3月16日、江守グループホールディングス(9963)が、462億円という巨額の特別損失計上により、234億円の債務超過に転じたことを発表しました。さらに、継続企業の前提に関する事項の注記が付されることも発表されました。
これを受けて株価は急落、発表前(3月16日終値)914円だった株価は、ストップ安比例配分を連日繰り返し、先週末(3月20日)には323円まで下落しました。昨年9月の高値2,156円からは6分の1以下にまで下落したことになります。
2月6日に第3四半期決算発表を延期すると発表していたこともあり、多くの投資家はある程度の損失は覚悟していたかと思います。しかし、筆者も含め、まさか債務超過に転落し、しかも継続企業の前提に関する事項の注記まで付されるとは想像できなかったはずです。
そこで今回は、事例研究として江守グループホールディングスの過去の決算短信から、多額の損失発生の予兆を感じ取ることができたかどうかを分析してみたいと思います。
なお、3月16日付で、江守グループホールディングスより、過年度の決算短信の修正も発表されていますが、本コラムでは多額の損失発生の予兆を事前に知ることができるかを探っていきます。そのため、修正前の決算短信の数値を用いて説明していきます。
実は江守グループホールディングスの株価は、平成26年10月に業績予想を下方修正した時点で大きく下落していました。そこで、株価が急落する平成26年10月より前に、巨額損失発生の兆候を推測し、投資対象から除外したり、保有株を売却するという判断が可能だったかどうかを、決算短信のデータをみながら確認していきたいと思います。
まずは業績の推移からです。平成22年3月期から平成26年3月期までの実績および、平成27年3月期の業績予想(平成26年3月期の決算発表時に会社が発表した数値)は以下のようになっています。(出典:決算短信。単位:百万円)
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | 配当金(円) | |
---|---|---|---|---|---|
平成22年3月期 | 65,917 | 1,861 | 1,832 | 1,021 | 26 |
平成23年3月期 | 95,337 | 2,450 | 2,339 | 1,367 | 32 |
平成24年3月期 | 116,700 | 2,704 | 2,532 | 1,689 | 32 |
平成25年3月期 | 144,675 | 3,209 | 3,005 | 1,919 | 38 |
平成26年3月期 | 219,187 | 5,743 | 5,410 | 3,323 | 58 |
平成27年3月期(予) | 260,000 | 6,500 | 5,900 | 3,800 | 62 |
売上高、営業利益、経常利益、当期純利益とも毎期増収増益で、平成27年3月期も大幅に増収増益の予想となっていたことが分かります。さらに、配当金も増加傾向にあることがうかがえます。
これだけをみると、江守グループホールディングスの業績に文句のつけようはありません。
しかも、平成26年3月期の決算発表時の株価(昨年5月13日終値1,733円)と平成27年3月期の業績予想値を用いてPERを計算すると、5.6倍と非常に低い水準でした。
毎期増収増益が続き、配当金も増額傾向、それなのにPERがわずか5.6倍にとどまっている・・・これだけの好条件が揃えば、株価は明らかに割安という判断をする投資家は多かったのではないかと思います。実際、投資サイトなどでも割安な銘柄として推奨されていました。
また、平成26年3月時点で外国人の持ち株比率が14.0%、投資信託の持ち株比率が5.2%といずれもかなりの高水準であり(出典:会社四季報2014年3集)、企業を見る目がシビアな外国人投資家や機関投資家も、江守グループホールディングスの成長性や割安な株価を評価していたという事実が伺えます。
ところが、決算短信の1枚目に記載されているキャッシュ・フローの数値をみると、気になる点があります。それは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」(以下営業CF)です。平成26年3月期の決算短信では、平成26年3月期の営業CFがマイナス5,197百万円と大きくマイナスとなっています。さらに、平成25年3月期の営業CFもマイナス2,670百万円です。
本来、営業利益と営業CFはそれほど大きな差異は生じないのが普通です。減価償却費(損益計算書上は費用だが、キャッシュ・フロー計算書上は何も影響を与えない)の存在を考えれば、営業利益よりも営業CFの方が大きいことも珍しくありません。
しかし、江守グループホールディングスは平成26年3月期の営業利益5,743百万円と営業CFの差額が100億円を超えています。平成25年3月期も営業利益が3,209百万円ですから、営業CFとの差額が50億円超となっています。
なぜ営業CFのマイナスが問題となりうるのか、それは「本業でキャッシュを獲得するどころか、キャッシュが失われている」からです。
企業が継続・発展するためにはキャッシュが必要不可欠です。いくら黒字決算が続いていても、キャッシュが足りなくなれば企業は倒産してしまうのです。
損益計算書において営業赤字の場合は、営業CFもマイナスであることが珍しくありません。そもそも本業で赤字なのだから、キャッシュの面でみてもマイナスということです。
一方、損益計算書において黒字であるにもかかわらず、営業CFがマイナスの場合は注意しなければなりません。黒字なのにキャッシュが逆に流出してしまっているわけですから、その理由を詳しく見ていく必要があります。
売上や利益の伸びに売掛金の回収が追い付いていない場合など、成長企業では営業CFのマイナスはよくあることです。でも、営業CFのマイナスが2期連続で続いた場合は、十分に気をつけなければいけません。営業CFのマイナスの原因となる重要な問題点が隠されているかもしれないからです。
江守グループホールディングスの場合、平成26年3月期と平成25年3月期ともに営業CFがマイナスでしたが、さらにさかのぼって調べてみると、なんと平成22年3月期から5年続けて営業CFがマイナスとなっていました。
筆者も数多くの企業の決算書をみてきましたが、毎年黒字決算を続けている企業の営業CFのマイナスが5年間も続いているケースは記憶にありません。
営業CFがマイナスの場合、決算書のどの部分に焦点を当てて分析していく必要があるのか、そして営業CFのマイナスが続く銘柄に対しての投資方針などにつき、次回のコラムにてご説明していきたいと思います。
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足立武志
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