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2016年6月2日

第453回 世界的なデフレ不況のなか米国の利上げがあればリスクオフが再燃か?

ジャンク債の大量償還にからむ原油高でリスクオン相場になったが・・

米国は4月にシェールオイル関連ジャンク債の大量償還が到来するという事情を抱えていた。2016年には190億ドルを超える社債が償還を迎えるが、その償還は2016年4月に集中していた。社債のなかでもジャンク債と呼ばれるシェール関連の企業が発行した高利回り債は、借り換えができずデフォルトに陥る危険性があった。

投機筋の間では、2016年4月の社債の償還に絡んで、NY原油先物市場が操作されたのではないかと噂されている。真偽は定かでないが、いずれにせよ原油価格の上昇で今年の1~2月に出た大量のオイルマネー系ソブリンファンドの株式売却が止まったのは間違いないだろう。また、原油価格の上昇で資源・エネルギー株が売り方の買戻しで上昇し、米国株高を支える格好となっている。

原油先物(日足) ADXもピークアウト?
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

原油はシーズナリー・サイクル(季節循環)が上昇を示唆していたのでここまでうまく上昇してきたが、昨年も6月から急落したように、6月以降の動きには注意が必要だ。また、プーチンが「原油は50ドル以上にならない」と発言しているように、そろそろピークアウトしてもおかしくない。

原油先物(週足) 昨年同様、6月以降の動きには注意が必要?
上段:21週ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26週標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14週修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

本日6月2日には石油輸出国機構(OPEC)総会があるが、「協調減産の動きはありそうもないということで会合の結果はほぼ決まっている」とWSJが報道している。市場の関心は減産よりもサウジアラビアの新体制に向いているという。「OPEC最大の産油国であるサウジでは5月の省庁再編に伴い、石油鉱物資源省がエネルギー産業鉱物資源省に改編され、ファリハ氏が新たなトップに就任した。経済改革を進めなければならない重圧に加え、対イラン関係が悪化していることもあり、ファリハ氏にとって、OPEC協調体制の限界がすでに露呈したいま、柔軟な対応の余地は前任者らよりもはるかに狭い」「複数のOPEC諸国によると、通常は会合に向けて加盟国への働き掛けを行うサウジだが、今回動きは鈍く、総会を前にOPEC内ではOPEC強化を目指すはずのサウジの姿勢について懸念が高まっている」(WSJ「OPEC総会、サウジの姿勢に議論集中か-新エネルギー相就任で」5月31日)と報道されており、ここまでの株高を支えていた原油市場の動きをファンド勢は注視している。

株式指数の転換点売買が好調、6月相場は荒れる展開か?

筆者は明確なトレンド(方向性)のないここ数カ月の相場で、相場の転換点をねらった短期取引を続けてきた。このところ、株価指数インデックスの転換点売買がいいリズムになっている。トレーリングストップ注文を置いて利を伸ばし、間違ったら直ちに撤退するのが基本で、淡々と売買を行っている。短期の売買(利が伸びると結果的に長く持つことになるが)なので、「損が出たが、もう少し様子を見よう」といったポジションに忠誠を尽くすようなことは一切していない。

転換点売買の要点は、日足相場では<3日修正平均ADX>が70以上や30以下になった時が相場転換の領域となりやすいということである。

相場の転換ポイントは矢印のポイントである。<3日修正平均ADX>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法で、ストップロス注文(トレール注文=トレーリングストップ注文)を置いて参入し、失敗すれば直ちに撤退、トレール注文で利益の極大化を狙う売買手法である。

原油相場の上昇に陰りがみられるなか、NYダウ先物は5月31日に売り転換、日経平均先物は6月1日に売り転換している。

NYダウ先物(日足)
上段:18日エンベロープ±1%(青)・±3%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

日経平均先物(日足)
上段:25日エンベロープ±5%(青)・±10%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

安倍会見で秋まで財政出動や追加緩和はないという思惑が浮上

6月1日の市場では投機筋から円の買い仕掛けが入り、また安倍首相が大型補正予算などの経済対策の早期実施を示さなかったことへの肩すかし(失望)を背景に、日本株安・円高が進行した。

ドイツや英国にまで財政出動を進めてきた安倍首相の姿勢をみて、日本が早期に財政出動や追加の金融緩和に動くという思惑が出ていたが、安倍首相は秋の臨時国会で大型の補正予算を組むことを考えているようで、日銀の追加金融緩和もそれとセットになるという見方に変わってしまった。一部のファンドは、「秋まで対策が出ないのならば、円安も株高も進まない」として、円買い・日本株売りに動いているという。

