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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年8月29日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

8月第5週

マーケット概況

株式 週末終値
(8/26終値)
前週末比
(8/19比)
日経平均 8,797.78 +78.54 +0.90%
NYダウ 11,284.54 +466.89 +4.32%
金利・為替 週末終値
(8/26終値)
前週末比
(8/19比)
長期金利 1.035% +0.055%
ドル/円 76.67  
ユーロ/円 111.17  

激動の1週間、そしてあと4週間弱

前週の総括

■日経平均株価は5週間ぶりの陽線

 この一週間の各市場の動きは上記の表のとおりです。夏休みの最後になって日経平均株価の週足チャートは5週間ぶりの陽線となりました。といってもわずかに+0.9%、値幅にして79円弱の上昇でしかありませんが、震災後の安値となった3月15日の大引け8,605円まであとわずか23円というところまで週初月曜日に下落してやや切り返したという感じです。背景にはこのところの大きなマイナス要因であった米国株式市場がNYダウで+4.32%となる切り返しを演じたことです。印象として国内要因では日本市場は動いておらず、週末に米ワイオミング州ジャクソンホールで行われたバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の講演(後述)での追加金融緩和への期待値が高まったことが米国株式市場をリードし、それが世界的に波及したということでしょう。ただ、一方で欧州の問題に関してはこの一週間では何も目覚ましい進展は見られず、こちらへの不透明感はますます増幅されている感じです。

■震災後の安値トライは当初からの想定線

 震災後、原子力発電所の事故もあいまって、日経平均株価は3月15日に大引けで8,605円、ザラバで8,227円という安値を記録した後、約半値戻しのリバウンドをしました。さらにその後は、今年度下期のV字型回復を期待していったんは10,000円台を回復する場面さえありましたが、当レポートは一貫してベア・トーン(弱気)をお伝えしてきたと思います。結果はまさに申し上げてきたとおりになったのですが、その背景は欧米日のソブリン・リスクの問題であり、政治の停滞がもたらす震災復興の停滞や震災以前からも議論が続いていた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)問題などを含む景気浮揚策への取り組みの遅れでした。下期のV字型回復を予想する向きは多かったですが、今はそうした見通しはマイノリティーに属するようになったと思います。ただ前回もお伝えしたとおり、現状与えられた条件下では、逆にその震災後安値をここからさらに下回る水準まで売り込む根拠もなく、先週はそれを確認してややリバウンドしたと言えます。8月9日の安値トライと、週初22日のそれで8,600円から下の硬さはテクニカル的にもいったんは確認したと見て取れます。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価のこの一年間の動きです。-----------震災後の下髭まではトライしていませんが、引け値ベースではほぼ安値に到達しました。>

■スティーブ・ジョブズ、アップルCEOの辞任

 直接的に市場の変動に大きな影響は与えていないとも言えるかもしれませんが、今やエクソンモービル(XOM)と時価総額で世界第一位の座を競い合う仲となったIT企業、アップル(AAPL)社のスティーブ・ジョブズ氏の突然のCEO辞任発表は市場の大きな話題になりました。アップル社といえば『iPod』にはじまって、『iPhone』、『iPad』と今のIT業界の大きな流れを決めた会社であり、業績不振に喘いでいた同社を不死鳥のごとく蘇らせたカリスマ的CEOが同氏だからでもあります。周りへの迷惑を顧みもせずに、己の主張だけで転職を安易に行う人が数多くいるこの世の中で、ストックオプションも貰わずにCEOとしての年俸わずか1ドルで、体がボロボロにすり減るまでアップルにこだわった同氏だからこそ、彼が最後に取締役会などへ送ったレターには感動すら覚えました。あれこそがまさに自らのキャリアに対するプライドだと思い、惜しみない賞賛の拍手を送りたいと思いました。ただ、ポスト・スティーブ・ジョブズについては多くの意見があり、アップル個社の今後というよりは、スマートフォン業界全体が今後に多くの問題を抱えたのかもしれません。アンドロイドOSのシェア拡大が華やかに喧伝されている裏での問題(マネーサービスのブログの方もご参照ください)もあり、業界動向には今後しばらく注視しておくべきかとも思います。

