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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年9月5日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

9月第1週

マーケット概況

株式 週末終値
(9/2終値)
前週末比
(8/26比)
日経平均 8,950.74 +152.96 +1.74%
NYダウ 11,240.26 -44.28 -0.39%
金利・為替 週末終値
(9/2終値)
前週末比
(8/26比)
長期金利 1.055% +0.020%
ドル/円 76.81  
ユーロ/円 109.11  

軋む世界経済、未知数だらけの日本の政治

前週の総括

■週末、一気に期待は剥げ落ちたのだが…

 この一週間の各市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価だけで見るならば前週末比+1.74%の上昇となり「まずまず」の結果となったように見えますが、日本市場終了後になる米国市場で株価は下落、NYダウは一週間分の上昇をほぼ全て一日で吐き出して終了となりました。日本の債券市場もまだその米国市場の動きを反映していない段階での終了なので長期金利は対前週末比で上昇した形で終わっていますが、米国では株価下落にあわせて長期国債が大きく買われ、10年債利回りは過去最低となる1.9857%と2%割れの水準まで急低下(債券は買われた)しています。すなわち、金利差の面でも週末現在のそれは円高にバイアスがかかりやすい方向へ動いています。

 一方、欧州でもギリシャのベニゼロス財務相が2日にアテネで開いた記者会見で、2011年の財政赤字を国内総生産(GDP)比で7.5%まで圧縮する目標を達成できない見通しだと発表、また今年の成長率の落ち込み幅は予想の△3.5%を上回り△5%まで拡大するとしました。この発表を受けてギリシャ向け債権を大量に保有するソシエテ・ジェネラルなど仏大手銀行の株価が軒並み約7%下げ、欧州の信用不安は再び一気に大陸全体に広がったという状況です。フランスのCAC40指数は△3.59%の下落、ドイツDAX指数も△3.36%の下落となっています。もちろんギリシャのアテネ総合指数も△3.98%の下落です。ただ同指数について言えば、週初29日の終値は1,006.59ptsであるにも関わらず週末の終値が891.93ptsと△11.4%の下落となっており、震源地の下落はより凄まじいことがうかがえます。

 欧米揃って共に状況は悪いのですが、問題の根源がどちらにあるのかを考える時、債券市場の動向を見比べるとおのずと答えが出てくるように思われます。すなわち、リーマンショックという大変な金融危機直後の水準以下にまで金利が低下するほどに米国国債は買われている一方で、当時の金利水準の4倍近いレベルになるまで国債が叩き売られて年率18.282%に跳ね上がっているのがギリシャです。米国国債格下げを受け「ドルは単なる紙切れになる」とまで極端な悲観が言われることがあるのも事実ですが、リスク回避的になっている世界の投資家の実際の投資判断とアクションは違うということは明らかです。この点の見極めを間違うと、今世界で起きていることの本質を見誤るとも考えています。


(出典:Bloomberg.)

<米国10年国債利回りのこの6年間の動きです。-----------2008年のリーマンショック後につけた水準よりも金利が低下しています。これは逆にいえば米国国債が買われているという証です。>


(出典:Bloomberg.)

<ギリシャ10年国債利回りのこの6年間の動きです。-----------米国国債の動きと比べて頂くと、その差は一目瞭然。利回り水準も18.282%にまで跳ね上がっています。>

■期待外れに終わった米国8月の雇用統計

 注目の米労働省が2日に発表した米国8月の雇用統計は非農業部門の雇用者数(季節調整済み)が前月比横ばいとなり10カ月続いた雇用増が途絶えて2010年9月(2万9,000人減)以来11カ月ぶりの低水準となりました。当然のことながら各社が集計したどの市場予測の平均値をも下回っています。失業率は9.1%で前月と変わらずでした。これを受けて週末の米国市場では株が売られ、債券が買われるという展開になったのですが、実は内容的には複雑な入り繰りがいくつかあり、修正されやすい雇用統計の性質を考えると、来月以降に修正されたり、またその反動が出たりすることは容易に想像できます。

 すでに各種報道にもありますが、今回の統計には米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)での大規模なストライキ(約48,000人)や、ミネソタ州政府職員22,000人のストライキなどが関係している可能性が高いということです。7月分も117,000人増が85,000人増へ、6月分も46,000人増が20,000人増へそれぞれ下方修正されていますから、今後変動する可能性は十分に高いと思われます。また労働省の雇用統計の先行指標とも言える企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)社がこれに先立つ31日に発表した8月の全米雇用報告によると、民間部門雇用者数は91,000人の増加であり、この辺にもその可能性を感じさせます。ただ、とはいっても市場の失望感を買ったことだけは確かであり、市場に蔓延する過度な悲観論を払拭する材料には全くなりませんでした。


(出典:Bloomberg.)

