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NISA活用法⑤ NISAへはロールオーバー(移行)できない?旧一般NISA利用者が今から準備すべきこと

NISA活用法⑤ NISAへはロールオーバー(移行)できない?旧一般NISA利用者が今から準備すべきこと

更新日:2025年4月8日
掲載日:2023年9月13日

NISA(少額投資非課税制度)は2024年から恒久化され、大幅に拡充されましたが、一方で旧一般NISAで利用できていたロールオーバーは利用できなくなります。今回は、旧一般NISAで投資してきた人が、NISA開始に向けて今から準備しておくべきことについて説明します。

要約すると
  • 旧一般NISAからNISAへロールオーバー(移行)はできない
  • 旧一般NISAは非課税期間ギリギリまで保有するのが得
  • 特定口座による再投資でデメリットをカバー

旧NISAと、2024年からの現行NISA制度の概要

2023年までの旧NISA(旧つみたてNISAおよび旧一般NISA)と、2024年から始まった現行NISAの概要をまとめておきます。

  旧つみたてNISA 旧一般NISA
対象者 日本に住む18歳以上の人
口座開設期間
(投資可能期間)
2023年12月末まで
非課税保有期間 20年間(最長2042年まで) 5年間(最長2027年まで)
制度の利用 1年毎に「旧つみたてNISA」もしくは「旧一般NISA」を選択
投資対象商品 長期・積立・分散投資に適した一定の株式投資信託とETF 株式、株式投資信託、ETF、REIT
買付方法 積立投資のみ 通常の買付・積立投資
年間投資枠 40万円 120万円
非課税保有限度額
(総枠)
800万円(累計) 600万円(累計)
売却可能時期 いつでも可
  • 2024年からの新しいNISA制度の開始に伴い、旧NISAの口座開設期間は2023年までとなる
  • ジュニアNISAにて2023年12月末までに投資した残高は、非課税保有期間終了後も、原則として18歳になるまで自動的に継続管理勘定(非課税)への移管がされる(利用者の利便性向上)

旧NISA(旧つみたてNISAと旧一般NISA)の概要

  現行NISA(2024年~)
対象者 日本に住む18歳以上の人
口座開設期間
(投資可能期間)
恒久化
非課税保有期間 無期限
制度の利用 NISA制度内で以下の2つの枠を併用可能
つみたて投資枠 成長投資枠
投資対象商品 積立・分散投資に適した一定の投資信託
(現行のつみたてNISA対象商品と同様)
上場株式・投資信託等
(①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、高レバレッジ型及び毎月分配型などを除外)
買付方法 積立投資のみ 通常の買付・積立投資
年間投資枠 120万円 240万円
非課税保有限度額
(総枠)
1,800万円(生涯投資枠:簿価残高方式で管理)
売却すると翌年以降に再利用可能。
また、2023年までのNISAとは別枠
1,200万円(内数)
売却可能時期 いつでも可

現行NISAの概要

NISAでは、これまでのつみたてNISAを継承する「つみたて投資枠」、旧一般NISAを継承する「成長投資枠」という2つの枠を同時に利用できるようになります。

これまでの旧一般NISAでは利用できていたロールオーバー(移行)とは?

旧NISAでは、非課税で保有できる期間が旧つみたてNISAでは最長20年、旧一般NISAでは最長5年です。

ただ、旧一般NISAの場合、最長5年の非課税期間終了時に翌年の旧一般NISA口座へ移換する「ロールオーバー」という制度が認められていました。これにより、旧一般NISAの非課税期間を実質的に5年ずつ延長できていたのです。

例えば、2018年に旧一般NISAで投資した分は2022年12月末で非課税期間が終了しましたが、2023年の旧一般NISAにロールオーバーすることでそのままさらに5年間だけ非課税での保有を継続できたのです。

そして、このロールオーバーの場合、ロールオーバー時の時価が、翌年の旧一般NISAの年間投資上限である120万円を上回っていた(例えば、180万円など)としても、そのまま全額を翌年の旧一般NISAに移して投資を継続できたのです。

NISAへはロールオーバー(移行)ができない?

