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第311回 勝負! か見極めか? 9月相場を読む

2013年9月5日

ドル/円の上値ターゲット

8月15日のレポート「ドル/円相場は9月にレンジブレイクか?」で述べた通り、ドル/円は9月2日に98円75~85銭を走っていた上値抵抗線をブレイクした。

相場の教科書通りに考えると、今後のドル/円相場は三角形の底辺である9円95銭(103.73-93.78=9.95)の値幅分だけ上昇の起爆力を持つことになる。上げ相場の起点は8月28日安値96円81銭となり、この安値に9円95銭を足した106円76銭が年末辺りまでの上値ターゲットとなる。

ドル/円(日足) 三角保合の上方ブレイクと今後の上値ターゲット


(出所:石原順)

これは円売り派の投資家にとっての「ベスト・シナリオ」であり、筆者も年末辺りには105円~107円あたりまでの上昇があってもおかしくないと考えている。しかし、目先の9月相場はリスク要因が多すぎて一筋縄ではいきそうにない。以下に、9月相場のイベントを検証してみよう。

米雇用統計とジブリの呪い

9月6日に発表される米8月雇用統計は、非農業部門雇用者数は+18万人・失業率が7.4%の市場予想となっている。「QE縮小を促す良い数字が出てくるのでは?」という思惑から、一部に+20万人を超えるという予想も出ているが、例年8月の雇用統計は速報値が悪く確報値が高い(後で上方修正)という傾向がある。今回もこの傾向が反映されれば、速報値が雇用実勢より低めに出てくる可能性もあるので注意が必要だ。

市場関係者の茶飲み話になっているのが、「ジブリの呪い」である。日本テレビの「金曜ロードショー」が急遽予定を変更し、今週金曜日に宮崎駿監督作品「紅の豚」を放送する。「ジブリ作品の放映後は株や為替市場が大荒れになる」というアノマリーがあり、今回の雇用統計も真顔で警戒する向きが多い。前回8月2日の米7月雇用統計は、「ジブリの呪い」で非農業雇用者数が市場予想を大きく下回り、まさかの結果(ドル/円も1円以上の円高)となったことは記憶に新しい。

雇用統計の数字が悪ければQE縮小観測の後退から「株高、債券高(金利安)、ドル安」に反応し、雇用統計の数字が良ければ9月QE縮小実施観測で「株安、債券安(金利高)、ドル高」に反応すると予測されている。雇用統計が良くてもQE縮小観測から米国株が下落するようだと、ドルの上値は限られるだろう。

米雇用統計の推移(2000年~2013年)

8月雇用統計はNFP+18万人・失業率7.4%が市場予測の中央値


(出所:石原順)

東京オリンピックはあるのか?

2020年夏季オリンピック開催地が9月8日午前5時(日本時間)に決まる。日本は1988年の名古屋、2008年の大阪、2016年の東京と三回連続でオリンピック招致に失敗しており、今回は4度目のトライとなる。対抗候補地のマドリードが財政不安、イスタンブールが政情不安定と自滅していったが、ここにきて本命だった東京も「福島第1原発での汚染水問題が招致に深刻な影響を与えそうだ」と報道されている。

どこが候補地になるかは「丁半バクチ」の状態だ。東京に決まれば株価急騰との景気のいい話がある一方で、招致に失敗すれば「がっかり感」が東京市場を覆い、経済的ダメージよりも精神的ダメージが大きくなるだろう。

シリア情勢

シリア情勢は「軍事介入があったとしても90日以内にとどまる」ということで、リスク回避の動きが一服しているが、9月9日以降の動向で再び緊張感が高まれば、円やスイスフランの伝統的な逃避通貨、あるいは原油高を受けてのノルウェー・クローネが買われそうだ。

問題は9日からの議会でシリア問題が紛糾すると、米国の連邦債務問題や新FRB議長指名が後ズレしていく懸念があることだ。米株式市場の反応によっては、QE縮小に影響を与える可能性がないとはいえない。仮にQE縮小が後ズレすれば、為替市場はドル安で反応するだろう。

新興国危機

新興国は多くの国で景気がさえない状況となっている。この問題については最近のレポートで何回も取上げているのでここでは詳しく述べないが、新興国の経済が回復するには通貨安の期間が長期的に続くことと、金利のもう一段の上昇が必要だろう。95~98年のアジア危機の連鎖時と比べ新興国の外貨準備は約3倍になっており、今のところ大きな危機は起きていない。

リスク要因は「強いドルが持論」のサマーズがFRB議長に指名されることだ。ドル高政策というレジーム・チェンジは世界の資金フローに大きな影響を与える。ドル安局面では投資マネーが米国から世界に分散されるが、ドル高局面では世界から米国にマネーが戻ってくる。危機は新興国からマネーが一斉に抜けたときに起こる。

9月FOMCでQE縮小が実施されないと…

筆者は9月18日のFOMCで、QEの縮小が決定されるとみている。景気が悪くなれば、また資産買い入れを増額するという選択肢も持っているからだ。QE縮小観測によって8月以降米株の下落や金利の上昇が起こったことから、FOMCは「縮小幅を減額することで金融市場への影響を和らげるだろう」という観測が増えている。

初回の減額幅はこれまで200~250億ドルがコンセンサスだったが、現在は150億ドル(国債100億・MBS50億)がコンセンサスとなっているようだ。リスク要因は9月18日にQE縮小が行なわれないことである。QE縮小が後ズレすると、相場のモヤモヤ感が一層強まるだろう。マーケットが嫌うのは不確実性である。

また、2009年以降の米国株上昇の原動力はバーナンキの量的緩和政策であった。QE減額にすぎないとはいえ米国が出口に向うとなれば、5年間どっぷり浸かってきた市場環境に地殻変動が生じてもおかしくない。

恐怖指数と呼ばれるVIX指数やセントルイス連銀が発表している「金融ストレス指数」(フィナンシャル・ストレス・インデックス)の楽観をみていると、QE縮小やサマーズFRB議長というリスク・イベントを市場が織り込んでいるのかどうかは疑わしい限りである。

米国の量的緩和政策とNYダウの週足

金融相場から業績相場への転換はうまくいくのか?


