※本メールは「楽天証券ニュース」の配信を希望なさっているお客様を対象にお送りしております。
配信先の変更・停止は巻末をご覧ください。

楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2012年2月13日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

2月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(2/10終値)
前週末比
(2/3比)
日経平均 8,947.17 +115.24 +1.30%
NYダウ 12,801.23 -61.00 -0.47%
金利・為替 週末終値
(2/10終値)
前週末比
(2/3比)
長期金利 0.975% +0.025%
ドル/円 77.68  
ユーロ/円 102.96  

シートベルトは外さない方が良い

前週の総括

■楽観的な見通しが支配するが…

 この一週間の各市場の動きは上記の表のとおりです。日経平均株価は8日と9日の両日で一度9,000円の大台を昨年10月28日以来、3カ月ぶりに一時回復することができました。ただ前回のこのレポートで指摘したとおり、やはりバリュエーション面での割高感が強く、心理的な節目ともなる9,000円から上は戻り待ちの売りが多いという印象を受けています。また、今年に入ってから低調な水準を続けてきた売買代金も8日と9日には1兆3,000億円台に達し、それは年初来しばらく続いた8,000億円前後の水準から約1.5倍以上に膨らんできました。たしかに好意的にみると投資家が「リスク・オン」になってきたという見方もできますが、逆に株価が上がってくるとそれだけ「売り物」があり、それらをこなさないと株価は上にあがれないという見方もできます。前回「前週末(1/26)時点の予想PER(株価収益率)は15.65倍ですが、先週(2/2)末時点のそれは18.03倍にまで跳ね上がっています」とお伝えした予想PERは、この株価上昇もあってついに20倍台を超え、週末(2/10)時点のそれは20.06倍となっています。ここからの株価上昇を根拠づけするには、かなりアグレッシブな企業の来期(13年3月期)増益シナリオを描かないと難しいと思われます。またもう一つ気になる指標は、ヒストリカル・ボラティリティ(10日間)が10前後にまで低下していることです。これは市場のエネルギーをあらわすような意味もあり、経験則的にはここまで低下してくると、いったんは株価下落によって数値上昇を期待するしかありません。ちなみに、昨年後半はおおむね20〜30の間で推移していたものです。


(出典:Bloomberg.)

<この一週間のNYダウの推移です。----------日本市場が織り込んでいるのは9日までの右肩上がりの流れです。>

■ギリシャ第二次支援はまだ決まらない

 先週末のNY市場が金曜日にガクンと下がっているのは、ギリシャ向け第二次支援決定が結局今週15日のユーロ圏財務相会合にまで持ち越されたからです。9日にはギリシャ政府から「欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が次期金融支援の条件として求めていた緊縮策を受け入れることで連立与党3党と合意した」と発表があり、市場には一定の安心感が生まれましたが、結局は10日に緊縮策に関連した法案を閣議承認したに留まり、これを受けた肝心の緊縮策や構造改革についての関連法案採決は12日の国会に持ち越されています。一方、連立与党の国民正統派運動(LAOS)はすでに反対を表明、また政権内でも閣僚や副大臣6人が辞任したと伝えられ、さらには主要労働組合によるゼネストが10日から始まっています。つまりほとんど実態は進展しているのかどうか信じるに値する状況ではなく、ギリシャ問題については、明確に「欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)は1,300億ユーロ(約13兆円)規模のギリシャ向け追加支援を決定」と発表されない限り、決して安心はできないということです。こう“期待と失望の繰り返し”が延々と続くのを見る限り、見切り発車の強気はリスクが高過ぎると思われます。さらなる慎重論を唱えるならば、3月20日のギリシャ国債145億ユーロ分の償還が確実に行われることを確認するまでは、動かないことも肝要な方策と思われるということです。


(出典:Bloomberg.)

