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第6回 米国景気の行方は長短スプレッド次第

2008年2月1日

相変わらずサブプライムローン関連の損失やモノライン問題に一喜一憂する相場展開が続いている。現在の米国の景気後退局面は20年周期の不況であるとの指摘や、日本の「失われた10年」になぞらえて「終わりの始まり」であるかのような指摘も多い。筆者も米国株の20年サイクルや長期景気循環からその可能性を否定はしないが、長期の予測をピンポイントで当てることはまず不可能といってよいだろう。したがって、長期タームの予測が相場の実践において役立つことは少ないのである。

米国の景気後退局面が比較的短期間に解決するか長期化するかは、今後米国の銀行が安定的に収益を上げられるか否かにかかっている。

短期で資金調達し長期で運用するという銀行のビジネスモデルから考えると、今後の米銀の体力増強は長短スプレッド(長期金利と短期金利の差)の推移がカギとなってくる。過去の景気後退局面では、米国10年国債と2年国債の金利差は概ね2.5%(250ベーシス)まで拡大した。2008年1月31日現在の米国10年国債と2年国債の金利差は1.47%(147ベーシス)である。

米国10年国債と2年国債のスプレッドとFFレート


(出所:石原順、ブルームバーグ)

筆者は、今後この長短スプレッドが拡大するか否かを注視している。長短スプレッドが拡大するには基本的に政策金利の低下が必要だが、FFレートはこの1ヵ月で1.25%も低下した。今後もヘリコプター・ベンと呼ばれるバーナンキFRB議長によってFFレートはPCEコアデフレーターの水準(現在2.2%)までは断続的に引き下げられることになるのではないだろうか。PCEコアデフレーターの水準以下は実質マイナス金利の領域となるのでいったん利下げも様子見となる。したがって、FFレートの2.25%あたりが当面の金利低下の抵抗となるだろう。

FRBが現在行なっている短期間の大幅利下げは<金利低下の初期段階ではモルヒネ的効果を発揮する>ので、総悲観に暮れる市場の意に反して株価は下方硬直傾向となるだろう。<米国金利低下前半期>の株式とドルは意外な堅調さを維持する傾向があることを指摘しておきたい。

PCEコアデフレーターとFFレート
【PCEコアデフレーター:PCE:Personal consumption expenditures(個人消費支出)のコア(食料品とエネルギーを除いた個人消費支出)の物価指数。バーナンキFRB議長が最も注視するインフレ関連指標である。】


(出所:石原順、ブルームバーグ)

以下のチャートは第2回のレポートに掲載したドルインデックス・アナログモデルの1月31日現在の推移である。昨年10月からのパターンは出来すぎに近い相似形となっているのでそろそろはずれそうな気もするが、シカゴ市場ではCTAのあいだで注目されているようだ。

ドルインデックス(週足)のアナログモデル
(1990年3月から1992年3月までのチャートと2007年3月から2008年1月31日までのチャートを重ね合わせたもの)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

1月31日にスタンダード・アンド・プアーズはサブプライム住宅ローン関連の損失額が世界全体で2650億ドル(約28兆2500億円)を上回る恐れがあると発表したが、サブプライムローン関連の損失は世界規模で分散されているのである。米国の損失ばかりに焦点があたっているが、程度の差こそあれユーロ圏や日本も事情は同じである。

2008年は悪さ比べの年となりそうだが、金融機関の健全性は会計原則からみて米国が抜きん出ている。ユーロ圏も拡大ユーロの恩恵は薄れてきているし、米・中景気と輸出頼みの日本は景気後退が確実と思われる。90年代半ば以降の「不景気の円高」は財政出動による側面が大きかったが、もう日本の財政は破綻に近い。大幅利下げの負の効果である金利差縮小からドルは買いにくいものの、そろそろ周期的な修正高があってもおかしくはないだろう。

輸出企業採算円レート(1999年~2007年)とドル/円レートの推移(1999年~2008年) 2007年の輸出企業採算円レートは106円60銭


(出所:石原順、ブルームバーグ)

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