(出所:石原順)

金融ストレス指数 QE縮小に市場は楽観的?

(金融ストレス指数:セントルイス連銀が18のデータから算出した「金融市場の不安感を示す指標」で、金融ストレス指数が上昇すれば金融市場のリスクが上昇、金融ストレス指数が低下すれば金融市場におけるリスクが低下したことを示唆する)


(出所:セントルイス連銀)

米国の連邦債務問題

米国の連邦債務は法的上限に達しているが、与野党間の財政協議は難航している。米財務省は10月11日まで特別措置を継続するが、この問題は最終的には連邦債務上限引き上げで妥結されるだろう。ただ、シリア問題と合せて政争の道具とされやすく、ギリギリまで揉めるだろう。

日本の消費増税の有無

日本の消費増税の有無は9月9日のGDP改定値と10月1日に公表される9月日銀短観待ちとなっているが、 政府の大本営発表ほど景気回復基調は盤石ではない。消費増税は長期的に日本の景気に大きな陰を落とす可能性が大きい。しかし、消費増税見送りとなれば、8月初旬にみられた投機筋による「円買い・株売り」が出ると噂されている。

FRB議長の後任人事

米国の政策金利は当分上がらない予定だが、サマーズがFRB議長になればそのシナリオはどうなるかわからない。8月29日にBNPパリバが発表した試算によると、「サマーズ氏がFRB議長に就任した場合、イエレン氏がなった場合に比べ、米長期金利の指標となる10年物国債利回りは向こう数年間で0.50%も余計に上昇する」という。

8月16日のサマーズ優勢報道以降、2.7%台半ばで推移していた米10年国債利回りは2.9%まで上昇している。米国債市場はサマーズ氏の就任を警戒しはじめたようだ。

米国債利回り(1カ月~30年) 1カ月前に比べて長期だけでなく2年超の金利も上がっている


(出所:フィナンシャルタイムズ)

サマーズは一部で言われるほどタカ派ではないとの見方もあるが、「アベノミクス」の効果についても「半年もてばよい」と辛辣であり、ロジックで動くサマーズがFRB議長になると、日本にとっても手強い相手となりそうだ。クリントン政権をコピーしているオバマ政権はおそらくサマーズを指名するだろう。

表向きの雇用統計の数字と違って、セントルイス連銀が発表している「全人口に対する民間労働者の比率」をみると、米国の雇用はお寒い限りだ。過去5年間の量的緩和政策でも雇用はそれほど回復しておらず、株は上がったものの雇用に対する量的緩和政策の効果は出ていない。そのため、オバマ大統領は内需主導の経済に転換し、米国内での投資や雇用を増やそうとしている。サマーズが提案している「本国投資法(Homeland Investment Act)」は、そうした政策の流れの中で出てきたものだ。

一方、FRB議長レース初期の本命であったイエレンやコーンがFRB議長になれば、バーナンキ時代の延長だ。しかし、誰がなろうと米国が出口に向かう方向性に変わりはないだろう。

米国の全人口に対する民間労働者の比率


(出所:セントルイス連銀)

ドル/円と日経平均のテクニカル

9月2日のレーバーデーにドル/円の日足相場は長きにわたった三角保合相場を上にブレイクした。三角保合ブレイクは「ダマシ」も頻繁に起こるが、7月以降の長い上値抵抗線を抜けてきたことで、投機筋はとりあえずレンジブレイクの買いに出ている。

ドル/円相場は14日ADXがまだ横這いだが、26日標準偏差ボラティリティが底這いから上昇してきており、相場は21日ボリンジャーバンド+1シグマを上抜いている。このような形状が出現した場合、順張り派はストップを置いてドル買いをする局面だ。

100円にはオプションの防戦、100円超には実需のドル売りが控えており、6日の米雇用統計や8日の五輪招致の結果によっては、三角保合のブレイクも「ダマシ」となるかも知れない。しかし、ストップ・ロス注文を置いていれば、失敗も計算のうちである。

ドル/円(日足) 大きなドル買いトレンドに発展するか?

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1シグマ


(出所:石原順)

ドル/円(日足)と上昇チャネル(黄色のゾーン)


(出所:石原順)

日経平均も下げウェッジ(チャートの水色のゾーン)の上値抵抗線を上抜き、三角保合の上値抵抗線まで上昇してきた。明日以降の相場で三角保合の上値抵抗線をブレイクするのか否か神経質な展開だが、米雇用統計とオリンピックの結果を受けて目先の勝負がつくだろう。

日経平均(日足) 三角保合の攻防

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:三角保合と下げウェッジ(水色のゾーン)


(出所:石原順)

短期は「リスク・オン」の勝負、中長期の取引は9月のイベントの結果を見極めるというのが、筆者の相場スタンスである。大きなトレンド相場に乗る本当の勝負は、おそらくもう少し後になるだろう。

ドル/円(週足) 21週移動平均線を上抜けてきたが、トレンドの示唆はまだない

上段:14週ADX(赤)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21週ボリンジャーバンド1シグマ


(出所:石原順)

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