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NISA活用法⑦ 退職金や相続などの資金を有効活用!成長投資枠を使いこなすためのNISA活用法

NISA活用法⑦ 退職金や相続などの資金を有効活用!成長投資枠を使いこなすためのNISA活用法

更新日:2025年4月8日
掲載日:2023年9月29日

要約すると
  • まとまった資金なら積立期間はできるだけ短く、投資期間はできるだけ長く
  • キャッチアップ投資では成長投資枠を活用
  • 成長投資枠の活用は低コストのインデックスファンドや上場株式、ETFがおすすめ

NISAと言えば「長期・積立・分散投資」、これから長期にわたり資産形成をしていく人のための制度というイメージがあるかもしれません。しかし、2024年から始まったNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠という2つの枠があり、両方の枠を併用することで年間360万円まで、最短だと5年間で累計1,800万円まで投資可能になります。

本記事では、退職金や相続などにより、手元にまとまった資金がある方がNISAを活用して、速やかに資金を有効活用していく方法をご説明します。

NISAでは年間360万円、累計1,800万円まで非課税に!

2024年から恒久的に利用可能となる、NISA制度の概要について最初に確認しておきましょう。

  現行NISA(2024年~)
対象者 日本に住む18歳以上の人
口座開設期間
(投資可能期間)
恒久化
非課税保有期間 無期限
制度の利用 NISA制度内で以下の2つの枠を併用可能
つみたて投資枠 成長投資枠
投資対象商品 積立・分散投資に適した一定の投資信託
(現行のつみたてNISA対象商品と同様)
上場株式・投資信託等
(①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、高レバレッジ型及び毎月分配型などを除外)
買付方法 積立投資のみ 通常の買付・積立投資
年間投資枠 120万円 240万円
非課税保有限度額
(総枠)
1,800万円(生涯投資枠:簿価残高方式で管理)
売却すると翌年以降に再利用可能。
また、2023年までのNISAとは別枠
1,200万円(内数)
売却可能時期 いつでも可

NISA制度の概要(出所:金融庁ホームページ等より筆者作成)

2024年からのNISAでは、日本に住む18歳以上の人なら誰でも利用できる恒久化された制度となり、非課税期間は無期限です。つまり、2023年までの旧NISA(つみたて・一般)のように、5年や20年といった非課税期間の期限はありませんので、NISAで保有していればいつまでも非課税となるのです。

NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠という2つの枠が併用でき、年間投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円、両枠の合計で最大では年間360万円となります。
ただし、一人あたりの非課税保有限度額(生涯投資枠)は1,800万円です。

まとまった資金なら積立期間はできるだけ短く、投資期間はできるだけ長く

NISAの活用では、給与など毎月の収入から一部を積み立てる資産形成で、活用される方が多いのではないかと思いますが、一方で、退職金や相続、マイホームの売却などにより、まとまった資金が手元にある方にとってもNISAは使いやすい制度です。

例えば手元資金から1,000万円を投資にまわすことができるとしても、どこかのタイミングで一度に資金を投じる一括投資はなかなか勇気がいるのではないでしょうか。とは言うものの、年齢にもよりますが、まとまった資金があるにもかかわらず、20年、30年と少額ずつの積立投資をしていては時間がかかってしまい、資金の有効活用とは言えません。

そこで、考えられるのが、5年もしくは10年といった比較的短期間で積立投資をする方法です。ここでは5年(毎月18万円)もしくは10年(毎月9万円)かけて元本合計1,080万円分を投資し、その後は資金を追加することなく、保有を継続する前提でシミュレーションしてみます。

まず、最初の5年間で毎月18万円を積み立て、その後は保有を継続する場合です。ここでは運用利回りが3%、5%、7%の3パターンで計算してみます。累計投資元本(利回り0%に相当)は5年後に1,080万円に到達し、その後は一定となります。

5年後以降、利回りの違いによって金額の差が大きくなっていく様子が確認できます。具体的な金額を図にまとめると、次のようになります。

利回り 5年後の評価額と含み益 20年後の評価額と含み益 30年後の評価額と含み益
0% 1,080万円 1,080万円 1,080万円
3% 約1,165万円
85万円
約1,816万円
736万円
約2,440万円
1,360万円
5% 約1,226万円
146万円
約2,548万円
1,468万円
約4,150万円
3,070万円
7% 約1,289万円
209万円
約3,556万円
2,476万円
約6,995万円
5,915万円
  • 本試算での評価額や含み益は、利回りが確定しているものとして計算しています。実際の値動きには価格変動リスクがあることにご留意ください。

利回りの違いがあるといっても5年後の時点では、利回り0%(元本そのまま)から利回り7%で金額の差は209万円にとどまっていますが、20年後では2,476万円、30年後では5,915万円とかなり大きな差に広がっています。

一般的に、株式を対象とした投資信託などを活用して20年、30年といった長期で投資を行っていけば、運用利回り3~7%というのは現実的な数字だと考えています。

次に、もう少し時間分散効果を高めて積立期間10年の場合で確認してみましょう。次のようにグラフの見た目に大きな違いはありません。

次に、具体的な金額で確認してみましょう。

利回り 5年後の評価額と含み益 20年後の評価額と含み益 30年後の評価額と含み益
0% 1,080万円 1,080万円 1,080万円
3% 約1,258万円
178万円
約1,691万円
611万円
約2,272万円
1,192万円
5% 約1,395万円
315万円
約2,272万円
1,192万円
約3,701万円
2,621万円
7% 約1,548万円
468万円
約3,045万円
1,965万円
約5,991万円
4,911万円
  • 本試算での評価額や含み益は、利回りが確定しているものとして計算しています。実際の値動きには価格変動リスクがあることにご留意ください。

