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第322回 イエレンの最適政策と円キャリートレード

2013年11月21日

イエレンは「完全雇用ターゲット」を主張

イエレンの公聴会でQE縮小後ズレ観測が強化されるなか、昨日11月20日にFOMC議事録(10月31日分)が発表になった。

FOMC議事録は大まかに言うと、

「経済状況によって正当化されれば、今後数回の会合で緩和縮小できると一部で認識」
「一部メンバーの間からは、超過準備預金金利(IOER)引き下げが低金利環境維持の一助になるとの見解が示された」
「数人のメンバーは、利上げの検討を始める際に失業率に関する数値基準を引き下げることが有益と指摘したが、数値基準の変更はFRBの信認失墜を招きかねないとして、反対する声も上がった
「代替策で購入縮小の影響を相殺することが適切となる可能性があり、超過準備預金金利の引き下げは検討の価値がある。一部は6.5%の失業率数値基準の引き下げを支持している

という内容となっている

昨日のNYダウは「今後数回の会合で緩和縮小できると一部で認識」というFOMC議事録(10月31日分)を嫌気し66ドル安で引けたと解説されているが、FOMC議事録は中立的な内容であったように感じる。

NYダウの下げは10月17日のレポートに書いた18日エンベロープ3%(18日移動平均線±3%乖離バンド)という「レンジの上限」を意識したファンド勢の売りであり、ヘルシー・コレクション(健全な調整)と言えるだろう。

NYダウ(日足) エンベロープの上限に接近

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:18日移動平均線±3%乖離バンド(赤)・21日ボリンジャーバンド±2シグマ(紫)
<10月17日のレポートに書いたように、今年のNYダウは18日エンベロープ3%(18日移動平均線±3%乖離バンド)の中での動きとなっている>


(出所:石原順)

FOMC議事録(10月31日分)で筆者が注目したのは、次期FRB議長のイエレンら数名のメンバーが、「利上げの検討を始める際に失業率に関する数値基準を引き下げることが有益と指摘した」ことである。先週のレポートに書いたように、イエレンが「テーラールール」の代替として持ち出した「最適政策」は、「失業率5.5%という事実上の完全雇用」をゴールとしており、イエレンの政策は「バーナンキよりもさらに緩和的になる」とみるファンドが多い。

2012年4月にイエレンが発表した「米政策金利見通し」 利上げの時期は大きく後ズレ?

<イエレンは「雇用」と「物価」の二重政策目標を持つFRBは最適政策(Optimal Control)を実施すべきと主張、「最適政策」モデルを用いたシミュレーションでは、失業率のターゲットを5.5%に下げると経済パフォーマンスが向上するという>


(出所:FRB 「The Economic Outlook and Monetary Policy」Janet L. Yellen)

問題は、「失業率ターゲット(数値基準)の変更はFRBの信認失墜を招きかねない」として、FOMCメンバーの中のタカ派が反対していることだ。イエレンはバブルが起こらない限り金融緩和をやめる気はなさそうだが、FOMCという組織(タカ派)を掌握できるかが今後の課題となろう。

ただし、イエレンが新たなフォワードガイダンスで、失業率6.5%としている利上げの目安を5.5%に引き下げることが出来ないとしても、イエレンが使っている「FRB/USモデル」でシミュレーションすると、米国の失業率が6.5%を下回るのは2015年の第4四半期となる模様である。

また、このモデル通り失業率が低下しても、実際の利上げは2016年第2四半期になるという。いずれにせよ、かなりの長期間ゼロ金利が続くのは間違いないし、FOMCが「完全雇用ターゲット」の検討を開始したことがFOMC議事録でも明らかになった。

米国でくすぶるデフレ懸念

昨日発表された10月米消費者物価指数(CPI)は予想外の低下となり、FRBの緩和継続を正当化する内容となった。10月CPIは低下し、前年比では1.0%上昇と前月の1.2%上昇から鈍化し、2009年10月以来の4年ぶりの低い伸びとなっている。これにより、「米国のインフレ指数はFRBの超緩和スタンスを支援する」という見方が拡がっている。

10月米消費者物価指数(CPI) 2003年1月~2013年10月(対前年比)

インフレにならない限りバブルは続く?
10月米消費者物価指数(CPI)は2009年10月以来の4年ぶりの低い伸びとなり、FRBの緩和継続を正当化


(出所:石原順)

2013年11月20日付のフィナンシャル・タイムズ紙は『世界が日本流の長期停滞に入る恐れ』という記事で、「いわゆる長期停滞に陥る可能性を指摘したのはサマーズ氏が初めてではない。思慮深いアナリストたちは金融危機以来ずっと、日本の失われた10年の二の舞いになるのではという恐怖を感じてきた。しかし、サマーズ氏の説明は実に華麗で見事だった。」と報道している。

