更新日:2024年12月19日
掲載日:2023年7月14日
最近は社会人になると同時に、人によっては学生の頃から積立投資を始めている方もいらっしゃるようです。本記事では、長い時間を味方にすることができる20代の方がNISAを活用して資産形成する方法をご説明します。
2024年から新しくなったNISAでは、つみたて投資枠、成長投資枠という2つの枠を同時に利用することができ、年間投資可能額はそれぞれ120万円と240万円、合計すると年間360万円まで投資できるようになっています。
ただし、投資可能額には上限となる非課税保有限度額があり、1,800万円まで(うち成長投資枠は1,200万円まで)となります。コツコツ積立投資で資産形成していくことをイメージして、この1,800万円を使い切ることを想定すると、積立額と積立期間は次のようになります。
月額(円) | 年額(円) | 積立期間(年) |
---|---|---|
25,000 | 300,000 | 60 |
30,000 | 360,000 | 50 |
37,500 | 450,000 | 40 |
40,000 | 480,000 | 37.5 |
50,000 | 600,000 | 30 |
60,000 | 720,000 | 25 |
75,000 | 900,000 | 20 |
100,000 | 1,200,000 | 15 |
150,000 | 1,800,000 | 10 |
200,000 | 2,400,000 | 7.5 |
250,000 | 3,000,000 | 6 |
300,000 | 3,600,000 | 5 |
20代の方が本格的に資産形成していく場合、老後資金をイメージすると、最長で40年程度の準備期間になります。今回は40年間で資産形成するとして、次の4つのパターンでNISA活用プランを考えてみます。
まずNISAを活用して40年間にわたり同じペースで資産形成していく場合を確認してみましょう。
次の図のように、毎月一定金額を積立投資していくものとします。NISAで投資できる商品は主に株式を対象とした投資信託などですから、長期的には図のように価格変動しながら、右肩上がりに増えていくことが期待されます。
ここでは毎月3万円を40年間積立投資する場合にどうなるか、運用利回りが0%、3%、5%、7%の4パターンについて計算すると、次のようになります。なお、投資元本合計は、3万円×12ヶ月×40年で1,440万円となります。
利回り | 40年後評価額 | 40年後含み益 |
---|---|---|
0% | 1,440万円 | 0万円 |
3% | 約2,751万円 | 約1,311万円 |
5% | 約4,447万円 | 約3,007万円 |
7% | 約7,414万円 | 約5,974万円 |
※ 本試算での評価額や含み益は、利回りが確定しているものとして計算しています。
実際の値動きには価格変動リスクがあることにご留意ください。
利回り0%の場合は、当然ですが40年後も利益は出ていませんので投資元本合計と同じ1,440万円になります。そして利回りが3%、5%、7%と大きくなるにつれて、40年後の評価額は2,751万円、4,447万円、7,414万円と大幅に増加していきます。
実際にどういった商品を選ぶかにもよりますが、世界の幅広い株式を対象とした低コストのインデックスファンドの場合、利回りは3~7%程度が妥当なレベルだと考えています。
新社会人の頃から毎月3万円という積立金額は少しハードルが高いと感じられるかもしれませんが、毎月1万円、ボーナスが年2回ある方ならボーナス時に12万円ずつと考えると、ちょうど年間36万円(毎月3万円)になります。
とは言え、新社会人の頃からもう少し取り組みやすい、年収とともに積立金額を増額していくプランを次に考えてみましょう。
次は、積立金額を10年ごとに、毎月1.5万円、2.5万円、3.5万円、4.5万円と増額していくパターンです。
この場合も投資元本合計は1,440万円で、パターンAとの違いは投資のタイミングが全体的に後ろ倒しになることです。
利回り0%~7%の4つの場合で、10年後、20年後、30年後、40年後のそれぞれの時点でいくらになるか確認すると次のようになります。
利回り | 10年後評価額 | 20年後評価額 | 30年後評価額 | 40年後評価額 | 40年後含み益 |
---|---|---|---|---|---|
0% | 180万円 | 480万円 | 900万円 | 1,440万円 | 0万円 |
3% | 約209万円 | 約629万円 | 約1,334万円 | 約2,421万円 | 約981万円 |
5% | 約231万円 | 約763万円 | 約1,783万円 | 約3,599万円 | 約2,159万円 |
7% | 約256万円 | 約932万円 | 約2,432万円 | 約5,555万円 | 約4,115万円 |
※ 本試算での評価額や含み益は、利回りが確定しているものとして計算しています。
実際の値動きには価格変動リスクがあることにご留意ください。
40年後の評価額は利回りに応じて、1,440万円、2,421万円、3,599万円、5,555万円となっています。パターンAと比べると、投資にまわすタイミングが遅くなる分、最終的な金額は少し小さくなりますが、それでも利回り5%なら3,599万円と、一般的に言われている老後資金としては十分な金額になりそうです。
少し早めの引退を目指すイメージで、当初30年間は積み立て、その後10年間は追加投資せずに保有し続けるというパターンを見てみましょう。
これまでと投資元本合計が同じになるよう、今回の積立額は毎月4万円としています。30年間の積み立て完了時点、その後10年が経過した40年後の評価額は次のようになります。
利回り | 30年後評価額 | 40年後評価額 | 40年後含み益 |
---|---|---|---|
0% | 1,440万円 | 1,440万円 | 0万円 |
3% | 約2,315万円 | 約3,111万円 | 約1,671万円 |
5% | 約3,261万円 | 約5,312万円 | 約3,872万円 |
7% | 約4,677万円 | 約9,202万円 | 約7,762万円 |
