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2014年11月20日

第374回 バンザイノミクスと悪い円安、本格円安の時期はいつか?

アベノミクスはバンザイノミクス?

毎日のように円安が進んでいる。ドル/円相場は118円を突破してきた。「円の紙クズ化」が進んでいるという運用者もいるが、日銀が大量に国債を買っているので国債売りも起きていないし、日本株も上がっている。したがって、現在の円安はまだ<良い円安の範疇>での動きだろう。

ドル/円(日足) 良い円安か、悪い円安か?円売りが止まらなくなっている・・

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

日本10年国債金利(日足) 財政規律は失われたが、日銀の買いで金利は上がらない?

消費増税延期は金利上昇リスクを孕んでいるが、先走って日本国債売りに動いたファンドは日銀の返り討ちにあっている。財政規律を失ったアベノミクスによる不幸な結末を予測するファンドは少なくないが、日銀が新発国債の100%を買う環境では日本国債は売られないので、代わりに円売りを行っているファンドは多い。

(出所:石原順)

ゼロヘッジに「Goldman On BOJ's Banzainomics」という記事が出て以来、“バンザイノミクス" という言葉が運用者の間で流行っている。日銀の<バズーカ2>をサイパン玉砕の悲劇に例えるヘッジファンド運用者は多い。かれらは日本株のPKOに便乗しながらも、「最後はバンザイになる」と賞味期限を考えながら売買を行っている。

ちなみに、米国の運用者で日本株に強気なのはヘッジファンドと個人で、年金などの機関投資家は日本株のファンドを売却するなど、日本株について慎重な姿勢を崩していない。「日本のやっていることは先進国らしからぬ経済政策で、これから先に起こる副作用がわかっていないのではないか?」というのがその理由らしい。

機関投資家は顧客に対して言い訳のできるロジックでしか行動しない。ブローカーによると、「アベノミクスは持続可能なポリシー・ミックスになっていない。悪い円安論の台頭や消費増税とその後の景気の落ち込みを見れば明らかだろう。日本株のPERはS&P500より高いし、株価の上昇要因は日銀のPKOと年金買いとお手盛りの自社株買いだ。日本は円安でも製造業の国際競争力が伸びていないので我々は慎重だ」と話しているという。

日経平均(日足) 円安進行にもかかわらず、日本株はあまり上がっていない。日本株はヘッジファンドの先物売買が主役。

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

はしごをはずされた日銀、それでもアベクロの同床異夢は続く?

黒田総裁はこれまで、「可能性は低いが、消費増税を先送ると政府の財政健全化について市場から疑念を持たれる可能性がある。そうなった場合、日銀としてできることは何もない」という趣旨の発言をしていた。また、11月13日には国会で「追加緩和は消費増税が前提」と強調した。しかし、安倍首相は消費増税を延期してしまい、消費増税狙いで行ったバズーカ2(QQE2)はムダ玉を打ち、安倍政権の選挙協力をした格好になっている。

「財務省は腸が煮えくり返っているのではないか?」という観測の中、日銀の黒田総裁は19日の記者会見で、「財政規律が低下し政府・日銀が対応できない状況になったとしても、政府、国会の責任であり、中央銀行が責任を取るという問題ではない」と述べた。財政規律は政府次第と責任を回避しているが、不協和音は自らの首を絞める結果になるので、増税先送りの批判はしなかった。

市場からは「大人の対応」などと呼ばれているらしいが、「物価目標2%を2年で」ということで政策を行ってきた日銀も出口がみえない状況となっており、<消費増税の1年半の延期>は、それを大義名分に緩和を継続できる日銀としても助かっている面もあるわけだ。

黒田日銀と安倍政権の蜜月(実際は同床異夢)が終わるような報道も多いようだが、黒田総裁は「政府に持続可能な財政構造への取り組みを期待する」と述べて、投機筋に付け込まれない対応を取っている。

投機筋が考える悪い円安の始動時期は?

「ドル/円が115円を超えてくると<悪い円安>が始まる」というのが投機筋の認識だが、まだ<悪い円安>は顕在化していない。それは、経済の長期停滞観測によって、原油価格や穀物価格の急落が続いているからである。

原油価格の下落についてはサウジアラビアによるシェールオイル潰しや、サウジアラビアが米国と組んでイランやロシアを追い込むための原油価格の引き下げ戦略が指摘されている。しかし、原油価格は最高値147ドルから直近では73ドルまで下落しており、最高値からみて半値水準まで下落している。そろそろリバウンドがあってもおかしくないが、現在の原油安・穀物安の基調が変わると、日本にとっては<コストプッシュ・インフレ>という地獄が待っている。

原油先物(日足) 最高値147ドルから半値水準まで下落

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

そういう事態となれば、政治家から円安のスピードに関する牽制が出てくるだろう。また、125円を超えて円安が進むようだと、円買い介入の可能性も否定できない。しかし、日本政府や日銀が円安をけん制するような事態となれば、アベノミクスは頓挫してしまう。これ以上、追加緩和が出来ないからだ。アベノミクスが頓挫して日本売りとなれば、「悪い円安とインフレのスパイラル」が起こる可能性がある。これらは次第に現実感を帯びてきた。

総選挙が12月14日に行われるという。バブルが崩壊して20年以上もの間、日本政府は何をしてきたのだろうか?増税するのはよいが、その前にすることがある。議員定数の削減、議員報酬の削減、政党助成金の廃止、公務員の削減、公務員宿舎や福利厚生施設の廃止、などなど、どれか一つでもまともに取り組んできたものがあるのだろうか?

少なくとも政治家は先ずは自分の身を徹底的に削ることから始めないと、誰も説得することはできないだろう。役人や利権を持っている業者なども、政治家が本当に自分の身を削って、その本気度を示さない限り、政治家などは使い捨てにすればいいと考えている。

国や政府には期待できそうにもないので、資産防衛は自分でするしかない。それは外貨やインフレをヘッジできる商品に資産を分散することだ。国際投機筋などが大胆な円売りを仕掛けるタイミングを待っているという。おそらく来年以降の話になるだろうが、そのタイミングは日本の円買い介入の失敗が契機となるという・・。

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

本資料は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。お客様ご自身で投資の最終決定をおこなってください。本資料の内容は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手・編集したものですが、その情報源の確実性まで保証するものではありません。なお、本資料の内容は、予告なしに変更することがあります。

石原順

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海外のヘッジファンドを運用する現役のファンドマネジャーが、相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークを利用した「生」の情報を提供いたします。

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