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楽天証券ニュース[マーケット情報] 発行:2009年12月28日 楽天証券株式会社

楽天証券

楽天投信投資顧問 CEO兼最高運用責任者が、1週間のマーケットに鋭く斬り込む! 大島和隆からの手紙

12月第4週

マーケット概況

株式 週末終値
(12/25終値)
前週末比
(12/18比)
日経平均 10,494.71 +352.66 +3.48%
NYダウ 10,520.10 +191.21 +1.85%
金利・為替 週末終値
(12/25終値)
前週末比
(12/18比)
長期金利 1.270% +0.040%
ドル/円 91.31  
ユーロ/円 131.36  

為替頼みながらも、政局は見て見ぬ振りを始めたのか?

前週の総括

■日経平均株価の上昇は本物か?

 先週の主な市場の動きは上記の表の通りです。日経平均株価は先週10,500円台を回復する場面もあり、週末現在でもわずかにそれを下回ったレベル終了しました。また、これを受けて報道などでもやや先々に安堵感のある内容が伝えられていますが、慎重な見方を崩してはおりません。先週、日経平均株価の上昇率こそ+3.48%と群を抜いていますが、市場全体の動きを示すと言われる、すなわち年金基金を中心とした機関投資家のポートフォリオなど大規模資金の運用状況を反映すると言われる東証TOPIXの上昇率はその半分の+1.77%に留まります。東証マザーズは+2.25%になりますが、JASDAQ総合は+1.11%に留まります。つまり、日経平均株価だけが図抜けて上昇したことになります。

■NT倍率が高値を更新し続けている異常

 どの程度日経平均株価の上昇が図抜けているかを定量的に確認する一番簡単な方法がNT倍率(日経平均株価÷TOPIX)ですが、先週末現在の終値で計算するとなんと11.54です。これはもちろん2009年を通じて最高値ですし、以前もご紹介しましたが、2000年4月23日に行われた日経平均採用銘柄30銘柄におよぶ大変更以降の約10年間においても最高値を更新している異常値だと言えます。

 週末現在のTOPIX終値(909.39)をベースに計算してみると、前週12月18日現在のNT倍率11.35倍ならば日経平均株価は10,321.38円、前月11月末のNT倍率11.13倍ならば10,118.28円と今月入ってから、また先週だけでもその異常さが際立ってきていることが分かります。ちなみに、2000年4月以降約10年間のNT倍率の平均値は10.20倍。これに基づいて計算すると9,275.78円と10,000円台に乗せるどころか、辛うじて9,000円台に乗っている水準であるということができます。この現状が意味することは来年以降の市場動向を判断する上で考慮していかないとならない問題だと思います。

日経平均株価は歪んでいる
(作成:楽天投信投資顧問)

■借金漬け日本誕生をどう判断すべきか

 去る25日、政府は2010年度予算案を閣議決定しました。一般会計総額で前年比4.2%増加の92兆2,992億円で史上最大です。また併せて、国債の当初発行予定は前年度当初予算より11兆円も増えて44兆3,030億円となりました。44兆円を3,030億円超えることになりますが、直前に「おおむね44兆円以内」とリスク回避文言を付けていたことが奏功し、この点を指弾するメディアは少ないように思いますが、これを個人に置き換えたらどうでしょうか?

 住宅を購入しようとして予算を決めます。あれもこれもと段々夢を増やしていった結果、ギリギリ住宅ローンを4,400万円までなら借りようということにしました。しかし、やっぱり最後にモデルルームを見に行って、営業マンのトークに耳を傾けていた結果、30万円の予算オーバーになってしまいました。確かに全体予算から比べればたったの30万円です。でもそうした感覚の緩みが最後に大きく家計を圧迫するというのはよくある話です。

 この92兆円を賄うための収入見通しは、37兆4,000億円しかありません。すなわち遥かに収入を上回る44兆円の借金をすることになり、さらにそれでも足りない11兆円は埋蔵金を当てにしています。もし同じような発想で住宅ローン申込書を銀行支店の窓口に提出したら、銀行の与信担当者は審査にOKを出すでしょうか? 借金は返済しないとなりません。現時点において日本の国債は、ほぼほぼ国内の機関投資家(郵便貯金を含む)や個人投資家が購入しているので、ギリシャのように格下げになっても大きな問題に発展しないという理屈もなくはないですが、しかし長期金利が上昇することにでもなれば、利払費だけでもどんどんと負担は増すことになります。「ご利用は計画的に」とは消費者ローンの宣伝文句だけではないと思うのですがいかがでしょうか?

