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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2011年8月22日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

8月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(8/19終値)
前週末比
(8/12比)
日経平均 8,719.24 -244.48 -2.73%
NYダウ 10,817.65 -451.37 -4.01%
金利・為替 週末終値
(8/19終値)
前週末比
(8/12比)
長期金利 0.980% -0.060%
ドル/円 76.47  
ユーロ/円 110.21  

今更弱気になっても仕方がない

前週の総括

■日経平均株価は4週連続の陰線

 この一週間の各市場の動きは上記の表のとおりです。お盆休みという影響もあったのかもしれませんが、先週は週末に近づくほどに市場は下落基調を強め、週末の終値がほぼ週間の安値という状況で一週間が終わりました。終値ベースでは震災後の安値に次ぐ水準での一週間の終了です。この1週間、明らかに市場は国内要因ではなく、外部要因に振らされました。チャートでみると明らかなのですが、通常、国内要因で株価が振らされている時は、それなりに前日終値に絡む水準でスタートして連続性を保つのですが、金曜日の日足ローソクは離れ小島のように下値に離れて登場しています。

 欧米市場が現地時間木曜日に大きく崩れて返ってきたため、翌金曜日の市場がそれに続いてネガティブ・リアクションを起こしたという典型です。弊社の一部ファンドもこの影響を受けて基準価額が5%以上の下落となりましたので、臨時レポートの形式でその状況をご報告(弊社Webサイトの新着情報でご覧頂けます)させていただいたのですが、その市場概況から引用すると「米国国債の格下げなどソブリン・リスクに伴う市場の混乱は、9日に行われた米国の連邦公開市場委員会(FOMC)において「米国のゼロ金利政策は2013年半ばまで継続される」と具体的に期間が明示されたことにより、いったんは沈静化しましたが、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が17日、米金融当局が欧州大手銀行の米国事業を調査していると報道したことにより、再び欧州の債務問題として再燃、欧州市場で銀行株が急落したことをきっかに米国市場へも再び拡大しました。またこの日、フィラデルフィア連銀が午前に発表した8月の景気指数がマイナス30.7と、2年5カ月ぶりの水準まで悪化したことや朝方発表の週間の新規失業保険申請件数が市場予想以上に増えたことなどにより、米景気の減速懸念が再び市場の関心事となり、米国株式市場は年初来安値に次ぐ水準にまで下落したということになります。国内要因はほとんど材料がない状況だったと言えます。


(出典:Bloomberg.)

<日経平均株価の今年3月初めからの推移です。-----------8月に入ってからの下がり方は国内要因ではないことを示唆しています。>

■ドル円が戦後最高値を更新し一時75円台

 先週のもう一つのポイントは、週末金曜日の夜のNY時間において、一時円がドルに対して買われて75円95銭という戦後最高値を更新する場面が見られたということです。終値自体は76円47銭と戻しておりますが、日本を離れた市場で最高値を更新したというのは正に「狙われた」感があります。ただ市場というのは一方通行になっている時は極端な行動に走りやすいのも事実であり、戦後最高値の更新は時間の問題と思われていましたから別段の驚きのあるものではないとも言えます。

■欧州が怖い

 前述したように、先週の下げを先導したのはまさに欧米市場です。また確かに米国のマクロ指標などでもフィラデルフィア連銀が発表した景況感指数や週間の新規失業保険申請件数などに市場に失望感を与えるものがありましたが、一番市場が気にしているのが欧州の財政・信用リスクの問題です。米金融当局が欧州大手銀行の米国事業を調査していると報じられたことが欧州の銀行株の下落を加速させたというのも事実ですが、米国に比べると開示内容にやや不透明感の残る場合が多い欧州系金融機関が、今回の欧州問題の中で、どれほど財務内容が傷んでいるのかということに市場の関心事は集中しているかに思われます。米国大手のパソコンメーカーであるデル(DELL)ヒューレット・パッカード(HPQ)の業績不振などが下落の理由の一部であることは確かですが、米国国債10年債の利回りは2%割れギリギリの水準にまで買い進まれています。この意味するところは、投資家の多くがかなり極端にリスク回避的な姿勢に傾いているということであり、また同時に、格下げを受けてもなお米国国債が買われるということは、ある一定水準以上の信用を米国はちゃんと維持しているということです。格下げで金利が急騰(債券が叩き売られた)した南欧諸国の国債とは本質的な位置づけが違うということです。


(出典:Bloomberg.)

