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楽天証券ニュース[マーケット情報] | 発行:2012年6月18日 楽天証券株式会社 |
株式 | 週末終値 (6/15終値) |
前週末比 (6/8比) |
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日経平均 | 8,569.32 | +110.06 | +1.30% |
NYダウ | 12,767.17 | +212.97 | +1.70% |
金利・為替 | 週末終値 (6/15終値) |
前週末比 (6/8比) |
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長期金利 | 0.850% | +0.005% | |
ドル/円 | 78.73 | ||
ユーロ/円 | 99.49 |
この一週間の各市場の動きは上記の表のとおりです。案の定、日経平均株価は週末に向かって膠着感を強め、売買代金も週を通じて膨らむことなく、市場が週末に行われるギリシャの再選挙結果に対して警戒感を強めていることを如実に証明する一週間となりました。週初はスペインに対する欧州連合(EU)ユーロ圏諸国による最大1,000億ユーロの金融支援の話題などで安心感を取り戻し、一時前週末比+200円以上上昇する場面も見られたものの、その晩の欧米市場の反応が芳しくなかったことを受けて肩透かしとなり、翌日には再び急落して8,450円台を付けるという動きとなりました。しかし、動きがあったのはそこまでで、週の後半3日間はほとんど終値が前日比と変わらない状況で膠着する状況でした。売買代金の方も8,000億円から9,000億円台にややのせる程度で、活況という表現からはおおよそほど遠い展開となりました。
週末のバリュエーションは、日経平均採用銘柄の平均で予想PERが11.08倍、PBRが0.91倍、予想配当利回りが2.31%とどれをとっても割安感を示す水準となっています。やはりこの数値を見てしまうと、ギリシャ総選挙後の動揺については神経質にならざるを得ないと思われるものの、さすがにこの水準から下値を積極的に売り叩ける投資家も少なかったようです。
日本市場が停滞する中で、じつはNYダウを始めとした米国市場の株価が案外と底堅く切り返していくことが確認されました。NYダウの週末終値は前週末対比で1.70%高い水準となって12,700ドル台を取り戻しています。ただ最も安全資産とみなされている米国債券は買われ、10年国債の終値は1.5773%と前週末対比で0.058%も低下(1.6353%⇒1.5773%)しています。
(出典:Bloomberg.)
<NYダウのこの一年間の推移です。----------6月初めの急落後は目覚ましく切り返しています。>
前回、ECB理事会が利下げをしたりFRB議長の議会証言でQE3に言及したりすることはなく、中央銀行はギリシャ選挙後に起こり得る動揺に対してカードを温存したという話をさせていただきましたが、先週開かれた日銀の金融政策決定会合においてもやはり同様にカードは温存されました。ただ日銀の白川方明総裁は15日の記者会見で、ギリシャの再選挙などにより「万が一にも我が国の金融システムの安定が脅かされることがないよう万全を期していく」と警戒感を示し、金融市場の混乱を封じ込めるために日米欧の各中央銀行が協調し、潤沢な資金を供給する用意のあることも示唆しています。つまり日銀もECBやFRBと同様、黄門様の印籠のチラ見せを行ったということです。その一方で、これまで「横ばい圏内」としてきた景気判断を上方修正しています。欧州債務危機による海外景気の下振れを、国内の堅調な需要が穴埋めするというものですが、正直、ややこの上方修正については違和感を感じています。口が悪い向きは、日銀も消費税引上げのための地ならしに貢献しようとしたと揶揄されている状況です。
民主、自民、公明3党が社会保障と税の一体改革関連法案をめぐる修正で合意したと報道されました。自公両党は同法案に賛成する方向で、現行5%の消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる法案は成立に向けて大きく前進する運びとなりましたが、そもそも前述のとおり国内需要が堅調だとする日銀の景気判断の上方修正については違和感があり、2014年4月からとは言え、消費増税が行われることには疑問が残ります。その最たる理由は、結局は歳出カットに関する部分については議論が先送りのままであり、歳入面だけの話で玉虫色の結論となっているからです。歳入面の手当ての議論は、歳出面の改善の話とセットで初めて財政政策として成り立つのであって、また仮に社会保障改革の面だけとったとしても、民主党マニフェスト(政権公約)の主要政策である「最低保障年金の創設」「後期高齢者医療制度の廃止」の扱いについては、両政策の「撤回」方針を明示せず、新設する「社会保障制度改革国民会議」に検討を事実上棚上げしながら3党合意というのは違和感があります。野党各党がこれで合意したというのも不思議な話なのですが、ギリシャ問題や欧州問題の陰で、じつは国内でもっと真剣に議論しないとならない問題が永田町方式でズルズルと決定していっていることに疑問を感じずにはいられません。来月の給与明細から、住民税の天引き額は目に見えて増加してくることも忘れずに。
