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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年2月28日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

2月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(2/25終値)
前週末比
(2/18比)
日経平均 10,526.76 -316.04 -2.91%
NYダウ 12,130.45 -260.80 -2.12%
金利・為替 週末終値
(2/25終値)
前週末比
(2/18比)
長期金利 1.240% -0.055%
ドル/円 81.68  
ユーロ/円 112.34  

チュニジア、エジプトそしてリビア三都物語

前週の総括

■火曜日の日経平均株価は今年最大の下げ幅

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価は米国市場が休場となった21日(月)はほぼ高値引けとなる10,857.53円で前週終値より高く始まり、前週の勢いを繋いでこのまま11,000円を目指す展開になるかとも思われましたが、中東の有力な産油国リビアの首都トリポリにまで混乱が広がっていることが伝わったことをきっかけに値を崩し、22日(火)には今年最大の下げ幅となるマイナス192円83銭の下落となって10,664.70円まで急落しました。その後も24日(木)まで値を崩し、週末ややリバウンドしましたが、週を通じた下落幅はマイナス316円、率にしてマイナス2.91%となりました。週末の終値は10,526.76円です。

■独裁国家の多くに動揺が伝播

 チュニジアに始まった体制転換劇がエジプトからついにリビアに伝わり中東の地政学的なリスクは一気に高まり始めました。すでに流れは共産党一党独裁体制の続く中国に伝播していますが、先週は北朝鮮でもデモがあったと伝わるなど、この体制転換劇の流れは世界中に拡散する流れになっているとも言えます。平和裏に物語が進行すれば、これはそうした国々が新たに自由主義経済国家の新興国となって世界経済の刺激剤になることも考えられますが、必ずしも、平和裏にことが進むとは考え難く、結果は世界経済のマイナス要因となる可能性の方が高いと言えます。ひとつの秩序の崩壊は間違いなく混乱を招きます。

 リビア政府は政府軍がデモ隊に攻撃を加えている映像がインターネット上で配信されることを恐れているようですが、一度多くの人の関心が高い動画などがネット上で公開されてしまえば、それが拡がることを阻止することは不可能であることは尖閣諸島沖事件の時のビデオ公開の件で、図らずも日本で証明されており、全ての動画サイトというより、インターネット自体を国内で使用禁止にしない限り情報伝播の波は止めようがありません。また国外からの映像持ち込みもUSBメモリーやメモリーカードを利用すればいともたやすいことであり国内だけ規制を掛けるということも不可能に近いと思われます。結果、これらの情報が草の根的に民衆に伝わることでチュニジアのジャスミン革命に始まった流れはエジプトに伝わり、今や中東などの多くの国々に広がっています。

 ちなみに、リビアはカダフィ大佐が40年以上にわたり独裁政権を握ってきた国ですが、チュニジアとエジプトの中間に位置する地理的な状況から言っても、両サイドの隣国に狼煙が上がっているのにリビアだけが旧体制を維持できると考えるのはそもそも無理だったのです。


(出典:Bloomberg.)

WTI原油先物のこの1年間の動きです。----------- 先週一気に98ドル台にまで原油価格が上昇したことが解ります。>

■一義的な問題は原油価格の上昇

 中東情勢の混乱がなぜ世界経済に打撃を与えるかと言えば、それは当然のことながら原油価格に影響が及ぶからです。原油価格の上昇はおおよそ全ての国々の産業に燃料面でも原材料価格という面でも影響を与えます。この問題が当初チュニジアから始まってエジプトに拡散した段階、どうして米国株や日本株が値上がり基調を維持出来たかと言えば、それはこの原油価格に複数の種類があり、NY市場や日本市場が主として注目しているWTI原油先物の価格はすっ飛び上がっていなかったからです。前々回もご案内しましたが、世界で最も活発に取引される原油先物は有名なNew York Mercantile Exchangeに上場されているいわゆる「WTI原油先物」であり、こちらの値段が落ち着いていたことによります。落ち着いていたというよりも、エジプト情勢緊迫化の流れの中で、むしろ84ドル台にまで値下がりしていました。

 ただ一方でヨーロッパやアフリカ、あるいは中東の精製石油の価格に影響が高いと言われる「北海ブレント原油(Brent Crude)」は高止まりしていたので、警戒が必要だと申し上げていたのですが、先週はついにWTI原油先物価格が98ドル台にまで急騰したため、多くの資本市場が冷や水を浴びせられたという状況です。ただ、リビアからの原油船積みは継続されているというような話や、あるいはサウジアラビアがリビア産原油の不足分を補うために緊急増産するなどの報などもあり、現在の緊張が長期化しない限りは早晩この問題は解決の糸口が見えて来るかも知れません。

■下げも悪いことばかりではなかった

 前回日経平均株価のボラティリティの急低下についてお伝えしましたが、かなりな危険水域に入っていたものが、このところの市場変動で2倍以上に跳ね上がったため次のサイクルへのエネルギーの蓄積にはなったように思われます。売買代金の方も5営業日のうち3営業日は1兆7,000億円を超えており、資金の回転が利き出していることが窺われます。やはり連騰が続くとボラティリティの低下や売買代金の低下を伴って市場はエネルギーを失いやすくなるものですが、回転が効いた資金は次のフェーズで再び活躍してくれるはずですからこうした下げの調整も悪いことばかりではありません。