<米国10年国債のこの1年間の利回り変化です。-----------史上最低水準を更新しているという事実を確認してください。>

■それでも動きを止めないシリコンバレー

 ヒューレット・パッカードが発表した「PC事業のスピンオフを検討している」という内容は、その直前に発表されたDELLの決算内容と合わせて伝統的な“パソコン”という箱モノの事業の将来性に疑問を抱かせ、これがハイテク株のウェイトが高いナスダック総合指数の下落を先導したという面は否定しませんが、ならばこの手の分野のビジネスの先行きが雲行き怪しいかといえば、答えはまったくNOであると言えます。DELLの方はシリコンバレーの会社ではありませんが、Palo Alto(街の名前です)の老舗であるヒューレット・パッカードがこの決断を下したのは、ある意味では遅すぎた感じさえあります。インターナショナル・ビジネス・マシーンズ(IBM)がそのパソコンビジネスをレノボに譲渡したのは遠い昔の話であり、その意味では「ヒューレット・パッカードもやっとか」という印象さえ抱きます。

 「リビングルームが主戦場になる」と言われて早10年以上になりますが、パソコンとテレビの融合は相当なレベルまで進みました。そして今の主戦場は「ネットワークへの入口」という分野です。この分野で、いわゆる「パソコン」というカテゴリーに分類されるものと、『iPad』などのタブレットもの、そしてスマートフォンなどが鎬を削っています。「ネットワークへの入口」があるのならば、肝心なネットワーク自体は益々成長しなければなりません。入口ばかりあっても、そのネットワーク自体が脆弱では話にならないからです。

 そうして考えると今後は当然アップル(AAPL)インテル(INTC)、あるいはネットワーク機器最大手のシスコシステムズ(CSCO)などの動向も絡めてこれらパソコン関連市場という捉え方を益々していかないとなりません。間違いなく、ネットワークへの入口の需要は高まり続けており、その市場自体が拡大(パイの拡大)しています。またそれに関連して、その入口から入った先の世界も拡大しています。世界が信用リスク問題や景気減速といった話に敏感になっているのは事実ですが、着実に拡大を続けているこれら市場があるということも忘れてはならない事実です。シリコンバレーは動きを止めていません。

今週のポイント

■どこに行ったの、強気だった人たちは?

 市場関係者の常なので仕方がないのですが、この数週間でそれまで強気コメントを発していた市場関係者も相当数が宗旨替えをした感じがあります。日経平均株価の予想レンジなどの取材時に9,000円台以下の水準を答えると、震災後からこれまではかなり珍しいものを見るような眼をされたのですが、気がつくと今では8,500円という数字は極めて常識的な水準論になったようです。

 私が要点として掲げてきたポイントは、(1)ギリシャ問題に端を発した欧州の債務問題やソブリン・リスク問題が米国、そして日本へと波及していく可能性(ソブリン・リスク3兄弟としてお伝えしてきました)、(2)対国内総生産比(GDP)200%を超える公的債務残高に象徴される国家財政問題、(3)それに伴う財政改革案の必要性と復興財源確保の方法論に具体的かつ実現性のある解決策を出せない民主党政権の能力問題、(4)電力不足やそもそも震災前から諸外国に比べて高いと言われていた法人税を更に引き上げるなどの企業負担の更なる増大懸念(産業空洞化を誘発します)、そして(5)円高などでした。逆に下期のV字型回復の可能性についてはこうした背景や震災復興などの遅れなどもありかなり否定的な見方を続けてきました。

 大筋で今でもこの見方を変えられずに強気な見通しは出せる状況ではないと考えておりますが、前述のいくつかの問題については市場もこれで認識するところとなり、その結果として現時点の株価下落があります。例えば(1)について、相当に欧州の信用不安については市場も悲観的になったというのは前述のとおりです。またようやく菅首相の辞任時期が明示されたことで(3)の問題などについても議論が始まりました。(4)の問題が重要です。震災前は法人税引き下げに向かっていましたが、マニフェストどおりの歳出削減は完全に無理だと否定した現政権が、首相交代に際しても歳出カットに相変わらず踏み込まずに増税による歳入増だけを目指そうとすれば、ほぼ間違いなく産業空洞化と景気減速をまねくと思われます。