<NYダウのこの一年間の動きです。-----------週初、三角保ち合いから上放れたかと思われたNYダウですが、大きな陰線をつけて終わっています。>

■ブラジル中銀が予想外の利下げ

 ブラジル中央銀行は31日、政策金利を12.50%から12.0%に0.5%の利下げを発表しました。このところブラジルは先月まで5回連続で利上げしてきていましたので、かなり市場では意外感を持って受け入れられました。ブラジル中央銀行によれば世界経済およびブラジル経済の鈍化を背景に利下げしたとのことですが、ブラジル中銀が利下げするのは2009年7月以来のことです。

 またこの見通しの背景を裏付けるようにブラジル地理統計院(IBGE)が2日に第2・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比3.1%増となり、前期の4.2%増から伸びが鈍化すると発表しました。しかしマンテガ財務相はその後の記者会見で、第3・四半期のGDPは第2・四半期と同程度の伸びとなることが見込まれるものの、第4・四半期に加速するとの予想を示し、2011年を通じると4%を超えるとの見方を示しています。さらに、そのうえで2012年には5%の成長を遂げる条件が整っているとも述べました。インフレが抑制できなくなるのではないかとの憶測にも抑制に向けた追加措置は必要ないとの見解を示しています。

今週のポイント

■第95代内閣総理大臣に元財務相の野田氏が就任

 まさに「ようやく代わったな」というのが市場関係者の率直な意見だと思います。6月に退陣表明をしておきながら、何だかんだと理屈をつけてはおよそ3カ月間も首相官邸の主として留まり、震災復興を始めとして多くの国難が山積みの日本の状況を、事実上レームダック状態へ導いていた菅直人前首相が退陣し、そして「どじょう」と自称する野田氏が第95代内閣総理大臣に就任し、新内閣を発足させました。

 選挙は最後まで分からないとよく言われますが、世論調査で人気の高かった前原氏を土壇場で窮地に陥れたのは小沢元代表の支援を取り付けた海江田氏。これで決まりかと思われた月曜日の民主党代表選では、決選投票の末「大穴」の野田氏が新民主党代表に選ばれて首相になりました。正直「What happened ?」の連続でしたが、「上着を脱いだのが野田氏に投票するという合図だった」などという、結局は政策ではなく数合わせの様相をまざまざと見せつけられた気がしています。これでは野党時代の民主党が当時の自民党政権を批判していたのと攻守立場が変われば全く同じ、結局は党内人事のたらい回ししか永田町では起こらないという印象が海外の投資家にも強く刻まれたと思います。このわずか2年間で3人目の首相が登場するという永田町劇場に、ほぼ完ぺきに市場は興味を失った状況は当面続くと思われます。同じように苦しい立場に立たされていると言われる米国オバマ大統領ですが、少なくとも彼は最初から最後までホワイトハウスの主であり、これで3人目の日本の首相と対峙することになります。ただここまで来るともう何があってもネガティブ・サプライズは起こりにくく、むしろ意外感があることが行われれば、簡単にポジティブ・サプライズを演出できることになったというのが皮肉ながら好材料といえます。

■情報不足の新内閣人事

 まともな政策論争を聞かされることもなく新首相になった野田氏。元財務相というキャリアだけで今後の行方を判断するには、あまりにも市場関係者としては情報が足りません。そして、その後ただちに行われ発表された内閣人事を見ても、首相が「Who is Mr. NODA?」と評された以上に「Who are you?」という感じの顔ぶれが並んでいます。つまりはっきり言ってその政策、そしてその実行能力については未知数なことばかり。分かりやすいことと言えば、党運営を仕切る幹事長には小沢一郎元代表に近い輿石東参院議員会長を、国会対策委員長には鳩山由紀夫前首相の側近である平野博文元官房長官を起用したという、正に“挙党態勢”を維持しようと数合わせに躍起な人事だということだけです。私が政治不勉強のせいだからだと望みますが、官房長官の藤村修前幹事長代理についてはコメントするアイデアさえ浮かびません。

■経済政策、景気浮揚策はどうなるのかに注目したい

 格下げを先週されたばかりの日本ですから、この国が財政規律を取り戻すことは極めて大事なテーマであることはかねてからの主張の通りですが、それと同時に進めなくてはならないことは、もちろん震災復興という大テーマもさることながら、日本の景気対策、景気浮揚策です。景気が上向き、それにつれて税収が増える絵が描ければ自然と歳入と歳出のバランスが取れるようにもなります。お金があるところから搾り取ることだけを考えているような歳入増計画は、結局は消費の減退や産業空洞化をもたらすだけです。

 その意味においても、震災前には引き下げ方向で話が進んでいた高過ぎる法人税をさらに引き上げようとする話などは、東京電力(9501)の10%もの電力料金値上げ問題などと共に、ますます産業の空洞化を早める結果になりかねません。前向きな話になりかけていたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加問題なども早期に結論を出してもらわなければなりません。そうした目線で見た時、新財務相の安住淳前国対委員長の手腕は未知数であり、TPP参加を本来進めるべき立場にある経産相に就任された鉢呂吉雄元民主党国対委員長のポリシーも不明です。TPPは農政とは摩擦のある話でもあるため元農協出身の農政通と言われる同氏の今後の立ち回りには注目を要すると思います。

 その他の閣僚人事についても極めて情報不足の中で誕生した新内閣です。前述したように、あらためてこれ以上のネガティブ・サプライズは永田町に市場は抱かず、むしろ意外にポジティブな話が多くなるのかも知れませんが、今この刹那においては「これで何とか良くなりそうです」とは言えないというのが正直なところです。世界経済が大きく軋み音をあげている現在、日本の政治が待ったなしの状況であることは衆目の一致するところです。何とか喜ばしい展開になって欲しいと、今は祈るばかりです。

 今週も頑張りましょう。

「大島和隆からの手紙」からの投信アイデア

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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