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第102回 G7からG20へのパワーシフトと米国の通貨政策

2009年10月2日

グローバル・マクロ・ファンド(マクロ経済予測に基づいて相場の方向性に掛けるポジションをとるファンド)の間で最近話題となっているのが、G7からG20への移行による外為市場の構造変化である。詳細は10月21日のネット勉強会「ファンダメンタルズ分析と為替相場の実践」で取り上げるので、ここでは簡単に触れておきたい。

先進国はGDPの分母も大きく、どこも低成長である。低成長の先進国に投資しても儲からないので、新興国の成長から収益を得ようというのが、ここ数年のグローバルな資本家の戦略といわれているが、それを受けて国際経済の意思決定の場はG7からG20に移行した。2009年9月25日のG20(20カ国・地域首脳会議)声明で、今後はG20を世界経済に関する第一の協議の場とすることが正式に表明された。このパワーシフトによって外為市場にも大きな構造変化がもたらされるだろう。

9月25日のG20で確認されたことは、グローバル・インバランス(世界不均衡)の是正、すなわち国際貿易収支の再均衡である。これは世界経済の構造改革であり、今後の為替相場の大きなトレンドを決する決定であるので、これからのG20の動きには最大限の注意を払う必要があろう。通貨の歴史は政治の歴史でもあるからだ。

G20の動きと合わせたように、9月27日に世銀のゼーリック総裁が「世界の経済力はシフトしており、成長は複合的な要因によってもたらされるという事実を認識する必要がある」「米国が世界の独占的な基軸通貨としてドルの地位を当然視すれば、それは間違いだ。
今後は他の選択肢も増えてくるだろう」(ブルームバーグ)と述べたことで波紋を呼んでいる。ゼーリック総裁は、昨年から「今日の世界にふさわしい新たな多国間協調主義は、柔軟なネットワークが求められている」と述べており、G7の崩壊と世界の多極化を予想していた。また10月1日にはIMFエコノミストがアジア通貨上昇の必要性を示唆(ロイター)との報道もあったが、これらはすべて軸を一にしている。

G7からG20へのパワーシフトと米国の通貨政策


(出所:石原順)

マサチューセッツアベニューモデル
(出所:石原順、『通貨政策の経済学』ポール・クルーグマン著)

第57回「マサチューセッツアベニューモデルと通貨安」を参照してください。

G20の決定が示唆するのは、米ドルの穏やかな減価政策である。通貨の歴史をみてみると、米国は好景気の時はドル高政策を、不景気の時はドル安政策をとっており、現在はドル安政策を採用していると思われる。ドルの印刷機をフル回転させたバーナンキFRB議長がとっている政策は「積極財政・低金利・通貨安」のポリシーミックスであり、目的はデフレ回避である。大恐慌研究の専門家であるバーナンキFRB議長の恐慌回避策の結論は「ジャブジャブの流動性・金融システムの整備・通貨安」の3点セットのようだ。また、オバマ政権のサマーズ国家経済会議(NEC)委員長は「ドル安を誘導し、米国の輸出力を回復することで、米国経済の中心を消費から生産に戻したい」と述べている。「強いドルは米国の国益」という言葉は、急激なドル安を避けるための口先介入にすぎないだろう。

G7がG20に移行した背景には米国の構造改革とグローバル資本家の思惑が複雑にからみあっていると言われている。現在の米国は穏やかなドル安をとっているという思惑から、いくつかのグローバル・マクロ・ファンドはドル売りポジションを構築している。ドル/円は80円台に入り、値頃感からのドル買いも出ているようだが、投機筋は介入ポイントといわれる85円を試しにくる可能性がある。ドル/円(週足)の14週RSIをみると、まだ円高の余地があり、値頃感からの買い(逆張り)は危険と言えよう。

ドル/円(週足)と14週RSIの推移 まだ円高の余地がある


(出所:石原順、ブルームバーグ)

