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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2010年2月15日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

2月第3週

マーケット概況

株式 週末終値
(2/12終値)
前週末比
(2/5比)
日経平均 10,092.19 35.10 +0.35%
NYダウ 10,099.14 +86.91 +0.87%
金利・為替 週末終値
(2/12終値)
前週末比
(2/5比)
長期金利 1.325% -0.030%
ドル/円 89.97  
ユーロ/円 122.65  

オリンピックよりも、オリンピア(ギリシャ)が問題

前週の総括

■日経平均株価10,000円以下では売買代金が激減

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。先週末の東京市場は前日NY市場が欧州連合によるギリシャ支援表明を受けていったん落ち着きを取り戻してリバウンドしたことを受け、辛うじて10,000円台を回復して引けていますが、このところ増加傾向にあった売買代金は週を通じて激減、1営業日として売買代金が1兆4,000億円を超えることはありませんでした。週末金曜日はオプションSQであったことを考え合わすと、いかに市場が閑散であったかがお分かり頂けると思います。NYダウが10,000ドルを下回って引けたのは8日の月曜日だけですが、日本市場は8日から10日まで3日間連続で10,000円を下回る体たらくです。ただ逆にいえば、よく“ストン”と下に抜けずに持ち堪えたなという気もしています。

■拡がる南欧財政不安問題

 前回もご案内しましたが、ギリシャの財政不安問題をきっかけに拡がったポルトガルやスペインなどを含む南欧諸国の財政不安問題は再び欧州全体に波及する金融危機問題として市場の不安感を拡大しています。欧州連合(EU)が11日に開催した臨時首脳会議では「ユーロ圏の安定を守るため必要ならば断固とした協調行動を取る」という声明(前述)を発表し、欧州連合としてその不安の払しょくに躍起ですが、残念ながら具体策に欠けるということでその効果は持続しませんでした。結局、ユーロはいったんドルに対して買い戻されたものの、再び売られて週末を迎えています。土曜日にはバンクーバーでオリンピックの開催式が行われましたが、オリンピック発祥の地オリンピアのあるギリシャ問題の方が、金融市場への影響度は遥かに高いという皮肉な巡り合わせになっています。

■中国が預金準備率を再引き上げ

 12日、中国人民銀行が預金準備率(市中銀行が中央銀行に預けなくてはならない預金の比率)を0.5%引き上げ、これで2カ月連続の引き上げとなりました。週末の米国株下落の要因はギリシャ問題もさることながら、この中国の金融引き締めが要因です。しかし今回の預金準備率の引き上げは中国春節(旧正月)明け後の資金回収を意図したと見る方が普通だと思え、中国人民銀行の意図をあまり深読みする必要はないと思われます。実際来週2月15日(月)〜2月19日(金)は中国本土市場の株式取引は休場となります。日本だって年末年始の正月休み、今のようにコンビニATMがいつでもお金をおろせる環境を提供する以前は誰もが年末に“年越え資金”を現金で確保したはずです。おまけに彼の地は現在極めて好景気なのですから。逆にいえば、この間の資金ニーズを満たすためにそれなりに金融緩和で市中に現金を流通させていないとならないわけですが、休み明け後にはそれを回収しないとジャブジャブの状況が続いてしまいます。インフレ懸念とバブル懸念が燻る状況下においてそれは放置できない問題であり、そうした技術的意味合いが強いと思われます。利上げと預金準備率の引き上げは似て非なるものということをあらためて考えておいた方が良いと思われます。

■FRB議長、緩和策は引き続き必要

 一方、米国ではバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長が危機対応の金融政策を平時に戻す「出口戦略」について語り「緩和的な政策が引き続き必要」とし、時期が来れば徐々に緩和策を修正する意図を滲ませながらも具体的な時期を明示するまでには至りませんでした。FRB議長としての再任が決定して以降最初の議長見解の表明ですが、大量供給した資金が滞留してバブルやインフレ懸念を睨みつつも、まだ雇用状況などを鑑みると出口戦略の時期をまだ明確にすべき時まで来ていないというFRBの板挟みの苦悩を体現するかのような発表だったと思われます。

■2009年第4四半期の決算発表は総じて良好だった

 先週までに米国S&P500種構成銘柄のうち380社が決算発表を終えていますが、そのうち市場予想を上回ったのは72.4%、下回ったのは17.6%です。純利益ベースでみると前年同期の約3倍の大幅増益となることがほぼ確実で、増益となるのはなんと07年の第3四半期から10四半期、つまり2年半ぶりです。

 日本企業においても、注目通り電子部品関連、半導体製造装置関連及び自動車部品関連各社などの大幅な収益改善が発表されており、企業の収益状況からだけすれば大きな世界経済のうねりは確実に底を打って上昇波動の中に入ってきたと考えて大丈夫だと思われます。その意味では、南欧の財政危機問題が最後の火種ということもできますし、中国などの新興国経済の状況を期待を含めて慎重に見守り続ける必要がある状況とも言えます。