参議院選挙に向けて政府も日銀も動くというのが市場の見方だったが、あるアジア系ファンドの運用者は、「安倍政権の悲願は憲法改正であり、来年にもそれを実現するには秋に1億総活躍プランをテーマとした大型景気対策をもってくるほうが得策だ。サミット後に安倍政権の支持率が上がり、野党がだらしないなか、安倍首相は経済対策を打たなくても参議院選挙に勝てると思っているのではないか?保険は日銀の6月追加緩和で、仮に日本株が大きく下げれば、日銀が追加緩和に動く可能性はある」との感想を述べている。

6月に日銀が動いた場合、

  • 現行の国債買い入れ額年80兆円を90兆円~100兆円に増額
  • 現行のETF買い入れ年3兆3000億から5兆円~7兆円に増額
  • 当座預金に対するマイナス金利の幅を年0.1%から0.2%に拡大
  • 貸出支援基金から民間銀行への貸し出しにマイナス金利を適用

といった政策が噂されている。

ドル/円が111円台に上昇したのは投機筋の円買いポジションの巻き戻しが主因

ドル/円相場は相場の方向性を示唆していない。111円台を付けたものの、それはシカゴのIMMの円買いポジションの巻き戻しが上昇の要因である。5月24日現在の投機筋のポジションはピークから激減しており、巻き戻しによる円安圧力はあまり期待できない状況になっている。ドル/円が上昇するか否かは、FOMCと日銀金融政策決定会合の結果次第であろう。

シカゴ IMM 投機筋の円のポジション(5月24日時点のデータ)
円買いポジションが急激に減少、ポジション整理が進んできた

(出所:石原順)

下の図の筆者のトレンドの定義から言えば、現在のドル/円相場は日足も週足もトレンド(方向性)を持っていない。典型的なランダム(無秩序)相場であろう。

順張り手法とトレンド相場の見分け方

(出所:石原順)

ドル/円(日足) 調整相場 方向感が出ていない・・
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ドル/円(週足) 調整相場 方向感が出ていない・・
上段:21週ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26週標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14週修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

通貨ファンドの幹部が2週間くらい前に、「現在の通貨の相場は、順張りでも逆張りでも儲かる気がしない」と話していたが、通貨の転換点売買もあまり利益が伸びるような展開になっていない。6月15日のFOMCを通過するまで、ランダムな相場展開が続くのではないだろうか?

ドル/円(日足)
上段:13日エンベロープ±1(青)・±2%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ユーロ/ドル(日足)
上段:13日エンベロープ±1(青)・±2%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

世界的なデフレ不況のなか米国の利上げがあればリスクオフが再燃か?

グローバリゼーションの進展で世界はデフレに向かっている。グローバリゼーションがもたらしたデフレ不況と格差社会は、米大統領選でのトランプの台頭や不景気の特徴である政治の右傾化を促している。一方、EU離脱問題に揺れる英国では、労働党党首のジェレミー・バーナード・コービンの人気が非常に高く、ロンドンにムスリムの市長が誕生している。英国は左傾化しており、6月23日の英国のEU離脱を巡る国民投票は予断を許さない状況となっている。欧州では移民問題がますます深刻化している。

歴史を振り返ると、世界規模のデフレを解消したのは、悲しいかな<戦争>という財政出動である。伊勢志摩サミットを見ていて感じたのは各国の温度差であり、世界的な中央銀行バブルの限界が囁かれるなか、右傾化、左傾化に関係なく、どの国も<内向き>になっている。既に、グローバリゼーションの巻き戻しが始まっているのだ。こうしたなかで、米国だけが利上げするという政策がうまくいくはとうてい思えないが、米国の利上げがあればリスク回避局面が再燃しそうだ。

このレポートで取り上げた売買手法の詳細はDVD『相場で道をひらく7つの戦略-短期売買実践編』(石原順)で取り上げております。興味のある方はご参照ください。

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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

本資料は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。お客様ご自身で投資の最終決定をおこなってください。本資料の内容は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手・編集したものですが、その情報源の確実性まで保証するものではありません。なお、本資料の内容は、予告なしに変更することがあります。

石原順

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海外のヘッジファンドを運用する現役のファンドマネジャーが、相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークを利用した「生」の情報を提供いたします。

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