10年後の時点では、利回り0%(元本そのまま)から利回り7%で金額の差は468万円ですが、20年後では1,965万円、30年後では4,911万円と差が広がっています。5年で積立を終えた場合と比較すると期待される評価額や含み益は小さくなっていますが、これは投資完了までの期間が10年と2倍の時間をかけているためです。

キャッチアップ投資では成長投資枠を活用

ご説明したように、ある程度まとまった資金がある場合に、比較的短期間(3~10年)で資金を投じるスタイルはキャッチアップ投資と呼ばれます。

例えば、60歳で退職金を受け取った方が5年もしくは10年で積立投資を行いその後、10年、20年と保有を継続して80歳、90歳まで運用を継続していく活用方法が考えられます。

もちろん公的年金等の収入で足りない部分は、少しずつ売却しながら使っていくのが現実的ですが、定年退職後も一定金額については投資を継続していくことで、お金の寿命を延ばすことができ、インフレ対策にもつながります。

では、キャッチアップ投資を行う場合に、具体的にどのような商品に投資すればよいのでしょうか。NISAの成長投資枠なら、年間240万円まで、累計1,200万円まで投資可能です。また、投資タイミングに制約がなく、対象商品も幅広いため、以下では成長投資枠を活用する前提で考えてみます。

成長投資枠活用法①:旧つみたてNISA対象商品のみ

1つ目は、成長投資枠ではあるものの、つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の対象商品に投資することが考えられます。

資産形成期間と同様に、世界の株式に幅広く投資できる、低コストのインデックスファンドなどを利用しながら投資していくのです。つみたて投資枠対象商品は、246本(2023年7月31日)に限定されていますので、比較的選びやすいのではないでしょうか。

そして、実際に取り崩して使っていく時期になったら、定期的に購入していく積立投資とちょうど逆で、定期的に売却して取り崩していく、定期売却サービスを利用していくのがおすすめです。
できるだけ高値で売却しようなどと、売却タイミングを図ろうとすると難しくなりますので、基本的には、機械的に売却して取り崩していくのがおすすめです。

成長投資枠活用法②:インカムゲイン目的で上場株式やETF

2つ目は、配当金や分配金などのインカムゲインを目的として、上場株式やETF(上場投資信託)への投資です。

会社員の方で定年退職された後、最近は再雇用などで働き続ける方が増えていますが、それでも定年前と比べると、一般的に収入は大きく減少します。そういった時に、配当金や分配金などの形で定期的な収入があるとうれしいものです。

NISAで投資しておけば、配当金や分配金も非課税(ただし、配当金の受取方式を「株式数比例配分方式」にする必要あり)となりますので、売却して株数や口数を減らすことなく、一定の収入を得ることが可能なのです。

成長投資枠であれば、配当金を得ることができる上場株式、分配金を受け取れるETFやつみたて投資枠対象外の投資信託、そしてREIT(不動産投資信託)も対象ですので、選択肢が広がります。インカムゲインでリタイア後の収入源を増やしていくという考え方になります。

なお、投資信託やREITであれば、実際の投資対象は分散されていますので、自然とリスクも低めになりますが、上場株式の場合は個別性が高く、その分リスクが高くなりますので、できるだけ複数の銘柄に分散して投資していくことが大切になります。

最後に

今回はまとまった資金を10年以内などの比較的短期間で積立投資し、その後は保有していくキャッチアップ投資のシミュレーションと、考えられる投資対象についてご説明しました。

積立期間は5年と10年で計算しましたが、ご自身の状況に応じて、3年や1年などのさらに短い期間で、投資しきってしまうことも選択肢になります。また、成長投資枠を活用しての投資対象は、つみたて投資枠対象商品と、インカムゲイン目的の上場株式・ETF等をご紹介しましたが、どちらか一方を選ぶ必要はなく、組み合わせて投資することも選択肢になります。

つみたて投資枠対象商品に投資するのであれば、そもそもつみたて投資枠でも年間120万円まで投資できますので、2つの枠をうまく併用していただくとよいでしょう。

いずれにしても、今後のライフプランを前提としてお金のため時、使い時を考えながら、NISAをうまく活用していただければと思います。

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筆者の紹介

横田 健一

ファイナンシャルプランナー 株式会社ウェルスペント 代表取締役

大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立し、株式会社ウェルスペントを設立。社名の「ウェルスペント」(英語でwell spent)は、直訳すると「有益に使った」「有意義に過ごした」の意味。より多くの方が、貴重なお金や時間を“ウェルスペント”し、より幸せな人生を送っていただけるようサポートしたい、という思いが込められている。独立系FPとして家計相談やライフプランシミュレーションを行っている。

「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。2023年6月、初の著書「新しいNISA かんたん最強のお金づくり」(河出書房新社)を発売。「ファイナンシャル・ウェルビーイング検定」監修

YouTube:資産形成ハンドブック

X(旧Twitter):@ken1yokota

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