以上、米国の穏やかなドル安政策の話をしてきたが、これはドル相場の大局観の話であって、目先、ドルが必ず下がるということではない。総論ではグローバル・インバランス(世界不均衡)の是正という共通認識があるものの、各論はどこの国も不景気の通貨高は困るということになる(保護主義の台頭)。早速、自国通貨高を回避したいスイス・カナダ・豪州などが介入をちらつかせている。英国が保護主義的な通貨安を希望したことでポンドが売られ、10月1日の市場では、ユンケル・ユーログループ議長が「G7に向けてユーロ高について議論する」と発言したことで、ユーロ安となったように、事は単純には進まない。現在は投機筋のドル売りのポジションが溜まりすぎており、ショートカバーも出てくる。相場には落とし穴がたくさんあるのである。

ファンダメンタルズ的なアプローチによって相場で儲ける方法は、レバレッジを上げないで値幅をとるか、相場観と現実の相場の方向性が合致したときに一気果敢に攻めるかのいずれかにあるが、こうしたアプローチは相当な相場経験のある熟練者の世界だ。相場の醍醐味はトレンドをとることであるが、ファンダメンタルズで相場をやる場合の問題点は相場観が外れたときの対処である。もたもたしていると大きな損失が発生するので、資産管理上のストップ・ロスを必ず置いておきたい。熟練取引者以外は、レバレッジを上げないことが肝要であろう。経験上言えることは、相場が相場観どおり動いていないときはポジションのザイズを大きくしてはいけないということだ。筆者はファンダメンタルズのみでポジションをとることはない。テクニカル分析と併用して、相場が一方向に大きく動く確率の高い局面を狙うだけである。

相場は極限の心理ゲームであり、修羅場つづきだ。筆者は臆病者なので、この連載でずっと紹介している1時間足による「1σブレイクアウトシステム」が一番ぴったりくる。あらかじめ計算された臆病さをもって相場にアプローチするこの売買手法は、ストレスが少ないので、FX初心者にも向いているだろう。

ユーロ/円(左)と豪ドル/円(右)の1時間足

10月1日の相場 21時間ボリンジャーバンド1σのブレイク局面


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ランド/円(左)とユーロ/ドル(右)の1時間足

10月1日の相場 21時間ボリンジャーバンド1σのブレイク局面


(出所:石原順、ブルームバーグ)

今年のヘッジファンド業界では、コモディティ相場や短期金利先物相場でのオプションの売りやスプレッド取引が流行っている。大きく見ると、100年に1回の大変動相場があった昨年からずっと変動率が下がっているからだ。下の表はオプションの売り(ボラティリティの売り)を得意とする某ファンドの成績であるが、今年はすでに年率64%のリターンを達成している。これが意味するところは、今年の相場はボラティリティ(変動率)が長期に上がらないということである。

某オプション専門ファンドのパフォーマンス


(出所:石原順、ブルームバーグ)

このオプション・ファンドのように、相場が動かなくても儲ける方法はあるが、オプションの売り手が儲かっているうちは、大相場がやってこない。トレンドフォロワーの苦難は続いているが、11月までに勝負に出るとの噂もちらほら聞こえる。果たして10月の相場は大きく動いてくれるだろうか?

ゴールド先物(日足)

14日ADX(赤)と26日標準偏差ボラティリティ(青)の推移
標準偏差ボラティリティが天井をつけるとオプションの売りが出てくる→相場降着


(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(左)とドル/円(右)の日足

14日ADX(赤)と26日標準偏差ボラティリティ(青)の推移


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(左)とポンド/円(右)の日足

14日ADX(赤)と26日標準偏差ボラティリティ(青)の推移


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円相場が正念場となっている現在、本日の米雇用統計の数字によっては、相場が急変動する可能性がある。非農業部門雇用者数は前回8月の前月比21.6万人減を上回る同17.5万人減が見込まれているが、直前になって弱気の見通しも増えている。週末にはG7も控えている。雇用統計後の相場は毎回荒れるが、発表の数字によって急激な円高、あるいは買い戻しによる円安いずれのパターンも考えられるので注意したい。

巷の噂ではまもなく「マーケットスピード」のFXの分足チャートが改善され(1時間足などの追加)、ATRが搭載されるらしい。キャピタルゲイン狙いはボリンジャーバンドとADX、キャリートレードにはATRが有利なリスク/リターンの機会を示唆してくれるだろう。

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年9月24日まで)

ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。

豪ドル/円(左)とユーロ/円(右)の20日ATR


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ポンド/円(左)とドル/円(右)の20日ATR


(出所:石原順、ブルームバーグ)

本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。


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