※ 本試算での評価額や含み益は、利回りが確定しているものとして計算しています。
実際の値動きには価格変動リスクがあることにご留意ください。
利回りが7%の場合、30年後の時点では4,677万円ですが、その後10年間寝かせておくと、2倍近い9,202万円まで増えています。これはいわゆる「72の法則」に近い状態と言えます。「72の法則」は、複利で運用する場合、投資元本が2倍となる条件として、
運用利回り(%)×運用期間(年)=72
という関係があるというものです。7%で10年間だとほぼこの条件に合致しています。
なお、もう少し保守的に3~5%の利回りだとしても、40年後には3,111~5,312万円とかなりの金額になりそうです。
最後に、パターンCをさらに10年ほど早めて、当初20年間で積み立て、その後20年間は継続保有するパターンを見てみましょう。ここ数年よく取り上げられるFIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指すイメージに近いと思います。
今回も投資元本合計が1440万円になるよう、積立額は毎月6万円としています。20年間毎月6万円を積立投資し、その後は20年間保有し続けるとどうなるか、ということです。
利回り | 20年後評価額 | 40年後評価額 | 40年後含み益 |
---|---|---|---|
0% | 1,440万円 | 1,440万円 | 0万円 |
3% | 約1,961万円 | 約3,542万円 | 約2,102万円 |
5% | 約2,434万円 | 約6,460万円 | 約5,020万円 |
7% | 約3,045万円 | 約1億1,784万円 | 約1億344万円 |
※ 本試算での評価額や含み益は、利回りが確定しているものとして計算しています。
実際の値動きには価格変動リスクがあることにご留意ください。
20年後の評価額は利回り7%でも3,045万円ほどですが、その後20年間保有し続けると40年後の時点では1億円を超えてきます。これは先ほどの「72の法則」が2回分なので、2×2、つまり4倍近くに膨れ上がっているというわけです。
利回り3~5%の場合は、20年後で1,961~2,434万円、40年後で3,542~6,460万円となっています。20年後にFIREするには十分な金額ではないかもしれませんが、20年後以降は新規の資産形成にお金をまわすことなく、稼いだ分をすべて使っていったとしても、自然と資産形成は進む形になりますね。
パターンA~Dについて40年後の評価額を一覧にすると次のようになります。いずれも投資元本合計は同じですが、早めに資金を投じていかに時間を味方につけられるかで、資産額に大きな違いが出てくることが確認できます。
利回り | パターンA 40年 積立継続 |
パターンB 増額しながら 40年積立継続 |
パターンC 30年積立、 10年継続保有 |
パターンD 20年積立、 20年継続保有 |
---|---|---|---|---|
0% | 1,440万円 | 1,440万円 | 1,440万円 | 1,440万円 |
3% | 約2,751万円 | 約2,421万円 | 約3,111万円 | 約3,542万円 |
5% | 約4,447万円 | 約3,599万円 | 約5,312万円 | 約6,460万円 |
7% | 約7,414万円 | 約5,555万円 | 約9,202万円 | 約1億1,784万円 |
NISAを活用して40年間資産形成した場合の見込み資産額(累計投資元本1,440万円)
積立金額および投資元本合計を半分にすると、次のようになります。
利回り | パターンA 40年 積立継続 |
パターンB 増額しながら 40年積立継続 |
パターンC 30年積立、 10年継続保有 |
パターンD 20年積立、 20年継続保有 |
---|---|---|---|---|
0% | 720万円 | 720万円 | 720万円 | 720万円 |
3% | 約1,376万円 | 約1,211万円 | 約1,556万円 | 約1,771万円 |
5% | 約2,224万円 | 約1,800万円 | 約2,656万円 | 約3,230万円 |
7% | 約3,707万円 | 約2,778万円 | 約4,601万円 | 約5,892万円 |
NISAを活用して40年間資産形成した場合の見込み資産額(累計投資元本720万円)
投資元本合計が720万円ですから、パターンAの40年なら月額1.5万円となります。グッと身近な金額に感じられるのではないでしょうか。
今回は一定のペースで積み立てを行う前提で試算してみました。しかし、NISAでは限度額こそあるものの、一度売却しても、その枠を再利用することが可能になるなど柔軟性が非常に高くなっています。
ぜひご自身のライフプラン/マネープランに合わせてNISAを最大限活用していただければと思います。
「資産形成」と言われても、何から手をつけていいか分からない・・・
結婚する?しない? 家は買う?賃貸? など、自分がどう生きていきたいかを想定しながら、準備や備えをステップごとに解説。読み終わるころには、漠然と望んでいた「ハッピーエンド」を、その手で確かにつかむための方法が分かるはずです。
横田 健一
ファイナンシャルプランナー 株式会社ウェルスペント 代表取締役
大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立し、株式会社ウェルスペントを設立。社名の「ウェルスペント」(英語でwell spent)は、直訳すると「有益に使った」「有意義に過ごした」の意味。より多くの方が、貴重なお金や時間を“ウェルスペント”し、より幸せな人生を送っていただけるようサポートしたい、という思いが込められている。独立系FPとして家計相談やライフプランシミュレーションを行っている。
「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。2023年6月、初の著書「新しいNISA かんたん最強のお金づくり」(河出書房新社)を発売。「ファイナンシャル・ウェルビーイング検定」監修
YouTube:資産形成ハンドブック
X(旧Twitter):@ken1yokota