■米消費者信頼感指数は上方修正

 25日に発表された2月のロイター・ミシガン大学消費者マインド指数は3年振りの高水準となりました。2月の確定値は速報値の75.1から上方修正されて77.5と前月(74.2)から上昇、ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想中央値は75.5だったことが示すように市場の予想を上回る結果となったため、市場を押し上げる要因となりました。

 ただ一方で米商務省が発表した第4四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、年率)改定値は前期比2.8%増と、速報値の3.2%増から下方修正されています。とはいえ、第3四半期は2.6%増だったこともあり、トレンドは上昇しているというのが今回の数値に対する市場の受け取り方のようです。


(作成:楽天投信投資顧問)

<PIIGS諸国のCDSの推移です。----------- 1月末に向かって安定化傾向でしたが、再び静かに上昇傾向になっていることが気掛かりです。>

今週のポイント

■日本のクレジット・リスクに市場は気が付くかも知れない

 今回のリビア騒動の中で、円は対ドルで83円台から81円台にまで買い進まれました。対ユーロではあまり変動はありませんが、今回も投資マネーが安全な通貨とみなして円を買ったと見るのは早計かも知れません。ただこの見方が正しければ、日本は速やかに打開策を打たないと新年度が始まる頃から資本市場でひと騒動起きるかも知れないと危惧しています。

 先週1週間で米国債金利は10年債金利で約3.58%から約3.41%にまで17bpの低下となりました。一方日本の同じ10年国債の金利は約1.30%から約1.24%までの6bpの低下に留まっています。よく言われるところの日米金利差という視点でいえば10年債利回りは金利差が縮小していますので、これは円高に振れる要因になります。

 問題は米国長期金利が低下したというポイントです。このところ米国長期金利が上昇傾向にあった理由は市場が想定していたよりも米国景気の回復度合いは強いというものだからですが、この点に関して言えば、前述の通り消費者信頼感指数などのマクロデータでこの流れを否定するものはこの間ほとんど発表されていません。確かに第4四半期の実質国内総生産(GDP)が下方修正されたりはしていますが、株式市場の動きを見る限りはこれを見ながらも上昇しています。すなわち米国景気の回復を市場は考えています。

 その回復速度の期待値レベルが原油価格の上昇によってやや減速するので長期金利の上昇に歯止めが掛かったという見方もできますが、むしろ安全な投資先として米国債が買われたと見ることの方に妥当性がありそうです。リーマン・ショック以降、円は安全な通貨という評価の下で為替市場では取引されてきましたが、今回、その化けの皮が剥がれつつあるという見方ができなくはありません。そう、日本のクレジット・リスクを真剣に考えるフェーズが近づいて来たかも知れないという意味です。

■この時期の国会混乱は大きな痛手となる可能性大

 かねがね「ハイテク株強気、米国株強気、日本株やや弱気」と申上げてきました。その日本株に対して弱気な最たる理由は政治です。今週から3月に入ります。しかしながら国会審議の状況を見る限り、2011年度予算をまともに行政が使えるようになるのはどうやら当分先のことになるような雲行きです。仮に民主党が衆議院で予算案を強引に可決して衆院の優越的立場ということで参議院での否決を跳ね返したとしても、その来年度予算財源の半分を賄う赤字国債発行については関連法案が可決されない限りは、マイホームを買うことは決定したけれど、住宅ローンの申請が銀行で認可されないのと同じ状態になります。「取りあえず手元資金で建てられるところまで建築して、残りは住宅ローンが認可されて実行されることを信じて建て始めちゃえばいいよ」なんてことを、皆さんは通常されますか?公共工事についてはまさにこの状態になるはずです。公務員の給料も途中で支給されなくなるかもしれません。

 日本という国はしっかりした官僚機構があり、今までは永田町の動静に無頓着でもこの国は回ってきましたし、国民性とも言える甘えが「誰かが何とかしてくれる」という考えを許容してきました。選挙で選んだ実感のない人たちが国会議事堂の中に集まってこの国の方向性を決めていようとも大丈夫という思いは強いことは、投票率を見れば明らかです。ただもし上述のようなことが現実となれば、行政サービスが止まる可能性だってあります。その時初めて政治はワイドショーではなく、実生活に直接跳ね返るものなのだということを多くの人が知るのかも知れません。

 米国でも90年代に予算が通らないがために行政サービスが止まるという同様な事態が起こっています。その時の記憶を紐解けば、住民票が取得できない程度ならばまだ良い方ですが、ゴミの回収が行われずに町に溢れ返るという現実は大変なことです。公立の学校は休校になり、子どもたちは行き場がありません。こうした現実が突き付けられた時、人々は何を思うのでしょうか?この国の国債は95%国内で消化されているからいつまでも安全だというシナリオをそれでも信じ続けられるのでしょうか?

 先の日本国債格下げの理由の中には、こうした永田町の現在の混乱と予想される状況という要素が含まれていると聞きます。だとしたら円が安全な通貨として買われる理由はどんどん希薄なものとなる筈です。このところの日米の長期金利の動き、そして為替市場の動きを見ていると、そんな恐ろしいシナリオへの懸念を外国人投資家が持ち始めている可能性を強く感じます。政治問題をここでは深く言及しませんが、早く永田町が本当にこの国の将来を考える人達の集まるところとなって正常化して欲しいと思っています。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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