたまにEU首脳会議が予定されていますが、こうした財政協定への取り組みはもちろん、格付け会社S&Pがフランスを含む9ヶ国を格下げした影響による、EFSF(欧州金融安定ファシリティー)やESM(欧州安定メカニズム)などのセーフティネットへの対応のほか、景気対策についても議題となる可能性が高く、もっとも重要度の高いイベントとなりそうです。
過度な財政再建は、「緊縮財政→景気減速→赤字拡大」という悪循環に陥ってしまいかねず、財政再建と景気下支えのバランスが重要です。よって、債務問題に加えて景況感もテーマとなり、EU首脳会議での議論の行方やECB理事会での金融政策(利下げ)動向、経済指標の結果などに注目が集まりそうです。経済指標については、ユーロ圏全体の指標はもちろん、欧州経済を牽引しているドイツの指標(IFO景気動向、ZEW景況感調査など)にも注目です。
また、イタリアやスペイン、ギリシャなど南欧の懸念国を中心に、国債の償還と入札スケジュールが相次ぎます。特に、大量の償還を控えるイタリアや、3月に償還予定のギリシャが警戒視されています。
これら懸念国の国債利回りは高止まり傾向にあるため、資金調達コストが高く、借り換えに対する不安が燻っています。ECBによる国債の買い取りや、金融機関に対して昨年末に実施したような資金供給オペを通じて国債購入を促すなど、債券市場を支える当局の対応が予想されますが、これまで市場の一部で期待されてきたEU共同債の議論が進展することになれば、ポジティブサプライズになる可能性があります。
なお、ギリシャが懸念されているのは、同国への第二次支援策(1,300億ユーロ規模)がまだ実施されていないためです。支援実施の条件として、民間債権者との債務交換協議をとりまとめる必要があるのですが、現時点で合意に至っていません。このまま合意に至らないとデフォルトとなってしまうため、ギリシャについては、償還を迎える前までに支援を得られるかが焦点になります。
新光証券(現みずほ証券)、松井証券を経て、11年10月より現職。
日本テクニカルアナリスト協会会員。日本国内の市場はもとより、過去に中国への留学経験もあり、中国の最新事情にも精通している。
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