日本時間の9月8日の早朝に、2020年オリンピック開催地が東京に決定しました。

興奮冷めやらぬまま迎えた翌日（9日）の日経平均株価は大幅上昇で反応しました。開催地決定直前の週末に、「ライバルのマドリードが優勢」と伝えられ、株価が下落していた反動もあるかと思われますが、不動産や建設セクターを中心に幅広い銘柄が買われ、オリンピック関連とされる、スポーツ用品や広告、警備会社、鉄道などの銘柄の株価も上昇しました。

オリンピックの招致委員会が発表した試算では、オリンピック開催までにもたらされる経済波及効果は全国で約3兆円です。さらに、開催に伴って雇用が約15万人創出されるとしています。もっとも、オリンピックの開催自体は7年後のため、経済への効果が表れるのはまだ先になりそうですし、また、経済効果の規模からみても、ちょうど9日に発表された4-6月期GDP改訂値（名目ベース）が480兆円ですから、GDP比での経済効果の規模は決して大きくはありません。

とはいえ、オリンピックの東京開催決定はプラスの材料であることに間違いはないと思われます。道路や鉄道などのインフラ改修や商業施設（ホテルなど）の民間建設需要は先程の試算に含まれていないため、実際の経済波及効果は3兆円よりもずっと大きくなると見込まれますし、また、安倍政権が掲げる最大の目標は、デフレ脱却と財政再建ですが、これらは「このまま放置しておくとマズイ」状況に対処するという、どちらかというと「後ろ向き」の目標です。これに、「世紀のスポーツイベントを是非とも成功させよう」という「前向き」の目標が加わることとなり、心理的な側面からみてもその意義は大きいといえます。

今後も折に触れて、オリンピック関連銘柄が物色される局面があるかと思われます。代表的なものとしては、冒頭でも述べましたが、建設・会場運営関連をはじめ、観光関連、スポーツ関連などは常に株価動向をチェックしていく必要がありそうです。

また、過去を振り返ると、決定日から開催日までのオリンピック開催国の株価指数動向は大きく上昇しているケースが多く見られます。ただ、それぞれの値動きを重ね合わせてみると、上昇パターンがまちまちで、大きくマイナスに沈む場面があったり、値動きが激しかったりと、順調に株価が上昇しているというよりは、紆余曲折を経て「結果的に上昇している」ケースも見られます。当然、開催までの長い期間を、ファンダメンタルズなどオリンピック以外の材料も見ていく必要があります。

偶然か否かは別として、これまでに打ち出している安倍政権の成長戦略の多くは、「プライマリーバランス（基礎的財政収支）の黒字化」、「世界銀行ビジネス環境ランキングで3位以内」、「外国企業の対内直接投資残高35兆円」、「女性の就業率73％」など、その目標期限をオリンピック開催年の2020年に設定しているものが多く、継続的な株価上昇には、今回のオリンピック開催決定を追い風に、どこまで政策を実行・実現できるかがポイントになってくると思われます。

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