本原稿を書いている17日(日曜日)午前中では、さすがにギリシャの再選挙の動静はわかりません。このメルマガがちょうど送信される頃には大勢が判明し、資本市場の最初のリアクションがアジアの各市場で確認されるのだと思いますが、新民主主義党(ND)が勝利するのか、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が勝利するのか、予断を許さない状況です。またどちらが勝利して第一党となるにしても、議会で過半数を取れるかどうかが焦点であり、仮に連立の枠組みを作らざるを得ないことになると、それはそれですぐに決まるものではないだろうと思われます。
そしてポイントとなるのは、ギリシャの新政権が欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)そして国際通貨基金(IMF)といういわゆる“トロイカ”が支援策の前提として課した緊縮財政プログラムを履行するかどうかということになります。
どちらかというと、私はこの件に関しては楽観できずにいます。たしかにギリシャという国の置かれた立場を大所高所から客観的に見るとしたら、おそらく選択肢としてはトロイカの課題を守る国を作るしかないのだろうと思います。ただそれは自分達がその選択結果の直接的な影響を受ける当事者ではなく、その2次影響以降を受ける立場にあるものだからそう簡単に考えられるのではないでしょうか。現実に高い失業率の中で今現在失職し、あるいは緊縮財政の中で苦しい生活を強いられている立場になった時、世論がどう反応するかは見物です。自分自身が家族を抱えたギリシャ人の失業者やリストラされそうな公務員だとしたら、そう簡単に「お国はこうあるべきだ」と緊縮財政を受け入れる側には立てないだろうと思うからでもあります。仮にそれを日本の現実に当てはめて考えたとしても、今の日本が本当にしないとならないことは、消費増税なのか、社会保障改革なのか、財政再建なのか、あるいはデフレ脱却などによる景気浮揚なのか、という選択を迫られていることと同義だと思うからです。
おそらくお茶の間のワイドショーでは、生活保護の不正受給の問題も含めて、極端な例を挙げての感情論が多く、真の意味での経済政策については世論に対してまともに語られているとは思われません。野党時代の民主党が「国民の信を問え」と与党に迫っていたにも関わらず、ここで郵政解散のように「消費税解散」をして国民に信を問うことを野田首相がされないのも、きっと選挙結果の札読みができないからです。
また民主党は公務員の人件費削減をマニフェストに掲げて先の選挙で政権を獲得しましたが、残念ながら公務員の人件費削減は棚上げになったままで、新卒採用が減らされました。ギリシャがトロイカの指導の元に行おうとしていることは、日本よりも比率の多い同国の公務員人口に対する人件費カットなどによる歳出削減などです。日銀が景気判断を上方修正するような景気状態の中でさえもできない公務員の人件費カットが、かなり厳しい景気実態の中にあるギリシャの公務員にはなぜできるでしょうか?そしてそれを実行することを表明している政党がどうやって勝利できるのでしょうか?日本の民主党が「公務員の人件費カット」をマニフェストに掲げても勝利できた理由は、日本の就労人口の中で公務員がマジョリティではないからです。消費税のように広く遍く税を徴収する税金は少なくとも任期中は増税しないと公約し、人口動態で考えても、あきらかに少ない現役世代の負担する所得増税で歳入減をまかなおうとしたからです。票田のマジョリティはそちらにあるのですから。
こうして我が国の実情に当てはめて考えた時、資本市場が期待している「ギリシャ国民は賢明な選択をするだろう」というストーリーは、かなり期待先行の甘い見通しのような気がしてなりません。仮に、今回の選挙結果で緊縮策を受け入れるようなことになったとしても、その継続性には疑問が残るように思われます。すなわちいずれにしてもギリシャはEU離脱をせざるを得なくなるであろうということです。とはいえ、まずは結果を見てから、この先々については判断をしないとなりません。
ご愛読いただいております本メルマガですが、次回6月25日配信分を持ちまして最終回とさせていただくこととなりました。2008年9月1日の初回配信から足掛け4年間、毎週お届けして参りましたが、諸般の事情により、次回お届け分が最後となります。あらためて次回でご挨拶させて頂きますが、まずはその予告ということで。ただギリシャ後の展開についてはコメントさせていただけるので安堵しています。
今週も頑張りましょう。
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楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。
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