 市場は見えない不安がある時に怯えて萎縮するものですが、問題が何かを見極めた時にはその評価を織り込んで次の段階を探りに行くものです。その意味では、まだ前述の問題すべてが織り込めているとは言えません。またその具体的な改善策が出てきているわけではありませんが、状況はそれでも徐々に改善していく、少なくとも今から弱気に変わって狼狽する段階ではないと考えています。

■予想配当利回りと予想PERの水準

 従来「弱気論」をずっと続けてきたにも関わらず、私がややポジティブなことを言い出す背景はひとつには「もう株を買っておいても、そう罰は当たらないだろう」という水準に近づきつつあると考えているからです。8,600円という水準目途をひとつ持っておりますが、それは震災後のショック安の時の安値だからです。ショックを起こした市場は先物では7,800円台を見るに至りましたが、引け値ベースで考えると8,605円が安値です。そこからショック安を乗り越えて切り返したわけですが、これだけの悪材料を抱え続けている以上はもう一度震災後安値を確かめてみないと底打ちとは思えないと考えていました。そして今まさにその水準界隈まで下落してきました。

 ここで注目したのが予想配当利回りと予想株価収益率(PER)の水準です。これはデータベースにアクセスしてヒストリカル・データを一気に取ってくるという方法ではなく、毎日の日経新聞朝刊に表示されているものを、日々エクセルシートに手入力してきたものを見ています。すなわちその時点で市場が予想データと思っていたものを利用しています。

 まず予想配当利回りですが、震災直後の3月15日に2.13%にまで急騰していますが、その後は再びおおむね1.8%台で推移してきました。そして今、足元で一気に2.15%にまで上昇してきました。日経平均採用銘柄のそれなので、銘柄の入れ替えや、当然決算を受けての配当方針の変更などを織り込んでの現状の水準ですが、震災後安値の時よりも予想配当利回りは上昇しています。その一方で、当時の日本国債10年新発物の利回りは1.215%と先週末の水準に比べて0.235%も低い水準にあります。つまり債券に比べての割安感は強まったということが言えます。


(作成:楽天投信投資顧問)

<日経平均株価とその予想配当利回りの2年間の推移です。-----------震災後の急落で利回りが急騰した水準まで再び上昇しています。>

 次に、株の収益性という点で同じように予想PERを見てみると、これが極めて面白いことが分かります。先週末の終値ベースのそれは何と13.06倍。震災後安値の時、すなわちまだこれは予想ベースで2011/3月期を見ていた時ですがそれが13.04倍。つまり今現在、ここの企業の決算見通しはやや見積もりが甘いと思われる面は否定しないまでも、2012/3月期に予想収益に換算し直したうえでの予想PERでも震災後安値にほぼ等しい水準にまで低下しているということです。

 さらに面白いことに、この予想PERですが、2009年代に遡るとなんと30倍台を超えてくるということです。では何の時を境にバリュエーション水準が一気に20倍割れまでドリフト・ダウンしたかというと、2009年5月を境にしていますので、鳩山前民主党政権から菅民主党政権に衣替えをせざるを得ない状況に政治が追い込まれ、民主党政権による国内景気の浮揚に誰もが自信を無くした時からということが一目瞭然で分かります。

 そして一年余り、確かに東日本大震災のような大災害が発生して日本経済は相当なダメージを受けましたが、その後の一連の流れの中でようやく国民の注目も政治に集まり、間もなくそうした中で首相が交代しようとしています。菅民主党政権時代における予想PERは客観的な事実として、良くても16倍台が精一杯でしたが、首相が交代すればそれが跳ね上がることも期待できなくもありません。仮に今の段階でPERが16倍にまで戻れば、それだけで日経平均株価は10,680円台にまで戻します。ただそれには首相交代という事実のみならず、欧米市場の落ち着きや、円高一服などの他の要素も必要だと思いますが、投資家の目線は変えられるタイミングは近づきつつあると考えています。だからこそ、ここにきて「今更弱気に変わっても仕方がない」と申し上げました。


(作成:楽天投信投資顧問)

<日経平均株価とその予想PERの2年間の推移です。-----------震災後に落ち込んではいますが、それ以前に、2010年5月の段階で大きく落ち込んだままに放置されてきました。>

 今週も頑張りましょう。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

※ 楽天投資塾!運用会社の“生の声”(楽天投信投資顧問公式ブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/toushintoushi/

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