 
(出典:Bloomberg)

<チャートはFTSE新華中国A株50インデックスの1年間の日足です。--------いわゆる最も代表的な中国本土株インデックスのひとつですが、このところの金融引き締め観測などの台頭で株価が軟調に推移する局面も見られましたが、今月に入り綺麗に底を入れて切り返してきました。>

今週のポイント

■海外市場が休場

 今週、月曜日は米国市場がプレジデンシャル・デーで休場、前述のように中国本土株市場も旧暦正月のため今週いっぱい休場、月曜日と火曜日は香港市場も休場ということになり、国内要因ではなく海外市場の動向に振り回されている日本市場としては方向感を求めにくい展開となることが予想されます。

 国内問題も、民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、小沢氏が嫌疑不十分で不起訴処分となったことを不服として、小沢氏らを刑事告発した市民団体が2010年2月12日、検察審査会に「起訴相当」の議決を求める申し立てをしました。これにより再び与党幹事長が逮捕される可能性が浮上してしまったわけで、同時に首相の問題に対しても同様な可能性が再浮上し、国内問題も決して安穏としてられる状況ではありません。ただ現在の市場反応を見ている限り、市場は、国内政治問題はもう気にしていないという状況が続いており、これもひとえに日本市場での国内投資家のプレゼンスの低下、外国人投資家のプレゼンスの向上がなす結果かと言えます。

■トヨタ問題はどこまで拡がるのか?

 トヨタ自動車(7203)が12日、米国など北米で販売したピックアップトラック「TACOMA(タコマ)」を計約1万台リコール(回収・無償修理)すると発表しました。対象となるのは09年12月から今年2月上旬に生産された四輪駆動車(4WD)で、米国で8,000台、カナダで1,500台、メキシコなどその他の北米地域で約200台が販売されています。エンジンの動力を前輪に伝える「プロペラシャフト」と呼ばれる部品に亀裂が入る恐れがあり、亀裂を放置すると最悪の場合には破損し、路面と接触して車をコントロールできなくなる恐れがあるということで、製造過程で不具合が見つかったためリコールに踏み切ったと報道されています。

 すでに発表になっているアクセル問題のリコールやプリウスのそれに比べると台数規模は少なく(10,000台という規模自体は小さくないですが…)、軽微な問題と捉えてしまいそうですが、正直ここまでくるとやや問題の根は深いと思わざるを得ません。先週までの本稿や、あるいはマネーサービスの方からお届けしている原稿などでは、どちらかと言えば日米の外交問題の中で同社がスケープゴートとされた感じがやや強いのではないかというトーンで考えているとお伝えしてきましたが、今回の「TACOMA」のリコールの話を聞くに及ぶとそうも言っていられないという気がします。つまり急激にグローバル企業として戦線を拡大した企業の兵站線の緩みということも真剣に考えないとならない、言い換えるとトヨタ内部も相当に箍が緩んでいると言わざるを得ないのかもしれないということです。

 それは今回の問題の個所が「プロペラシャフト」と呼ばれる、車にとっては極めてコンベンショナルな技術部品であるということです。カムリのアクセルペダルの問題は「カーペットを巻き込むと…」みたいなかなり難癖付けられたという感覚の強いものであり、プリウスのブレーキ問題は極めて最先端技術の電子制御部分に関わるとはいえドライバーの感覚的な問題とも言えるところでした。しかし今回の件は車ならば必ず付いている基幹部品の品質問題だからです。

 これも現下のトヨタ自動車の置かれた立場から先手先手の早めのリコールを同社が届け出たという見かたをすることはできます。一連の騒動の中で事態を早く収拾させたい同社の苦しい立場がそうさせたと見ることができない訳でもありませんが、一方で、こうした伝統的な車の基幹部品の品質管理までが徹底できないほどに同社の海外現地生産のクォリティは落ちている(上げられなかったという言い方が適切かもしれませんが)という言うこともできなくありません。グローバルに兵站線を拡大し過ぎた結果、“カイゼン”という英語にまでなったトヨタの徹底した品質管理の手法が錆びついてしまったようです。

 これがGMに追いつけ追い越せと躍起になって国際企業として拡大を焦ってきた結果の失敗だとしたら、同社に限らず、世界に戦線を拡大していかざるを得ない多くの日本企業にとっては、今回の問題は多くの問題を提議しているように思えてなりません。まだまだこの問題が収束するには時間を要すると考えています。いずれにしても、今週は方向感の出難い展開が続きそうです。

 今週も素晴らしい一週間になることを願っています。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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