旧一般NISAを利用してきた方は、ロールオーバーすることで実質的な非課税期間を伸ばすことができていたのですが、2024年から新しいNISAが始まることになり、これまで可能だったロールオーバーが今後はできなくなったのです。

旧一般NISAを含む旧NISAと、NISAは完全に別の制度として設計されているため、旧制度となる旧NISAから、新制度となるNISAへはロールオーバーできません。

そのため、これまで旧一般NISAで投資をしてきた方は、どのタイミングで旧一般NISAでの投資分を売却するか、これまで以上にしっかりと検討していく必要があるのです。

ロールオーバー(移行)できない旧一般NISAはどうするべき?

旧一般NISAの非課税期間は最長5年ですから、そのメリットを最大限受けるために、非課税期間が終了となるギリギリまで保有を継続するのがトクだ、という考え方もあります。

そのように考える場合は、1年毎に非課税期間終了となる時まで保有を継続し、非課税期間が終了したら一度売却した上で、年間投資枠が拡大したNISAで買い直していく、という方法が考えられます。

2019年以降に旧一般NISAで投資してきた分の出口戦略の1つ

例えば、2019年に旧一般NISA口座で120万円投資した場合を考えます。非課税期間が終了し課税口座(一般的には特定口座、以下特定口座と記載)に移管された2024年の年初の時点で評価額が180万円になっていたとすると、すべてを売却してNISA口座で180万円分を買い直すというわけです(手数料は考慮していません)。

NISAの成長投資枠であれば最大で年間240万円まで買付できますし、もし売却時の時価が240万円を超えていたとしても、つみたて投資枠対象商品であれば合計で360万円まではNISAで買付できますので、従来のロールオーバーの代わりに、NISAを受け皿として使えるわけです。

このようにこれまで旧一般NISAで投資してきたお金については、1年毎に売却してその都度、NISAで買い直していくという”ロールオーバー的な”使い方も検討していただければと思います。

なお、旧一般NISAと比較して、NISAの成長投資枠では、投資可能商品が一部対象外となる予定ですので、買い直す際には成長投資枠の対象商品から選択する必要がある点にはご留意ください。

NISA最大のデメリットに注意!“NISAを使わなければよかった”という場合も

NISAをロールオーバー先の代わりに使うという方法はご説明した通りなのですが、ここで注意していただきたいのが、NISAのデメリットである損益通算や繰越控除ができない、という点です。

NISA口座では損益通算できないため、損失の場合はデメリットに

NISAは、儲かった時の利益に課税しない一方で、損失が出たとしてもそれがなかったことになる、つまり特定口座の持ち分と損益通算や、損失を翌年以降に繰り越す繰越控除ができません。

非課税期間終了時点で含み益の状態になっていれば、上述の戦略はうまくいくわけですが、非課税期間終了時点で含み損になってしまっている可能性もあるでしょう。

そういった点も踏まえると、旧一般NISAで投資してきた分については、ある程度の含み益になっていれば、非課税期間終了を待つことなく、利益確定しておくという考え方も大切だと考えています。

NISAが使えるならNISAで、2023年中なら特定口座で再投資

利益確定するのが2024年以降であればNISAで買い直すことができます(ただし、NISAの対象銘柄に限られます)が、2023年中に利益確定した場合は、NISAはまだ使えません。

そのような場合には、特定口座で再投資しておけば、仮に下がってしまったとしても特定口座の他の銘柄と損益通算できますし、繰越控除も可能になります。

2024年のNISA開始までは再投資せずに現金のまま寝かせておくという選択肢もありますが、特に使い道のないお金であれば機会損失になりますので、特定口座で再投資しておくのがおすすめです。

これまで旧一般NISAで投資してきた方は、2024年からのNISAへはロールオーバーできなくなります。2023年の今からどのように対応していくか早めに検討していただき、しっかりと準備していくことをおすすめします。

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筆者の紹介

横田 健一

ファイナンシャルプランナー 株式会社ウェルスペント 代表取締役

大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立し、株式会社ウェルスペントを設立。社名の「ウェルスペント」(英語でwell spent)は、直訳すると「有益に使った」「有意義に過ごした」の意味。より多くの方が、貴重なお金や時間を“ウェルスペント”し、より幸せな人生を送っていただけるようサポートしたい、という思いが込められている。独立系FPとして家計相談やライフプランシミュレーションを行っている。

「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。2023年6月、初の著書「新しいNISA かんたん最強のお金づくり」(河出書房新社)を発売。「ファイナンシャル・ウェルビーイング検定」監修

2025年4月30日に新著「増やしながらしっかり使う 60歳からの賢い『お金の回し方』」が発売!

YouTube:資産形成ハンドブック

X(旧Twitter):@ken1yokota

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