■欧州共同債とメルケル独首相の決断

 一向に問題の解決が見られないのは欧州の問題、取り分けPIIGS諸国の財政・信用不安であり、これがフランスの格下げ見通しなどを誘発して市場の不安定要因になり続けているのはご承知のとおりです。現状の欧州問題を解決する方法は見ている限り選択肢は多くなく、ギリシャなどをユーロ圏から切り離してユーロ圏解体の方向へ向かわせるか、欧州共同債といった一蓮托生型の債券でファイナンスをしてユーロ圏を延命するかのどちらかという状況になってきていると言えます。ただし、欧州共同債の意図は、年率16%以上に跳ね上がっている信用不安を抱えるギリシャなどの資金調達に、ドイツなどの高い信用力を供与して低コストの資金調達を行えるようにしようというものですが、一方では弊害としてドイツなどの資金調達コストが一気に上昇するということがあります。現在の欧州問題は蟻とキリギリスの物語そのものなのですが、メルケル独首相が(蟻側)国内世論をどう説得するのか、説得できるのかというということが今後の焦点になります。もし難しいようであれば、根本的な欧州問題の解決は極めて難しいだろうというのが欧米債券市場関係者達の見立てであり、私もそれはそうたやすいことだとは思っておりません。結局一般的に人間は我欲が優先するものだと思わざるを得ないというのが最近の印象ですから。


(出典:Bloomberg.)

<ユーロとドルのこの一年間の関係です。-----------信用リスクを抱えているユーロですが、対ドルの関係でみると足元はドルの方が売られているというのも事実です。>

■日本国債の格下げ

 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが24日、日本国債の格付けを最上位から3番目の「Aa2」から、中国と同じ4番目の「Aa3」(ダブルAマイナスに相当)へ1段階引き下げたと発表しました。理由は「経済成長見通しの弱さが、財政赤字削減目標の達成と、社会保障と税の一体改革の実施を困難にしている」ということで財政改革の実行力に疑問を呈したことです。同社による日本国債の格下げは2002年5月以来、約9年ぶりで小泉改革によって格付けがいったん回復傾向に入っていた流れがこれで完全に逆行し始めたことを示しています。主要格付け会社による格下げは東日本大震災後初めてのことですが、今後は他社も追随することが予想されます。

 ただこうしたことを受けても、それを織り込み済みと判断したのか債券市場はほとんど反応せず、また為替市場にも影響を及ぼしませんでした。さらには永田町界隈の興味も民主党代表選に集中している(政治空白)こともあり、格付け会社が指摘した格下げ理由とは裏腹に、ほとんどカウンター・アクションを見ることもできませんでした。ただ、これはとても問題だと考えています。世界の主要国といわれる国々の中で、国債の格下げについてこれほど鈍感な国も他にあまり例がないからです。もしこれを市場の日本への信頼感の証などと誤解し高を括っていると、どこかで手痛いしっぺ返しを受けるものと考えます。

今週のポイント

■注目のジャクソンホール、FRBは約3週間の時間稼ぎができた

 バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は26日、米ワイオミング州ジャクソンホールで開催中の経済シンポジウムで講演し、追加の金融緩和策について「9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で引き続き検討を続ける」と語りました。さらには9月20日に予定していたFOMCを2日間(20〜21日)に延長する考えも表明し、市場が期待していた量的緩和第3弾(いわゆるQE3)については、やはり予想どおり言及しないままに終わりました。

