前回は低PERランキングを使う場合の落とし穴をご説明しましたが、実はPER自体にも落とし穴がいくつかあります。いったいどのようなものか、そして落とし穴に落ちないための実践的な手法をご紹介します。
個人投資家にとって手掛けやすいのが「割安株」への投資。「安く買って高く売る」投資の極意にも合致した正統派の戦略です。
割安株を見つけるとき、最も多く使われる投資指標としてPERがあります。PERは「株価÷予想1株当たり当期純利益」で求められるため、誰でも簡単に計算ができます。
しかし、個人投資家がPERを用いて銘柄選びをすると、多くの場合失敗します。なぜなら、PER自体に落とし穴がたくさんあるからです。以下で1つずつ見ていきましょう。
結論から申しあげますと、PERの分母の予想当期純利益はあまり当てになりません。
決算発表シーズンになると、多くの企業が業績予想の修正を行うことは皆さんもご存知だと思います。まさにこの事実こそが、予想当期純利益の額が当てにならない理由です。
さらには、プロ投資家による各企業の独自の業績予想も結構外れることが多いです。
プロ投資家は、情報や知識を駆使して各企業の利益を予想しますが、それでも正確に予想することは至難の業なのです。
企業が業績予想の修正を発表する際、株価が大きく上下に動くことが非常に多くありますが、これは予想修正の内容が想定外の「サプライズ」であることを表します。
もし、予想修正の内容がプロ投資家の予想に近ければ、予想修正の発表により株価が大きく変動することはないはずです。にもかかわらず株価が大きく変動してしまうのですから、これはプロの予想も当たっていないという表れです。
そもそも、PERという指標自体が「予想」の固まりであることが疑いのない事実です。
拙著「株を買うなら最低限知っておきたいファンダメンタル投資の教科書」にも記載がありますが、利益が成長せずに横ばいが続いている銘柄のPERは10倍前後で推移することが多いです。この事実から、株価は今後10年間に予想される利益の合計により形成されると推測できます。
ですから、PERが30倍とか50倍の銘柄は、必ずしも割高というわけではなく、今後業績が伸びていくという投資家の予想を織り込んだ株価となっています。
一方、業績が好調なのにPERが1ケタにとどまっている銘柄は、今の業績が続かず、やがて悪化すると投資家が予想しているためです。
ところが、プロ投資家でさえ当期の純利益の予想が正確にできないことが多いと、先ほど申し上げたばかりです。向こう1年間の正確な予想さえ難しいのですから、今後10年間の利益を正確に予想することなど誰にもできません。
ですから、PERが50倍であっても、投資家の予想に反して今後業績が悪化していけば、今ついている株価は結果的にかなり割高だった、ということになります。
逆に、PERが1ケタの銘柄であっても、投資家の予想とは異なり今後毎年増収増益が続けば、結果としてかなり割安だった、ということになります。
これらの点からも、PERの数値を鵜呑みにして判断することは非常に危険であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
さらなる落とし穴は、本当は割安ではない銘柄を、自分だけが割安と「思っている」ことです。
PERの分母の当期純利益はあくまでも企業側が発表した予想値です。その結果、次のような状況が頻繁におきます。
つまり、プロ投資家からみれば、全く割安とはいえない銘柄を、個人投資家は「割安」と勘違いして飛びついてしまう、という状況が生じてしまうのです。これは、まさに個人投資家がPERを過信した結果陥ってしまう落とし穴です。
そして多くの個人投資家の方が勘違いしているのが、「割安=株価は上昇する」ということです。
いくら株価が割安であっても、その銘柄に各投資家からの投資資金が流入してこなければ、株価の大きな上昇は見込めません。
世の中には、万年割安と呼ばれる銘柄も多々あります。例えば、PERが常に10倍を割れているにもかかわらず株価があまり上昇せず、10倍を超えることはなかなかない、という銘柄です。
本当に株価が割安であっても、その銘柄が投資家から注目されておらず、物色の対象から外れているような場合、何年もの間株価が買われることなく時間が経過してしまうことさえ決して珍しくありません。このような銘柄に投資してしまうと、それを保有している間、資金が完全に寝てしまうため、投資効率が低下し、得られる利益も少なくなってしまいます。
ここまでの説明で、実はPERが、投資家の予想により形成された信頼性の低い指標であることがお分かりいただけるでしょうか?
しかしながら、PERが低い銘柄の中には本当に割安なものも存在します。個人投資家としては、ぜひこうした割安な銘柄を見つけて投資したいものです。
そこで、PERを活用しつつ、落とし穴を回避するための実践的な手法として考えられるのが、筆者が日々実践する「株価トレンド分析」なのです。株価が上昇トレンドのときに新規買いおよび保有継続し、株価が下降トレンドになったら保有株は売却して新規買いを控える方法です。
例えばPERが低いにもかかわらず今後も増収増益が期待でき、自分自身で「これは間違いなく割安だ!」と判断した銘柄があるとします。
こんなとき、すぐ買ってしまうのではなく、まずは株価のトレンドを確認してください。本当に割安な銘柄であれば、今は下降トレンドであっても、やがて見直し買いが入って株価が上昇し、上昇トレンドに転じるはずです。
逆に、自分が割安だと思っているだけで本当は割安ではない銘柄なら、株価は上昇せずに下降トレンドが継続するはずです。
また、本当に割安な銘柄にもかかわらず株価が長い期間上昇しない場合でも、株価のトレンドに注目していれば、無駄に新規買いして資金を寝かせてしまうことが避けられます。その間、他の銘柄へ資金を振り向けることにより、資金効率を高めることができるのです。
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足立武志
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株式等は株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。上場投資信託(ETF)は連動対象となっている指数や指標等の変動等、上場投資証券(ETN)は連動対象となっている指数や指標等の変動等や発行体となる金融機関の信用力悪化等、上場不動産投資信託証券(REIT)は運用不動産の価格や収益力の変動等、ライツは転換後の価格や評価額の変動等により、損失が生じるおそれがあります。※ライツは上場および行使期間に定めがあり、当該期間内に行使しない場合には、投資金額を全額失うことがあります。
上場有価証券等のうち、レバレッジ型、インバース型のETF及びETN(※)のお取引にあたっては、以下の点にご留意ください。
※「上場有価証券等」には、特定の指標(以下、「原指数」といいます。)の日々の上昇率・下落率に連動し1日に一度価額が算出される上場投資信託(以下「ETF」といいます。)及び指数連動証券(以下、「ETN」といいます。)が含まれ、ETF及びETNの中には、原指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じて算出された数値を対象指数とするものがあります。このうち、倍率が+(プラス)1を超えるものを「レバレッジ型」といい、-(マイナス)のもの(マイナス1倍以内のものを含みます)を「インバース型」といいます。
信用取引は取引の対象となっている株式等の株価(価格)の変動等により損失が生じるおそれがあります。信用取引は差し入れた委託保証金を上回る金額の取引をおこなうことができるため、大きな損失が発生する可能性があります。その損失額は差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。
国内株式の委託手数料は「超割コース」「いちにち定額コース」の2コースから選択することができます。
〔超割コース(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
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10万円まで 99円(税込)
20万円まで 115円(税込)
50万円まで 275円(税込)
100万円まで535円(税込)
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3,000万円まで1,013円(税込)
3,000万円超 1,070円(税込)
〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)
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〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
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