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第79回 100年ぶりのストレステストをめぐる思惑相場

2009年4月24日

米国の金融機関が好決算を発表している。海外のメディアの報道では、「昨年12月分の決算を隠す決算操作が行われた」「グループ企業や子会社に債券を高く売り、それを安値で買い戻した」「資産を再評価して実勢より高い評価にした」「貸し倒れ引当準備金を使って益出しした」などの厳しい批判も出ている。合法的な決算操作の結果とはいえ、あまりにも不自然な数字は市場を疑心暗鬼にさせるという逆効果をもたらしている。会計基準を変更してしまえば数字はいくらでも作れるが、市況が回復しない限りいずれ再評価による損失を計上しなければならなくなる。すでに 第76回 「現金比率の高いファンド勢がリバウンド相場に参入」でこの決算操作については述べたが、決算発表前に株高となり相場的には織り込み済みである。

現在の市場のテーマは「ストレステスト」の結果に移っている。ストレステスト(銀行の健全性審査)とは、景気後退がさらに進んだ場合に銀行が債務超過にならないかを試算するものである。何のためにやるかと言うと、危ない銀行を予定調和的に国有化し、当局の管理下に置くためである。前回のストレステストは 1907年にJPモルガンの主導で行われ、FRBが誕生するきっかけとなっている。今回の100年ぶりのストレステストは米国の金融地図を塗り替えることになるのだろうか?

4月21日にガイトナー財務長官は「米金融機関の〝大部分は〟必要以上の資金を保有している」との見解を述べたが、逆に言えば、〝いくつかの〟金融機関は資産を十分に保有していないということになる。
ウォールストリート・ジャーナルの記事では「審査で用いられた一部の損失見通しは予想よりも厳しい」「FRBの内部資料によると、失業率が2010年末時点で10.3%に達するとの過酷なシナリオでは、各金融機関は2年間の損失として、第一抵当モーゲージ・ポートフォリオについて最大8.5%、ホーム・エクイティ関連で11%、商業・産業ローンが8%、商業用不動産ローンが12%、クレジットカード・ポートフォリオについては20%の損失を想定する必要がある」と報じられている。

米政府によるストレステストの今後の予定

米政府によるストレステストの今後の予定
(出所:石原順)

ストレステストの結果によって、健全性審査に問題がない金融機関の公的資金の返済が可能となる一方で、問題のある銀行は6ヶ月以内に民間資本を調達する必要に迫られることになる。また、問題銀行の国有化のプロセスをはじめとして不透明感が強く、市場の疑心暗鬼は収まっていない。仮にストレステストの結果が良くても当局への信任が低下するだけで、甘い査定による粉飾の臭いを消し去ることは難しいだろう。その意味で今回のストレステストの「落としどころ」については、当局も市場も神経質にならざるを得ないのである。

国際通貨基金(IMF)が4月21日に金融安定化の遅れを理由に景気認識を下方修正したが、「日欧米の金融機関が抱える不良資産の損失額見通しは 2007-2010 年の合計で4.1 兆ドルにのぼる見通し」との見解を示し、米金融機関の損失についても1 月の2.2 兆ドルから2.7 兆ドルへと下方修正している。常識的に考えて、100年に1度の不況でビジネスモデルが崩壊している金融機関の問題がそう簡単に解決するはずがない。

5月4日のストレステストの発表(予定)までは、ストレステストをめぐる思惑から市場の一喜一憂が続き、米国株の上値も限定されるだろう。そうなると、外為市場では株安=クロス円安というバイアスがかかり続ける。

相場サイクルのセオリーからは、現在調整相場となっており短期的なリスクは円高方向にある。先週のレポートで「短期的な相場はわからない」と述べたが、この調整相場(修正波)の局面は、相場のフォーメーションが想定しにくいという相場難易度が高い局面である。時間をかけてレンジ相場で調整するのか、突発的な円高になるのかわからないが、現在は俗に言う「買ってはやられ、売ってはやられという往復ビンタ相場」になりやすい「修正波=ランダムウォーク相場」となっているので注意したい。

ドル/円(10分足)4月20日~4月24日

ドル/円(10分足)4月20日~4月24日
(出所:石原順、ブルームバーグ)

<修正波の基本的なパターン>

修正波の基本的なパターン
修正波の基本的なパターン
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とりあえず目先の天井はつけた可能性が・・

修正波の基本的なパターン
(出所:石原順、ブルームバーグ)

米国の金融機関の決算やストレステストに対して悲観的な報道が多いが、株式市場に関しては実のところ筆者はあまり悲観的にみていない。なぜなら、現在投資家(市場参加者)の現金比率が歴史的に高いからだ。もう、売るものは大半、昨年の下げ相場で処分してしまっているのである。

しかし、現在の調整相場が完了する(株安・円安の周期的なボトムをつける)には、すくなくともGW前後までかかるだろう。筆者の現時点の観測では、ファンド勢は米国株がもう一段下がれば、待機資金を株式市場に投入するのではないかと思っている。

4月24日の日経新聞に「FX投機的取引に規制・証拠金倍率20~30倍を上限に」という「レバレッジ規制」の記事が出ている。米国の投資銀行(証券会社)でも20倍、銀行では10倍以上のレバレッジをかけたポジションは基本的に認められていない。レバレッジをかけることは、借金をして投資を行うのと同じである。マネーゲームは相場を当てることから始まるが、レバレッジを高くしていると相場を当てるための軍資金がなくなってしまう。相場を続けるためには資金を確保する必要があり、それを可能にしてくれるのはストップ・ロス注文だけである。

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年4月23日まで)

ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。

(ATRやボリンジャーバンドの売買手法については、過去のレポートをご覧ください)

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

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