 市場は何も言わない議長講演に戸惑い、当初は株式市場も大きく下落するという展開を見せましたが、FOMCを2日間にして、この段階に来てもまだFRBが幅広い政策手段を持つことを示し、景気情勢から必要と判断すれば、来月にも景気の刺激を狙った追加緩和に動く可能性を示唆することに成功、株価は徐々に値を切り上げて前日比+134.72ドルとなる11,284.54ドルとなって終了しました。

 これにより、米国金融当局FRBは金融政策の追加的段階に入るかどうかを判断するのに上手に3週間以上の時間稼ぎができたことになります。前回のFOMCでゼロ金利政策を2013年半ばまで継続すると具体的に時間軸を明示したり、今回も次回のFOMCを2日間に延長するなどといったり、こうした市場との対話を重視することで市場を上手にコントロールするという手法はやはり米国金融当局の得意とするところだとあらためて感心させられてしまいます。市場が何たるかをよく理解しているのが米国金融当局ということです。

■お粗末な緊急円高対策

 その一方で、政府が24日に発表した緊急円高対策には正直大きな失望感を覚えました。従前、日本の外国為替市場で大手金融機関のチーフ・ディーラーとしてその辣腕をふるわれた方からも「あれじゃ話にならない。為替市場の何たるかを全然理解していない」とコメントをいただいたほどです。

 その内容とは「外国為替特別会計のドル資金1,000億ドル(約7.6兆円)を使った資金枠を設定、日本企業が海外の企業や資源権益を買収する原資にする。政府資金を呼び水に民間の海外投資を促し、為替市場に円売り・外貨買いの流れを作り出す狙い。併せて金融機関には外国為替の持ち高報告を求め、投機的な動きを抑制する。」というものです。

 まず前者について言えば、具体的な時間軸での効果検証が極めて曖昧だということが挙げられます。簡単に言えば、「緊急円高対策」として即効性がある話ではないということです。これから資金枠を設定し、民間の海外投資を促すという仕組み、どれだけ速やかなテンポで作業が進むというのでしょうか? 緊急である以上、即座に影響があるような策を示すか、もっと単なるアナウンスメント効果を狙うものとしても上手な意思表示の方法があるように思われます。下手をすれば無駄弾を撃つだけにもなりえます。

 また後者の金融機関の持ち高報告ですが、あたかも普通の金融機関(東京市場で取引の多い銀行や証券会社など約30社)が投機的な為替市場の動きを助長しているかの対策のように見えますが、海外市場での取引参加者は対象外となるなど、今の為替市場の状況を正しく充分に把握した上での対策とはとても思えません。また今ではそれなりの市場影響度をもつ「ミセス・ワタナベ」という個人FX市場参加者の動きもこれでは補足できません。オーバーナイトで為替変動が一方通行になることが多いのは、こうしたポジションがロスカットのトリガーにより一気に執行されるという側面が最近はよく見られます。またそれをあえて狙って投機筋がアクションを起こすという事もあります。それにはこの持ち高報告は何の意味も持ちません。

 ゆえに、この「緊急円高対策」が発表された後、為替市場では円安に動くどころか、むしろせせら笑うかのように円高が進んでしまいました。民主党代表選にばかり神経を使わずに、まさに使うべきところに使って欲しいものです。政治にはないかも知れませんが、日本の金融当局にも間違いなく優れた英知はあるのですから、それを上手く活用できるように政治には動いて欲しいものです。民主党代表選をするならば、単なる派閥の推薦人集めの議論ではなく、政策論争を尽くして世論を巻き起こして欲しいと思います。国民の信を問わずに首相の首の据えかえを、あたかも「学級委員を選ぶかのよう(大阪・橋下知事)」に党内派閥の力学だけで行うならば、マニフェストを変える・変えないという問題の前に、野党時代の民主党がそれまでの自民党政権の首相交代を批判していた事態と何ら変わりはないのですから。逆にいえば、だからこそ、今の市場は再び政治動向に極端に無関心になってしまったとも言えます。

 今週も頑張りましょう。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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