<この一週間のユーロ/ドルの動きです。----------いったんは1.33台までユーロは対ドルで買い戻されたのですが、その後押し戻されています。>

■米軍、普天間移設を待たず

 日米両政府が8日夜に発表した在日米軍再編計画の見直しに関する新方針は、一見すると金融市場に対して直接の関わりを持たないテーマと思いがちかもしれませんが、仮に目先的な市場材料とならずとも、中長期的に大きな影響をもつものと捉え注視しています。内容は一見すると一体になっていた米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設と沖縄の米海兵隊のグアム移転を切り離し、先行して海兵隊をグアムに移すというものに過ぎませんが、なぜ、米国政府が海兵隊の早期再配置にこだわるのかという点はきっちりと認識しておくべきだと考えます。報道でも「南シナ海や東シナ海での中国軍の行動が本当に心配だ。日米でしっかり対応する必要がある。私たちの切迫感を分かってほしい」という安全保障を担う米政府高官の発言を伝えていますが、中東情勢などを含めて地政学的リスクに関して感度の低い(報道が少ない)国内世論と世界実態情勢の乖離はしっかりと把握しておくべきでしょう。さらに言うならば、中東情勢と明らかに異なる点は、その地政学的リスクにおいて、日本が当事国になるエリアの問題でもあるからです。ひと度「有事発生」ということにでもなれば、沖縄を含む日本はすべて中国からも、あるいは北朝鮮からも射程距離圏内に入るということを忘れてはならないと思います。東日本大震災の復旧作業に国内の自衛隊がほぼすべて駆り出されている時、なぜ日本の沖合に原子力空母を含む米軍が展開していたのかも考えておく必要があります。もちろんその主たる理由は人道的な支援目的であることは事実ですが、北朝鮮・金正日総書記が逝去された直後にはさらに原子力空母が北上した事実も忘れてはなりません。世界は決して同じ価値尺度での平和認識を共有しているわけではないのですから。米軍・海兵隊の再配置問題は、本質的にはあまり嬉しくない状況を示唆しているものと思われます。政府の今後の対応には注意を払っておくべきだと思います。

今週のポイント

■日本の半導体産業の未来

 報道によれば、ルネサスエレクトロニクス(6723)富士通(6702)パナソニック(6752)の3社が半導体の主力事業を統合する方向で協議を始めたようです。家電製品などに組み込むシステムLSI(大規模集積回路)事業を3社が切り出し、官民ファンドの産業革新機構が出資して半導体設計の専門会社を設立するということなのですが、このところ相次いでいるのは日本のハイテク産業に対する厳しい向かい風の現状報道です。

 最初に本報道に触れた時の印象は「やっと今頃になってか」というものです。現在、世界の半導体業界の中にあって売上高首位に君臨する企業は、パソコン向けMPUの世界で独占的な地位を保つインテル(INTC)社であることはご承知の方も多いと思いますが、第2は韓国サムスン電子です。日本の半導体最大手は現在東芝(6502)になりますが、それは辛うじて第4位に食い込むレベルです。ただこれは携帯電話向けなどを主な用途とするフラッシュメモリーの事業について、米サンディスク(SNDK)社との間で製造請負の関係を持っているからです。第5位にルネサスエレクトロニクスが登場しますが、じつは同社は三菱電機(6503)日立製作所(6501)そしてNEC(6701)の半導体部門がそれぞれ独立したものが合併してでき上がった企業であり、90年代前半までは輝きを放っていた日本の大手半導体メーカーの寄せ集めです。

 今回はここにさらに富士通とパナソニックも加わろうという事ですから、90年代にまだDRAMが世界の半導体の主力事業であった当時から今日まで、日本の半導体企業で大手と呼ばれながらも単独で生き残っているものはなくなるということです。ちなみにDRAMで世界第3位となるエルピーダメモリ(6665)は、すでに公的資金を受け入れており、また現在は台湾企業などとの資本業務提携に活路を見い出そうとしています。なぜ、かつては光彩を放っていた日本の半導体企業の名門がこんな事態に陥ってしまったのでしょうか。また今後にその生き残りの芽は残るのかというとかなり疑問です。

