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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年2月14日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

2月第2週

マーケット概況

株式 週末終値
(2/10終値)
前週末比
(2/4比)
日経平均 10,605.65 +62.13 +0.59%
NYダウ 12,273.26 +181.11 +1.50%
金利・為替 週末終値
(2/10終値)
前週末比
(2/4比)
長期金利 1.295% +0.015%
ドル/円 83.43  
ユーロ/円 113.06  

“日本株弱気”の御旗を降ろす時

前週の総括

■日経平均株価11,000円台への道のりは?

 この一週間の市場の動きは上記の表の通りです。中国が春節に伴う連休の最終日(8日)に、昨年12月26日以来、本格的な金融引き締めに転じた昨年10月以降では3回目となる0.25%の利上げを発表し9日から実施しました。連休最終日に利上げを発表するというのは極めて異例なことであり、また市場にとっては懸念材料の突然の具現化ですから株式市場が動揺してもおかしくはありませんでしたが、日経平均株価は一時10,700円台を回復、大引けは10,635.98円で終了しました。もちろん米国市場が連騰しているなどの好材料に後押しされた面は多々ありますが、緊迫したエジプト情勢、混迷を続ける日本の政局、そして3連休を控えているといった、センチメントの悪い時ならば、株価下落の方が可能性は高くなるような状況で日経平均株価が高値更新を果たしたことの意味は大きいと思われます。

■中国0.25%の利上げ

 春節明け後、中国人民銀行はしばらく状況判断をして消費者物価指数(CPI)などの動向を見ながら利上げに動くと考えていましたので8日の利上げ発表には正直驚きました。中国の場合、日本や米国のように短期市場金利を中央銀行が目標水準に誘導する方法ではなく、市中銀行の預金および貸出金利の上下操作を直接的に中央銀行が金融調節として行いますが、8日の発表で金融機関の貸出と預金の基準金利を0.25%引き上げるとし、日銀などがそうするように「即日実施」ではなく、翌9日からの実施としました。

 中国では不動産価格の急騰などに留まらず、干ばつや寒害で食料品を中心にインフレ加速の懸念が強まっていましたし、さらには春節中の個人消費動向は景気回復の表れで好調が伝えられていましたので、極めて予防的に先行して利上げをしたと思われます。これにより期間1年の基準金利は貸出が6.06%、預金が3.00%となりましたが、まだ経済成長率は遥かにこれらを上回っており、ゆえに影響は限定的なものに留まったと市場は判断したものと思われます。


(出典:Bloomberg.)

上海総合指数のこの1年間の動きです。----------- 直近の動きで見ると、1月に利上げ懸念が高まった時の方が地合いは悪く、利上げ後も陽線が続いていることがわかります。>

■ムバラク大統領は辞任に追い込まれた

 チュニジアの「ジャスミン革命」に触発される形で起こったエジプト情勢の緊張は、結局29年間にわたりエジプトを統治してきたムバラク大統領が11日に即時辞任を発表するという形で一様の決着を見ました。当面は権力を軍が掌握する形とし、今後はいかに民主化が進むかということが注目となりますが、すでに米国政府は歓迎の意向を示しており、また先週末のNY市場もこれを歓迎する形で上昇しています。

■米国株式市場は高値更新続く

 こうした流れを受けて米国株式市場は週末、NYダウが2年8カ月ぶり(2008年6月13日以来)となる高値を更新し、S&P500種も2008年6月19日以来の高値更新、一方ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数に至っては約3年3か月ぶり(2007年11月6日以来)となる高値を更新しています。前日にはシスコシステムズ(CSCO)の決算でグロスマージンが大きく下振れして過去9年間で最低となる水準が発表されたことで連騰が9日間でストップしましたが、こうして見るとちょうど良い一呼吸という場面になったのかも知れません。

 シスコシステムズの減益が伝えられる一方で、通信機器大手アルカテル・ルーセント(ALU)は大幅増益となる四半期決算を発表しています。同社はフランスのアルカテル社と米国ベル研究所をルーツに持つルーセント・テクノロジー社が合併して誕生した会社で、またジュニパーネットワークス(JNPR)F5ネットワークス(FFIV)の株価推移を追ってみても、シスコシステムズの状況は個社の問題というのが一般的な認識です。

■主役交代の時

 週末にノキア(NOK)マイクロソフト(MSFT)が携帯電話の開発で提携することが伝えられましたが、どちらの株価も下落しています。前者は携帯電話最大手と称されるフィンランドの携帯端末のメーカーであり、後者は言わずもがなのほぼ世界のパソコンOSを牛耳っている巨人ですが、この両者が携帯電話分野で提携すると発表しても、市場はすでにそれを「凄い」とは思わなかったようです。ノキアは『iPhone』登場でアップル(AAPL)が開拓したスマートフォンの世界へのリソース投入が遅れ、また買収した『Symbian OS』に拘り続けて最近爆発的に普及し始めた『Android OS』への対応が遅れたことが敗因と言われています。このため数年前なら世紀の提携ぐらいに受け止められても良い話も、すでに市場はまったく好感していません。日進月歩のハイテク業界の恐ろしさでもありますが、大きな右肩上がりのうねりがここにあることだけは確かだと実感します。


(出典:Bloomberg.)

WTI原油先物価格のこの1年間です。----------- かなり落ち着いて気ました。>


(出典:Bloomberg.)