11月8日のIMF講演でサマーズは、「2007~08年の世界金融危機からの回復は明らかに弱々しい。超緩和的な金融政策が取られているにもかかわらず、このGDPの伸び悩みは長期に及んでいる」「金融危機で前はどこの国もバブル経済だったが、行き過ぎを示唆する明らかな兆候(特にトレンドを上回る経済成長やインフレ率)は英国でも米国でも危機がやって来る前には一切見られなかった」として、先進国経済の日本化(デフレ)を危惧している。

先週のレポートで「FRBのジャパナイゼーション恐怖症が再燃?」と書いたが、「QEでこれだけカネをばらまいてもインフレにならない」という事態に、イエレンら一部のFRBハト派は日本化の恐怖を感じているはずだ。

昨日はブラード米セントルイス連銀総裁が「最近の米経済指標はやや上向いているもようで、11月の雇用統計が堅調なら次回12月のFOMCで債券買い入れ縮小が決まる可能性が高まる」とタカ派的な意見を述べながらも、「マイナス預金金利の影響めぐる検証は望ましい。銀行貸出促進に有効となる可能性がある」とマイナス金利について発言している。

FRB幹部からマイナス金利発言が飛び出したことで市場は驚いたというが、あるファンドの幹部は「QEを縮小するにあたって、FRBは代替策を用意しようとしている。6.5%の失業率数値基準の引き下げが有力だ」と語っている。

ECBがマイナス金利検討?

11月20日のNY市場では、「ECBが中銀預金金利のマイナス圏への引き下げを検討しており、実施を決める場合にはマイナス0.1%とすることを検討する」(11月20日ブルームバーグ)という報道で、ユーロが全面安相場となった。

ユーロ/ドル(日足) 乱高下相場 1.35を超えると牽制発言が・・

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ECBに対するマイナス金利や量的緩和再開への要請が高まっているのは間違いないようだ。米国と同様にユーロ圏でもインフレ率が急激に低下しており、インフレ率がゼロに近いデフレになっている国も多い。ユーロ/ドルは1.35を超えると当局者からの通貨高牽制が出てくるが、一段のユーロ高については景気回復を阻害する可能性が大きく、当局は神経質になっているようである。

ユーロ圏の消費者物価指数(CPI) 2001年10月~2013年10月(対前年比)

ユーロ圏各国の2014年度の予算案は財政緊縮路線
2013年10月は前年比0.7%と2009年11月以来の低水準となり、デフレリスクが顕在化


(出所:石原順)

イエレンバブルで円キャリートレードが活発化

ドラギ総裁が「マイナス金利」や「3回目のLTRO」に言及しているのは、ユーロ安誘導の思惑からだと思われる。ユーロ圏の過剰流動性は急激に縮小しており、QE縮小を計画している米国としても、ECBが再度量的緩和を行なうことや日本が来年の早い段階で追加緩和を行なうことは望ましいだろう。ユーロキャリートレードや円キャリートレードが相場の下支えになるからだ。

QE縮小時期はともかく、イエレンFRBが「市場の予想を超えるゼロ金利の長期化」を画策していることは明確である。ECBも再緩和を迫られるなか、日銀が2014年4月の消費増税前に追加緩和(1~2月か?)を行なうのではないかという思惑もくすぶっている。

米・欧・日の金融緩和姿勢をみると、「米国のQE縮小時期の議論」で右往左往しながらも、当面はカネ余り相場がまだ続くだろう。相当なバブル相場にならない限り、イエレンは金融緩和姿勢を維持するだろう。イエレンは先の公聴会で、「今の米国株にバブルの兆候はない」と発言しており、バブルのノリシロは大きい。カネ余り相場だけに利食い時がむずかしいが、桜の咲く頃までは基本的に堅調な相場が続きそうだ。

株がバブルするリスクオン相場では円安が進行しやすい。ドル/円は11月14日の相場で100円を超えてきた。日足チャートは久しぶりにボリンジャーバンドが拡大しており、ここからトレンドがさらに大きくなるかが注目される。

ドル/円(日足) 久々にボリンジャーバンド拡大中

上段:13日(赤)・26日(青)・55日(緑)標準偏差ボラティリティ
下段:21日ボリンジャーバンド2シグマ(紫)


(出所:石原順)

100円超の相場は「実需の動向次第」だが、今後100円60銭を上抜けると101円50銭103円70銭といったターゲットまで上昇するポテンシャルを秘めたチャート形状となっている。通常、「強力な買いトレンド」相場では週足にもトレンドが発生する。現在はまだ週足のトレンド示唆がないため、上値を買い上がってもよい展開にはなっていないが、年内は「押し目買い」が報われる相場展開となりそうだ。

日々の相場動向は、ブログ『日々の泡』を参照されたい。

ドル/円(週足) 相場は21週ボリンジャーバンド+1シグマを超えてきたが、週足のトレンドはまだ発生していない。

上段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21週ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

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