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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年10月17日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

10月第3週

マーケット概況

株式 週末終値
(10/14終値)
前週末比
(10/7比)
日経平均 8,747.96 +140.03 +1.64%
NYダウ 11,644.49 +141.90 +1.32%
金利・為替 週末終値
(10/14終値)
前週末比
(10/7比)
長期金利 1.015% +0.030%
ドル/円 77.22  
ユーロ/円 107.20  

欧州債務危機の次に市場が目を向けるのは?

前週の総括

■欧州債務危機に一服感

 この一週間の各市場の動きは上記の表のとおりです。やや欧州債務危機に落ち着きと期待感が戻ってきたことで多くの投資家のリスク回避姿勢が緩和されたことが先週最大のポイントです。これにより、前回のFOMC(連邦公開市場委員会)で「短期債売りの長期債買い」というツイスト・オペが発表されて以降、買い進まれた米国債券市場が崩れる展開(金利上昇)となり、米国10年国債の利回りが先々週末の2.0764%から2.2477%にまで上昇しましたが、むしろこれは日米金利差の拡大から円安バイアスとなり、ドル円も77円台を回復する流れとなっています。月初には一時期1.7%台まで債券が買われる状況もありましたが、先週は2%台を割り込むことなく推移しています。すなわちこれが投資家がリスク回避姿勢を緩和して、少しづつリスクテイクを始めたという証左です。史上初の米国国債格下げという事態を経験しながらも、それでも世界市場の中で最もリスクが低いと考えられた米国国債に逃げ込んでいた投資資金が再び他の資産に動き出したということです。このところの債券市場、為替市場の動きがこれらを顕著に証明しており、またNYダウが2ヵ月半ぶりの高値をつけたということがその確からしさを後押ししています。


(出典:Bloomberg.)

<米国長期金利のこの1年間の動きです。-----------欧州債務危機に怯えて、投資家が米国債に逃げ込んだピークはいったんは通り過ぎたように見えます。>

■投資家のリスク許容度は回復!?

 投資家のリスク許容度の回復感を如実に表した為替市場の代表的なもののひとつがブラジル・レアルの動きです。7月には対ドルで史上最高値となる1.5288(7/26)をつけたことが、ブラジル金融当局の次のアクションを導出したことなどは以前にご紹介済みですが、その後、欧州債務危機を背景として投資家のリスク許容度が落ちると流れが一転、一気に反落して9月22日に1.9550の安値をみるとブラジル金融当局も急遽姿勢を転換して「レアル買い、ドル売り」の介入をせざるを得ないほどに投資家がリスク回避姿勢を強めました。

 ただ「為替介入」の効力は通常はどの通貨でも長続きはせず、大きく水準を変えるには及びませんが、チャートなどを見ても明らかなとおり、介入などせずとも週末には1.7329(対円では44.5402円)まで買い戻され、投資家が再びレアルへ資金を振り向けたことがわかります。こうした流れは豪ドルなどにも同じように見ることができました。


(出典:Bloomberg.)

<ドルとブラジル・レアルのこの一年間の動きです。-----------介入してもすぐに売り直されるかの動きが先月は見られましたが、介入とは別にレアルが再び買われていることがわかります。>

■G20で銀行の資本増強を支持

 欧州が一体となってギリシャを救えるかという大問題のキャスティングボードを、スロバキアという小国が握ることになり、いったんは緊張感が走った金融市場でしたが、同国議会が再決議の結果、あらためてギリシャ支援姿勢を示したあたりから潮目はやや変わった感じもあります。

 週末、日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)がパリで開いた財務相・中央銀行総裁会議では欧州債務危機が金融不安につながっている現状を再確認し、「銀行システムや金融市場の安定を保つための行動を取る」と共同声明に明記しました。欧州が打ち出した銀行の資本増強策を支持し金融安定に向け一段の行動を迅速にとるように求めて閉幕しました。

今週のポイント

■ギリシャからは何も聞こえてきていない

 問題の本質が欧州債務危機であることは誰の目にも明らかであり、その震源地がギリシャであることに疑いの余地はありません。前述のごとく、この問題への共通認識は欧州域内の各国のみならず、G20をはじめとする主要国の間で完全に共有されたことが現状の欧州債務危機に対する一服感の源ではありますが、残念ながら、現時点においてギリシャ自身から債務削減に向けて一歩前進する動きが出てきたという話は聞こえてきていません。もちろん、パパンドレウ首相以下同国の主要な閣僚などのコメントには前向きなものが縷々ありますが、肝心要の国内世論からは、苦しい思いをしてでも債務危機を乗り切ろうとする意欲は明らかになっていません。これはギリシャの文化的な側面もそうですが、徴税制度そのものにも起因するところが大きく、脱税可能な徴税システム自体の改革などがない限りは、国内世論のセンチメントと逆行する政策の実効性は高くないだろうと思われます。すなわち、延命はできても、時限爆弾のタイマー自体を止めることはできないということです。その意味では、仮にこの今の流れの中でいったんは潮目が変わったと思われても、市場はいつでもギリシャ問題が再燃する可能性だけは覚悟して走り続けなければならないだろうと思われます。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価のこの1年間の動きです。-----------底値の水準は確認したようですが、9,000円台より上はまだ見上げる感じです。>