<北海ブレント原油先物価格のこの1年間です。----------- 週末終値はまだ101.43ドルと100ドルを超えたままなのが気掛かりです。>

■原油価格の2極化

 エジプト情勢の緊迫化で「スエズ運河封鎖」が危惧されたことで急騰した原油価格ですが、世界で最も活発に取引される商品先物として有名なニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上場されているいわゆる「WTI(西テキサス原油(WTI:West Texas Intermediate))原油先物」は先月末には92ドルを超える水準にまで急騰しましたが、ムバラク大統領の辞任発表などにより85ドル台にまで下落してホッとした感じです。国内のガソリン価格などもこのところ目立って上昇してきており、原油価格上昇の動きからは目が離せません。

 ただ一方でヨーロッパやアフリカ、あるいは中東の精製石油の価格に影響が高いと言われ、一般的にはWTIよりも1ドル程度は常に安いとされる北海ブレント原油(Brent Crude)の値段はさほど下がっておらず、直近の高値が2月2日に付けた102.34ドルに対して週末終値も101.43ドルという状況です。この原油価格の2極化の状況はやや気になるところです。つまりムバラク大統領の辞任でおおむね緊張感終了と捉えている米国市場と、この先の民主化や権力の移行プロセス、あるいは中東独裁諸国への同問題の拡がりを危惧する“地元近隣”市場があるということです。

今週のポイント

■トヨタの好決算が示すもの

 1月中旬の強気相場の中でも3,600円で跳ね返され、3,400円〜3,500円前後で揉み合っていた日本最大の時価総額を誇るトヨタ自動車(7203)の株価が決算発表を受けて一気に3,800円目前まですっとび跳ねたことは、今後のマーケットを見ていく上で重要なポイントになると思われます。

 同社の状況は米国市場でのビジネス・ウェイトが高く、好調な新興国市場の景気回復を取り込んで売上を伸ばしているホンダ(7267)日産(7201)に比べるとむしろ「負け組」というレッテルを市場から貼られている印象が強かったですが、今回の決算内容には同社の底力を垣間見たような気がします。

 この意味するところはふたつあり、ひとつは個社としてトヨタ自動車のビジネス自体が市場の思惑以上に回復しているということであり、もうひとつは同社がそのビジネスを大きく委ねる米国市場の景気回復が「市場が思っている以上に進んでいる」ということだと思います。同社が発表した北米市場の動向は「昨年10月以降は活性化してきた。昨年は単独の販売台数が176万台となったが、今年は190万台の販売を計画している。最近の市場動向を考えると、ひょっとしたらもう少し上をいくかもしれない」というものです。ゼネラル・モーターズ(GM)などの状況から推し量っても米国景気の回復については同様な見たては可能かと思います。

 さらに同社は2011年3月期の世界販売台数見通しを上方修正しました。内容は昨年11月時点での見通しは前期比2%増の741万台でしたが、これを3%増の748万台と7万台の引き上げたというものです。地域別ではアジアが28%増の125万台(従来予想は123万台)と2万台増、国内は7%減の202万台(同199万台)と3万台増、他で4万台というものです。たかが7万台と思われるかも知れませんが、富士重工業(7270)が今期の販売計画を好調な足元状況から4,000台増やしても総数で66万3,400台、つまりトヨタ自動車のそれは富士重工業1社の1割以上という数値から推し量って貰えると良いかも知れないと思います。

 もうひとつ、北米で話題になったプリウスの意図せぬ急加速の話ですが、米運輸省と米航空宇宙局(NASA)による約10カ月に及ぶ調査の結果、電子制御システムに急加速を引き起こすような欠陥は見当たらなかったとの最終報告書が発表されました。じゃあ、あの騒ぎは何だったのかと憤りますが、これは自動車業界に普及している電気制御システムにとっても朗報で真面目なビジネスがリベンジするチャンスになるかも知れません。蛇足ですが当初プリウスに厳しい発言をしていてラフード米運輸長官も8日の記者会見で「娘もトヨタ自動車の車を買った」と述べ、安全性にお墨付きを与えたようです。日本を叩きたい、そういうタイミングだったのかも知れません。

 こうした背景があって同社の株価はチャート上大きく窓開けして約8%超の上昇となっているのですが、日本最大の時価総額の企業がこれだけの上昇を演じたことは極めて大きなインパクトがあると思われます。もしTOPIXの時価総額比率並みのウェイトを維持していないポートフォリオがあったとすれば、それはこのトラッキングエラーを埋めるために動かないとなりません。また自動車産業ほど裾野の広い産業はありませんから、そのトップ企業の動きは今後多くのところで見直しが必要になると思います。ポジティブ・サプライズがあったということは、それだけ市場が織り込んでいなかった、見方を誤っていたということの証左なのですから。

■大証次期デリバティブシステム『J-GATE』稼働の影響

 14日より大証次期デリバティブシステム『J-GATE』稼働に伴い、先物・オプション取引の取引制度に変更があります。いくつもポイントはあるのですが、立会終了時間が3時10分から3時15分へと変更になります。これに伴い「寄付・引け・不成」といった取引形態がなくなるのですが、裁定業者や機関投資家の一部には売買の執行方法に変更を加えないとならない場合があり、これらの影響については今後注視していく必要があります。ご承知の通り日経平均の裁定取引とは現物株のバスケット取引と先物取引との間で、先物の理論価格と現物価格の間に乖離が発生した場合に収益機会を見出して行う取引ですが、先物取引の執行方法等に変更が生じると従来通りの方法ではエラーが拡大する場合があります。それを防ぐためにどうするかは各裁定業者のノウハウということになります。またインデックス・ファンドなどの運用においても、キャッシュ・ポジションなどの関係から一時的に先物取引を代替的に用いる場合がありますが、システム変更に伴う市場の慣れが見えるまでその利用を控える動きも出るかも知れません。制度やシステムが変わるとしばらくはその前後で市場の混乱が生じる場合がありますが、今回はその例にあたると思われますので注意深く様子を見守りたいと思います。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪日経平均株価上伸、週末終値は10,500円水準!≫

■上昇する原油価格に注目!

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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