震災後の3月に大幅に落ち込んだ日本景気は、4月以降、早くも持ち直しの兆しをみせています。特に、4月の鉱工業生産指数が前月比+1.0%とプラスに転じており、今後は安定するものと考えられます。業種別にみると、内需関連を中心に金属加工機械、電子応用装置、金型、計測機器などが震災前の水準以上に復帰する見込みとなっています。その他の業種も、震災前の水準は下回るものの、当初の見込みよりも早く、生産の回復が進んでいると考えられます。
鉱工業生産指数推移(対前月比)
鉱工業生産指数業種別指数
品目名称 | 2011年1月 | 2011年2月 | 2011年3月 | 2011年4月 | 差 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 金属加工機械 | 77.4 | 66.0 | 55.0 | 81.7 | 15.7 |
2 | 電子応用装置 | 86.7 | 95.4 | 82.4 | 110.0 | 14.6 |
3 | 金型 | 67.3 | 61.2 | 61.0 | 75.3 | 14.1 |
4 | 計測機器 | 101.1 | 99.5 | 93.1 | 109.1 | 9.6 |
5 | 機械工具 | 84.0 | 83.9 | 85.9 | 92.2 | 8.3 |
6 | 生活関連産業用機械 | 69.8 | 67.0 | 70.1 | 75.3 | 8.3 |
7 | 電気計測器 | 72.5 | 73.8 | 71.4 | 80.7 | 6.9 |
8 | 木製家具 | 66.2 | 66.6 | 64.8 | 73.2 | 6.6 |
9 | 暖ちゅう房熱機器 | 90.1 | 87.6 | 82.7 | 92.9 | 5.3 |
10 | 織物 | 63.4 | 64.2 | 66.0 | 68.4 | 4.2 |
11 | 紡積 | 58.1 | 56.1 | 58.0 | 59.3 | 3.2 |
12 | その他製品工業 | 52.0 | 51.1 | 52.8 | 53.6 | 2.5 |
13 | 玩具 | 16.4 | 17.3 | 19.5 | 19.7 | 2.4 |
14 | ファインセラミックス | 143.0 | 130.8 | 139.6 | 133.1 | 2.3 |
15 | セメント・同製品 | 70.6 | 69.9 | 64.9 | 72.0 | 2.1 |
16 | 陶磁器 | 66.2 | 65.9 | 65.1 | 67.6 | 1.7 |
17 | 文具 | 104.3 | 102.1 | 99.9 | 103.7 | 1.6 |
18 | ボイラ・原動機 | 101.1 | 118.8 | 79.3 | 120.2 | 1.4 |
19 | 水産製品 | 92.1 | 91.9 | 90.8 | 93.3 | 1.4 |
20 | 金属工作機械 | 69.7 | 80.3 | 79.5 | 81.2 | 0.9 |
差(2011年4月-2011年2月)
日本銀行は6月14日の金融政策決定会合で、景気の現状判断を従来の「生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある」から、「生産面を中心に下押し圧力が続いているが、持ち直しの動きもみられている」に引き上げました。これは、3月の東日本大震災後では初めてとなる上方修正です。企業の生産活動が予想より早く回復する見込みになってきたためで、震災後の日本経済が最悪期を脱しつつあることを示しました。
金融政策決定会合 金融経済月報 基本的見解 | 前月対比 | 月末 日経平均株価 | |
---|---|---|---|
2011年1月 | わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。(1月26日公表) | 10,237.90円 | |
2月 | わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から徐々に脱しつつある。(2月16日公表) | 10,624.10円 | |
3月 | わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から脱しつつある。(3月15日公表) | 9,755.10円 | |
4月 | わが国の経済をみると、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。(4月8日公表) | 9,849.74円 | |
5月 | わが国の経済をみると、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。(5月23日公表) | 9,693.73円 | |
6月 | わが国の経済をみると、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力が続いているが、持ち直しの動きもみられる(6月14日公表) |
内閣府の発表によると、東日本大震災の被害額は暫定的に約16兆~25兆円と推計しています。これは、名目GDP(479兆円)比3.3%~5.2%に匹敵する巨大な損失です。ただし、震災によりインフラ網などのストックが大きな損失を被ったとしても、GDPはフローの動きを反映するため、損失したストックを再建するための復興需要で成長率は徐々に上向くのが一般的といわれています。
95年の大震災時も、資本ストックがGDP比で2%損失した分、成長率は中長期的に押し上げられたとみられます。震災後の当初は経済活動の落ち込みが景気鈍化の要因となるものの、復興需要他が徐々に景気を押し上げてくると思われます。
1995年の阪神・淡路大震災で、政府は合計3回の補正予算で計3.2兆円の復興対策、日銀は大幅な金融緩和を実施しました。今回も震災発生後、週明けの3月14日には日銀が15兆円に上る緊急資金を即日供給し、同日に開かれた金融政策決定会合で資産買入れ5兆円増額の追加緩和を決めました。今後は新興国など堅調な海外経済に支えられ、復興需要の拡大に伴い景気は徐々に回復するとみられ、景気後退は避けられる見通しです。
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