■タイの洪水問題は織り込めていない

 タイで起こった大規模洪水の影響を市場が織り込めているとは思えません。こうした自然災害のダメージ評価の常ですが、ある一定以上の規模で起こってしまった場合は、大概は当初は相当に過小評価をしてしまいがちであり、徐々にその深刻さが全容を現すというのが一般的です。

 アユタヤの工業団地の映像が当初報道された時、最も私が注目して凝視したのがある日系企業の駐車場で並ぶ大量の車が屋根上まで完全に浸水している映像です。また陸橋の上に駆け上がりきれずに放置したままで浸水している車列でした。自動車の高さから推し量ると浸水規模は深さでも2m近くはあります。自動車工場など何度も見学した経験からすれば、水深2mまで浸水した場合、工場内の多くの工作機械が水没してしまうはずです。ラインそのものが浮き上がってしまってずれてしまう可能性だって否定できません。こうなると水が引いたらすぐに操業開始と言えるほど物事は単純ではありません。にもかかわらず、ホンダ(7267)などの株価は翌日も上昇さえしていました。

 タイには近年多くの日本企業が進出していることからも、大変重要な生産拠点となっていることは事実ですが、残念ながらこうした悪影響を、サプライチェーンへの影響を含め、現状では市場は織り込めているとは思えません。決算発表シーズンを控えて、今後慎重に動向を見極めていきたいと思います。

■TPP加盟は経済発展のためには必要と考える

 米国と韓国がFTA(自由貿易協定)批准で盛り上がっています。すでに米国議会の上下両院が法案を可決したので、順調にいけば来年1月にはこれが発効します。日本の政治が政局騒動で停滞している間に、隣国韓国はどんどん米国との関係を強固なものとし、また米国側も韓国との距離感を詰めつつあります。その証左が、米国側の野田首相に対する対応の仕方と韓国李明博(イミョンバク)大統領への外交姿勢の違いです。ホワイトハウスに国賓として招き、ワシントン郊外の韓国料理店でも共に祝杯をあげるなど蜜月ぶりをアピールしています。FTAにより5年以内には自動車などの工業製品や消費財の95%について関税が撤廃されます。これは取りも直さず、両国間の貿易取引がさらに増えるということを意味しています。ある試算では、韓国の国内総生産が5.7%、雇用が35万人増加するといい、米国側でも7万人の雇用創出を見込んでいると伝えます。パイ全体が大きくならないのであれば、その分をどこかが失うのです。

 ちなみに、半導体などのハイテク製品や自動車の分野で日本が圧倒的な優位性を誇っていたのは過去の話です。DRAMの世界第一位はサムスンであり、第2位はハイニックスです。どちらも韓国企業なのは言うまでもありません。Android端末でも第一位はサムスン、第二位は台湾HTCです。反対側にいるのはアップル(AAPL)であり、やはりこの分野でも日本の名前は出てこなくなっています。自動車も今や日本勢は米国でどんどんシェアを失っています。新ビッグ・スリーはゼネラル・モーターズ GM(米)、VW(独)、そしてヒュンダイ(韓国)だと言われています。トヨタ(7203)ホンダ(7267)の名前はありません。こうした現実を踏まえ、日本が内需振興だけでこの先も労働力の減少と高齢化社会を支えていけると考えるわけではないのであれば、もっと積極的にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の枠組み作成に深くコミットしていかないとならないのではないでしょうか?枠組みができあがってゲームのルールが決まってしまってからノソノソ出て行ったのでは、与えられたルールの中で動くしかありません。しかし、決してそれは我々にとって有利な条件ではないでしょう。

 増税議論や年金問題についてもすべて同じことが言えます。今の世代の中である程度痛い思いをしてでも明日の日本の絵を描くのか、痛い思いはすべて先送りにして後世・末代に禍根を残すのかということです。年金支給開始年齢を遅らせる一方で、現行給付水準を上げるという話がありました。どこかちぐはぐな気がしてなりません。次の総選挙の票のことではなく、明日の日本の将来像をきちんと描いたうえで、“今”すべきことを政治は考えて欲しいと思います。それができない時、日本の金融資産に魅力は何も残っていない可能性がとても高いと思われます。

 今週も頑張りましょう。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

≪NYダウが2ヵ月半ぶりの高値を記録≫

■NYダウの値動きへの連動を目指す

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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