●「応援したい会社か」どうかは実は重要でない

君たちもそうかもしれないが、今はエシカル(ethical/倫理的)な消費が若い人を中心に増えているようだよね。テレビでもやたら「サステナブル!」って騒ぎ立てている。そういえば以前から、「応援したい企業に投資しましょう」とか「あなたの投資がその企業を良くし、ひいては世の中を良くします」みたいなことを言う人や運用会社はあった。

でも僕はそういうのにとても違和感を覚える。

株式の原理原則として君たちに持ってもらいたいのは、「企業を応援」と「自分の投資のリターン」はまったく関係ないというクールな理解。そもそも僕たちがある企業の株を買ったところで、そのお金はその企業に行かないからね。売った人に行くだけです。直接的な応援にはならないわけ。

少し詳しく説明しようか。まず株式市場には「流通市場」「発行市場」という2つの市場があるのね。流通市場っていうのは、日本なら毎日9時から15時まで東京証券取引所で行なわれている売買の場のことで、僕らの「買い」と誰かの「売り」がマッチングされる市場だ。さっき言ったように、そこで支払ったお金は企業には届かない。前に言った「セリ」の市場だから。

一方の発行市場は、東証みたいな物理的な場所ではない概念的な市場のこと。ある企業が新たに新株を発行して、それを引き取った証券会社が投資家に「新株買いませんか~?」と投資を募る一連のプロセスのこと。

企業は新たに資金が必要になったら、多くの場合まず銀行に借りることを考えるよね。一部有力な企業は、銀行に借りて利息を払うくらいならと、自ら債券を発行して投資家からお金を集めようとする。「〇〇企業債、10年満期、利率年〇%」みたいな感じで募集が行なわれるの。さらに一部の企業は、債券でなく「新株」を発行して資金を調達しようとするわけ。債券を発行すると毎年の利息と満期時には元本を皆に返済しないといけないけど、新株を発行してそれを買ってもらったら、満期はないから返済義務もないからいいよね。これが発行市場。

もし君たちがこの企業の新株発行に応募して代金を入金したとしたら、そのお金は今度こそ、その企業に届く。そのお金はきっと有意義に使われるから「応援」したことになるよね。社会にとっていいことをしてる企業の新株を買いたいね。でも一般の人にとって、そういうことが出来る機会は多くない。

だから「企業を応援」とか、社会にいいことをしている企業に投資するのがいいことだ、みたいなマーケティングワードに惑わされない、確かでクールな理解を持っておきたい。大事なのは、「残念ながらマーケットはひとつ」だけど、短期投資の有象無象たちを無視して長期視点の「原理原則」を胸にどっしりと構え、その代わり自分の投資がどんな「角度」を期待して行なっているものなのかを考えるアタマを持つ――これに尽きるな。

具体的なアクションとしては、つみたてNISAは世界の株式などに大きな順に投資するインデックスファンドで押さえ、その時価総額比重方式インデックスのメリットとデメリットを理解した上で、「本気の積立」の金額にするための追加の積立原資については、しっかりと「角度」の観点から投信を選び抜くということだと思う。

後者は口で言うほど簡単じゃないので、また別の機会に詳しく話そうと思う。ではまた。

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