高金利が魅力的だった新興国債券。これまでは、先進国が2008年の金融危機以降、超低金利政策を実施したことで、相対的に金利水準の高い新興国債券が選好され、投資家の注目を集めました。そして、新興国債券に投資を行う「新興国債券ファンド」も相対的に高い分配金等により、資産が拡大しました。
しかし、足元の状況を見てみると、米国では緩やかながら利上げが継続していることから、米ドルが上昇(米ドル高)し、新興国債券や新興国通貨の魅力度が相対的に低下しています。
また2018年8月以降、米国との関係が悪化したトルコや財政状況の悪いアルゼンチンなどの通貨が急落したことも、新興国債券ファンドへの投資に二の足を踏ませる要因となりました。
新興国債券ファンドにおいては、先日のトルコリラやアルゼンチンペソの急落に見られるように、為替変動の影響が基準価額に大きく影響します。そして、その背景としては、新興国の多くは米ドル建て債務が多いことから、米国の金利状況や米ドルの状況に左右されやすい環境にあります。
こうしたなか、すでに新興国債券ファンドを保有している方はどのように対応したらいいのか頭を悩ますところだと思います。分配金を含めてもマイナスになっている可能性があるからです。
長期投資では分散投資の観点から新興国債券への投資も重要ですが、短期的な動きも考慮した資産運用が必要といえます。つまり、リスクも考慮した資産運用です。
新興国債券ファンドを保有/購入しつつ、新興国債券ファンドと相性のいいファンドを組み合わせて、「保有資産全体で運用」することを考えてみるのはいかがでしょうか? 今回は、皆様の運用のヒントとして新興国債券ファンドと相性のいい資産をご紹介したいと思います。
新興国債券ファンドと相性が良い資産クラスの一つとしてJ-REITをご紹介します。
組み合わせを考える際、重視したいのが異なる値動きの資産を併せ持つことです。そこで注目したいのが「相関係数」です。相関係数とは、簡単にいうとそれぞれの資産の動きの方向を数値化したもので、「1~-1」で表します。相関が高い(1に近い)ほど2つの資産は同じ動きをし、相関が低い(-1に近い)ほど2つの資産は逆の動きをするという感じで、分散投資を考える場合には、相関が低いもの同士を組み合わせると良いとされています。
5年の相関係数を見ると、新興国債券とJ-REITの5年の相関係数は、「0.24」と相関はあるものの、比較的相関が低いといえます。下のグラフで見ても値動きが異なることがご確認いただけるのではないでしょうか? また、リスクとリターンにも着目し、組み合わせることで効率的なリターンの獲得が出来るかという点も重要です。過去5年の新興国債券のリスク/リターン(年率、円ベース)は、「リスク:11.0%」「リターン:1.3%」でしたが、J-REITのリスク/リターン(年率、円ベース)は、「リスク:8.6%」「リターン:7.1%」でした。仮に新興国債券50%、J-REIT50%で試算すると、「リスク:7.8%」「リターン:4.4%」となり、新興国債券100%と比べ、リターンを上昇させ、リスクを引き下げることができると考えられます。
長期投資としては、新興国債券への投資は有効と考えられることから、次のステップとして、J-REITを組入れることで為替変動要因を低下させつつつ、「保有資産全体での運用」という観点で新興国債券と付き合っていくのはいかがでしょうか?
過去5年のパフォーマンスの推移(2013年9月~2018年9月、月次、円ベース)
Bloombergのデータを基に楽天証券作成
新興国債券:JPM GBI-EM グローバル・ディバーシファイド(円ベース)、J-REIT:東証REIT指数(配当込み)
下記は、楽天証券の取扱ファンドのうち、J-REITファンドの一部を紹介するものであり、ファンドの購入を推奨するものではありません。投資に当たっては、ファンドの中身を十分ご理解のうえ、ご投資いただきますようお願いします。
野村インデックスファンド・J-REIT
運用会社 野村アセットマネジメント
「J-REITインデックス マザーファンド」への投資を通じて、国内不動産投資信託証券を実質的な主要投資対象とし、東証REIT指数(配当込み)の動きに連動する投資成果を目指して運用を行う。
野村Jリートファンド
運用会社 野村アセットマネジメント
「J-REITマザーファンド」への投資を通じて、国内の金融商品取引所に上場(これに準ずるものを含む)されているREIT(不動産投資信託)を実質的な主要投資対象とする。投資にあたっては、個別銘柄の流動性、収益性・成長性等を勘案して選定したJ-REITに分散投資を行い、高水準の配当収益の獲得と中長期的な値上がり益の追求を目指して運用する。
J-REIT・リサーチ・オープン(年2回決算型)
運用会社 三井住友トラスト・アセットマネジメント
「J-REIT・リサーチ マザーファンド」を通じて、国内の取引所に上場(予定含む)している不動産投資信託証券に投資し、安定したインカムゲインの確保と信託財産の中長期的な成長を目指す。各銘柄の投資適格性等を考慮したうえで、投資環境調査、各銘柄の保有不動産分析、収益並びに配当の予想等に基づき、銘柄選択を行う。
フィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド
運用会社 フィデリティ投信
主に「フィデリティ・Jリート・マザーファンド」への投資を通じて、国内の取引所に上場(これに準ずるものを含む)されている不動産投資信託証券(リート)を主な投資対象とし、投資信託財産の成長を図ることを目標として運用を行う。国内以外の取引所に上場(これに準ずるものを含む)されているリートに投資することもある。
Jリートアクティブファンド(1年決算型)
運用会社 三井住友トラスト・アセットマネジメント
日本の金融商品取引所上場(上場予定を含む)の不動産投資信託証券(Jリート)に投資する「Jリートマザーファンド(M)」を主要投資対象とする。東証REIT指数(配当込み)を上回る投資成果を目標として運用を行う。
楽天証券分類「国内REIT」のうち、ファンドスコア(3年)で5ないしは4のスコアのファンドから抽出
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