更新日:2025年4月8日
掲載日:2023年9月20日
2024年から新しいNISA(少額投資非課税制度)が始まり、旧つみたてNISAや旧一般NISAの口座開設は2023年が最後となりました。
よく初心者向けといわれる旧つみたてNISAですが、今回は、旧つみたてNISAのメリット・デメリットや注意点、旧つみたてNISAに向く人、向かない人について説明します。
2023年12月末まで新規で投資可能だった旧つみたてNISA制度の概要は次の通りです。
旧つみたてNISA | |
---|---|
対象者 | 日本に住む18歳以上の人 |
口座開設期間(投資可能期間) | 2023年12月末まで |
非課税保有期間 | 20年間(最長2042年まで) |
制度の利用 | 1年毎に「旧つみたてNISA」もしくは「旧一般NISA」を選択 |
投資対象商品 | 長期・積立・分散投資に適した一定の株式投資信託とETF |
買付方法 | 積立投資のみ |
年間投資枠 | 40万円 |
非課税保有限度額(総枠) | 800万円(累計) |
売却可能時期 | いつでも可 |
旧つみたてNISA制度の概要
日本に住む18歳以上の方が利用でき、旧つみたてNISA口座での投資から発生した利益(値上がり益や分配金収入)は最長20年間非課税となります。つまり通常20.315%の税金を取られるところが、ゼロとなるのです。
投資できる商品は、長期・積立・分散投資に適した一定の株式投資信託とETF(上場投資信託)で、246本(2023年7月31日時点)となっています。
最後に、旧つみたてNISAでの投資方法は、定時定額の積立投資のみとなっており、年間40万円まで投資できます。
旧つみたてNISAの主なメリット3つをご紹介します。
旧つみたてNISAでは非課税となる期間が最長で20年間と、旧一般NISAの最長5年と比べて4倍の長さです。
旧つみたてNISAで投資できる商品は上述の通り246本の投資信託・ETF(上場投資信託)に限定されており、いずれも金融庁の基準をクリアした、手数料が一定水準以下の商品のみとなっています。
一般的に日本で販売されている投資信託は4,500本程度(ETF・DC専用・SMA専用を除く)ですから、旧つみたてNISA対象商品という段階でかなり絞り込まれており、選びやすいのではないでしょうか。
投資方法は、毎月など定期的に一定金額を投資していく積立投資に限定されているため、今が買い時か、などと投資のタイミングを見極める必要はありません。いつでも始めたい時から始めればよいのです。
続いて、旧つみたてNISAのデメリットを3つご紹介します。
メリットの裏返しとも言えますが、対象商品は246本に限定されているため、旧一般NISAであれば投資可能な、上場株式、アクティブファンド、REIT(不動産投資信託)などの幅広い商品には投資できません。じっくり個別の銘柄を選んで投資したい、パフォーマンスのいいファンドを探したい、といった方には向かないと言えます。
年間投資枠は40万円と、旧一般NISAの120万円と比べると3分の1となります。年間40万円は、月額に換算すると月3.3万円程度となり、多くの方にとっては十分な金額かと思いますが、さらに金額を上乗せする余力がある方にとっては物足りないかもしれません。
そのように余力がある方は特定口座で投資しておくのが選択肢になります。
投資方法は定時定額の積立投資に限定されているため、好きなタイミングで買いたいだけ購入する一括投資はできません。例えば、ボーナスなどで少しまとまったお金が入ったので10万円だけ買い増そう、といった購入を機動的に行うことはできません。ただし、積立設定の拡張として、事前に「ボーナス設定」をしておけば可能です。
旧つみたてNISAに限る話ではありませんが、旧つみたてNISAもしくは旧一般NISAを利用する際に注意すべき点をご説明します。
旧つみたてNISAでは長期投資での利用が前提ですが、結果的に損失が出てしまう可能性もあります。損失が出た場合、特定口座のような課税口座であれば損益通算や繰越控除が可能ですが、旧つみたてNISAではできません。これは旧つみたてNISAに限った話ではなく、旧一般NISAやジュニアNISAにも共通するポイントですが、ご注意いただければと思います。
旧つみたてNISAは非課税期間が最長20年と長いのですが、20年という期間を考えると、投資を実行した後に、手数料がさらに低いなど、より魅力的な商品が出てくる可能性もあります。
そういった状況であっても、旧つみたてNISA口座で投資した商品を途中で変更することはできません。そのため、商品を変更するには売却することになります。そうなると、その時点で非課税という扱いは終了し、別の商品を買う際には別の口座で買い直すという形になってしまいます。
旧NISA制度では、1年毎に旧つみたてNISAか、旧一般NISAかどちらかを選択して利用する形になっています。つまり、旧つみたてNISAを選択して利用すると、自動的に旧一般NISAは利用できなくなるのです。
旧つみたてNISAのメリット・デメリット、そして旧NISA利用時の注意点についてご説明してきました。
結局のところ、どうすればいいんだ?と迷われてしまう方もいらっしゃるかと思いますが、旧つみたてNISAに向く人、向かない人を思い切って整理すると次のようになると考えています。
旧つみたてNISAが向く人
→長期的に資産形成を目的として投資したい人
旧つみたてNISAが向かない人(→旧一般NISAが向く人)
→できるだけ多くの選択肢から銘柄選びをしたい人や短期的な利益を追求したい人
20代から40代くらいで資産形成を目的として利用される方は旧つみたてNISAが適していると考えていますが、60代以降の方など、配当金や分配金といったインカムゲインを重視する方や5年以内に利益を実現させたいという短い時間軸で投資をしたい方は旧一般NISAの方が適していると言えます。
実際に利用される際は、旧つみたてNISAの仕組みやメリット・デメリットなどをしっかりと確認した上で、利用していただければと思います。
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横田 健一
ファイナンシャルプランナー 株式会社ウェルスペント 代表取締役
大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立し、株式会社ウェルスペントを設立。社名の「ウェルスペント」(英語でwell spent)は、直訳すると「有益に使った」「有意義に過ごした」の意味。より多くの方が、貴重なお金や時間を“ウェルスペント”し、より幸せな人生を送っていただけるようサポートしたい、という思いが込められている。独立系FPとして家計相談やライフプランシミュレーションを行っている。
「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。2023年6月、初の著書「新しいNISA かんたん最強のお金づくり」(河出書房新社)を発売。「ファイナンシャル・ウェルビーイング検定」監修
2025年4月30日に新著「増やしながらしっかり使う 60歳からの賢い『お金の回し方』」が発売!
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