■ファブレスのIP企業とファウンダリー

 日本の大手半導体メーカーが沈みゆく中で、異彩を放って急成長し続けた半導体企業の代表格が現在世界第6位の半導体売上高を誇るクアルコム(QCOM)社です。米国はサンディエゴの軍港近くに本拠地を構える同社は、元々は同地が米国海軍の通信技術の集積地であったという背景を下に誕生した企業ですが、携帯電話の通信方式の中でCDMAと呼ばれる技術を実用化し、W-CDMA化への流れの中で大きく企業規模を拡大してきた歴史の新しい会社(1985年設立)です。日本ではKDDI auの端末に「powered by Qualcomm」という文字が裏面にありますので、それでご存知の方も多いかも知れません。サンディエゴ本社を何度か訪問したこともありますが、この会社の特徴は基本的に半導体製造工場を持たないファブレス企業で、創業時点から最も付加価値を生むのは半導体の設計・開発段階であるとしIP企業として設計開発に特化しています。また現在のCEOであるポール・ジェイコブズ氏も、創業者である父ジェイコブズ氏もとてもフランクな方々です。同様なビジネスモデルで有名な企業としては、他にもグラフィック・チップ最大手のエヌビディア(NVDA)社があり、同社は近年ARMアーキテクチャのMPU分野にも進出し、Tegraの商品名でシャープ(6753)の『GALAPAGOS』や東芝(6502)の『REGZA Tablet』に搭載されたり、スマートフォンでは韓国LG製『Optimus』に採用されたりしています。同社のジャンセンCEOも取り巻きに囲まれている遠い存在の人ではありません。

 その一方で台湾のTSMCやグローバル・ファウンドリーズのように、こうしたファブレスのIP企業から半導体生産の受託を受けることに特化した製造メーカーもあります。じつはTSMCの設立も1987年とQualcommの誕生時と大差ありません。ただ逆に言えば、もう25年以上も前からこうした開発・設計と製造を分離するという考え方はこの半導体業界に存在したという事です。その流れに早くから着目し舵を切っていたことで成功したのが今の勝ち組であり、“今頃になって”という感じが拭えないのが今回のルネサスエレクトロニクスと富士通、パナソニックの3社統合の発表です。サンディスク(SNDK)の受託生産工場化していた東芝はその意味で生き残り、アップルの『iPhone』や『iPad』で使われるA4やA5と呼ばれるMPUを受託生産するサムソンもたくましく生き残っています。選択と集中という意味での経営判断の重要性は、前回お伝えしたインターナショナル・ビジネス・マシーンズ(IBM)とNEC(6701)の違いと同様かもしれません。

■システムLSIに大変革がなければ…

 じつはお分かりいただけけるとおり、現在の勝ち組半導体企業のキーワードは、ファブレスのIP企業も受託生産のファウンダリーも単独で市場のマジョリティーを握るような半導体製品を持っているという事にあります。インテルはパソコン向けMPU、Qalcommはケータイやスマートフォン向けMPU、エヌビディアはグラフィック向けチップとスマートフォン向けMPU、そして東芝はこれらに使われるフラッシュメモリーです。残念ながら、ほとんどすでに半導体の製造プロセスの進化速度に付加価値の伸長が同期してしまったDRAMでは開発や設計段階で充分な付加価値を生み出せず、大量生産が可能な「Winner takes all」の段階になってしまっています。つまりここでは価格競争しかありません。これは液晶パネルビジネスでも同様です。サムスンはアップル向けMPUや大量のDRAMの生産も行う事で、あるいは液晶パネルの生産においても、このWinner側にいると言えるでしょう。

 日本勢が活路を見い出そうとしているシステムLSI(大規模集積回路)はどうでしょうか? 残念ながら現時点では自動車や家電向けに全体としてのニーズは見出せるものの、単品を大量生産してキラー・プロダクツとすることができるものとはなっていません。この状況を改善して、汎用性の高いものとしない限り、なかなか活路は見出し難いように思われます。ただじつはすでに汎用性を利かせることのできるシステムLSIの発想はあり、それが普及し切らない理由は自動車メーカーや家電メーカーの個別のニーズがそこに上手く合致し切らないというところにあります。