 
(出典:Bloomberg)

<チャートは過去10年間の日経平均株価とTOPIXの推移、下段はNT倍率の推移を表しています。ご覧いただけるように、2009年は年間を通じてNT倍率は上昇、現状はヒストリカル・ハイの状態で年を越えようかとしています>

■米国、医療改革法案が上院でも可決

 来年の中間選挙を睨んで支持率低下に焦りもやや出始めていたオバマ民主党政権ですが、内容的には相当妥協の産物になってしまったとはいえ、懸案であった医療改革法案を米国上院でも可決することができました。すでに下院では可決されているので、この先の作業としては、上下両院での内容一本化ということになるのですが、圧倒的な支持率でスタートした後、支持率低下の大きな要因の一つであったこの問題に一つの前進があったということで、政権安定化への一歩と見ることができます。

 また米国の長期金利の動向も目が離せなくなってきました。23日に発表された米国住宅着工は季節調整済みの年率換算で35万5000戸と前月の改定値に比べて11.3%のマイナスとなりました。マイナスとなるのは2カ月ぶりです。同日発表された個人消費支出は前月比プラス0.5%とこちらは逆に2カ月連続のプラスとなりましたが、市場予想の0.7%には届いていません。また、翌24日に発表された米国の耐久財受注は前月比0.2%増で、こちらもやはり市場予想の0.5%に届いていません。にも関わらず、長期金利は3.8%までの上昇となり、これらを囃してドルの買い戻しが進んでいると思われます。この先の米国の金利動向からは目が離せなくなってきました。

 
(出典:Bloomberg)

<チャートは米国債10年物の金利推移です。-------前回のFOMCで現行の超低金利政策は継続されることが発表されましたが、長期金利の方は3.8%代まで上昇してきました。これが最近のドル買い戻しに一役買っています。>

今週のポイント

■このまま市場は目をつぶり続けて新たなパラダイムへ進むのか?

 前述の通り、2009年は年間を通じてNT倍率が上昇するという奇異な状態で幕を引こうとしています。また新政権登場後、世界に比べて日本市場だけが年間の騰落率がマイナスになるような状態からも、今月12月1カ月間だけの上昇で脱しようとしています。ただ日経平均株価は確かに年初来18.46%のプラスですが、TOPIXは5.84%に過ぎないということは忘れてはなりません。中国上海総合指数は年初来72.53%の上昇、インドのSENSEX30種も75%の上昇とこれらには遠く及ばず、米国のTOPIXとも言えるS&P500種でさえ24.71%の上昇という現実があります。日本は単に「出遅れている」だけと理解して良いかははなはだ疑問です。少なくとも前述の通り、来年度はいわば背水の陣とも言える借金漬けの状態で走りだし、もし景気が回復できない場合は更なる借金を重ねるか、大きな予算カット、もしくは増税断行などをするしかなくなるとも言えるからです。

■市場が政治を見放すことも考えられる

 しかし、最近の日経平均株価の上昇を見ていると、すでに株式市場は政治を再び見限ったのかも知れないとも見てとれます。直近の約1カ月、ドバイ・ショック前後の市場の動きを為替動向と対比して調べてみると、極めて明確に市場はドル円相場にリンクして変動していることが分かります。すなわち日本国内市場での内需を期待する動きではなく、あくまでも世界経済、外需で潤う産業を見ていこうという動きです。内需への期待を捨てることでTOPIXの動きはどうでもよく、外需偏重型に物を見ていこうという流れを感じなくはありません。だとすれば、NT倍率が10年の眠りを経て、上方にドリフトすることもおかしくはありません。2010年代はNT倍率が11倍台で推移する元年となるということです。

 ただ短期的にはそれは日経平均株価の上昇という形で喜ばれるかも知れませんが、その根底に流れるものは「日本離れ」でしかなく、売買代金の低下を含めて、日本市場はますますグローバルな投資資金から見放されていく流れを加速するだけです。すでに、国内の多くの年金基金が、背に腹は代えられず国内株式のウェイトを引き下げる動きに出ていることは既報の通りです。この動きを加速させないためにも、政治の奮起を期待することしきりです。

■結論:強気にはなれない

 市場が上昇するカタリストもない代わりに、下落するという明確なカタリストもありません。市場参加者は年末年始で今週はますます減ってしまうでしょう。大納会や大発会は今年から前場だけの取引から、前後場の終日取引に変わりますが、ファンダメンタルの変化がない以上、それが市場の活性化に繋がるとは思えません。ゆえに、もし出来高の薄いところを狙ってという仕掛け的な動きが入れば、市場は上にも下にもどちらにも振れ易い状況が続くと思います。そして私はTOPIXの居場所の方が正しいのだろうと思っています。

 今号が2009年の最後の手紙となります。また来年2010年も引き続き皆様の投資の何か一助になればと思いつつ書き綴ってまいりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。末筆になりますが、皆様の来年の投資収益が本年以上に高くなりますことと、またご健勝を祈念しております。どうか良い年をお迎えください。

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PROFILE

大島和隆

楽天投信投資顧問株式会社 CEO兼最高運用責任者
約20年間にわたり、欧米の企業も自ら訪問調査するファンドマネージャーとして活躍。日本企業を外から見た目線で評価する独自の判断にこだわってきた。
2008年6月、楽天証券経済研究所チーフストラテジストに就任。2009年4月から現職。運用サイドからの投資情報を発信。

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