 ならば、日本企業が国内での生産コストを飛躍的に削減することができるかと言えば、人件費、電力料金、法人税や輸出関税などの高い障壁の前に、一朝一夕の効果的なソリューションは見つけ難いのが現状です。これは半導体産業に限らず、日本の製造業すべてにおいて共通の問題点となっているはずです。日本企業の重い荷物の何かを軽くしてあげないと、益々今後その競争力は衰える方向にあるように思えてなりません。

 市場はギリシャ問題というイベント・リスクに備えて常にシートベルトは締めた状態のまま、当面はこうした日本企業の現状認識と活路の見出し方に投資戦略を練って行く状況を続けざるを得ないと考えています。安易にシートベルトを外して歩き回るのはまだまだ避けた方が良いとみています。

 今週も頑張りましょう。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪低ボラティリティでも収益のチャンス≫

■日経平均の3倍の値動きを目指す!

楽天日本株トリプル・ブルの詳細はこちら
楽天日本株トリプル・ブル

日本の株価指数先物取引および日本の短期公社債を主要投資対象とする。日本の株価指数を対象とした先物取引を積極的に活用することで、日々の基準価額の値動きが日本の株式市場の値動きに対して概ね3倍程度となることを目指して運用を行う。なお、日本の株式を組入れる場合がある。

ファンドの詳細・注文はこちら

楽天日本株トリプル・ベアの詳細はこちら
楽天日本株トリプル・ベア

日本の株価指数先物取引および日本の短期公社債を主要投資対象とする。日本の株価指数を対象とした先物取引を積極的に活用することで、日々の基準価額の値動きが日本の株式市場の値動きに対して概ね3倍程度反対となることを目指して運用を行う。

ファンドの詳細・注文はこちら

 

PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

免責事項

本メールマガジンに掲載している内容はお客様への情報提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、掲載している内容は予告なしに変更または廃止される場合がございます。必ず楽天証券のホームページなどで最新の情報をご確認のうえ、各サービスをご利用くださいますよう、お願いいたします。
また、法人口座でお取引なさっているお客様におかれましては、本メールに記載している金融商品やキャンペーンが対象外となる場合がございます。対象となる金融商品やキャンペーンについての情報は、楽天証券ホームページの各金融商品の説明ページやキャンペーン詳細画面に記載がございます。あらかじめご了承くださいますようお願いいたします。

リスクと費用について

投資信託は、商品によりその投資対象や投資方針、申込手数料等の費用が異なり、多岐にわたりますので、詳細につきましては、それぞれの投資信託の「目論見書」「目論見書補完書面」を必ずご覧ください。また、一部の投資信託には、原則として換金できない期間(クローズド期間)が設けられている場合があります。

■投資信託の取引にかかるリスク

■投資信託の取引にかかる費用

■金融商品取引法に係る表示弊社の取扱商品等にご投資いただく際には、各商品等に所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあります。各商品等へのご投資にかかる手数料等およびリスクについては、楽天証券ホームページの「リスク説明」ページに記載の当該商品等の契約締結前交付書面等をよくお読みになり、内容について十分にご理解ください。

商号等:楽天証券株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号、商品先物取引業者
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会、日本商品先物取引協会

■楽天証券ホームページ
http://www.rakuten-sec.co.jp/

東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド楽天タワー
カスタマーサービスセンター(平日8時-18時)
お手続き専用ダイヤル
0120-885-687(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3322(通話料有料)
各種商品に関するお問い合わせダイヤル
0120-41-1004(通話料無料)
携帯・PHS・050で始まるIP電話からは03-6739-3333(通話料有料)

Copyright © 2012 Rakuten Securities, Inc. All rights reserved.