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第193回 「国債暴落」を個人投資家の立場から考える

2013年3月22日

国債と銀行は金融政策の制約か

一般に「アベノミクス」と称されている経済政策パッケージの、特に金融緩和政策に対する批判の一つとして、この政策が国債の暴落をもたらし、国債の暴落が大量の国債を抱える銀行の損失につながり、これが日本経済の危機につながりかねないとする意見がある。

国債の暴落とは、一般に、「長期金利」と呼ばれることの多い長期国債の利回りが上昇することだ。現在、0.6%前後の10年(の残存期間がある)国債の利回りが、たとえば4%に上昇すると、10年国債の価格は約3割下落する。これは、国債暴落といっていいだろう。

では、アベノミクスは国債暴落をもたらすのだろうか。

長期金利は基本的には自由に取引される市場で決まるものであり、将来の動向を予想することは難しいし、まして断言など出来ないが、国債暴落については、短期的には起こらないだろうが、長期的には起こり得るといった理解を持っておくのが適切だろう。

新体制に変わった日銀は、当面、金融緩和を拡大するために、国債の買い入れ額を増やすことと、買い入れる国債の残存年限を長期化することが予想できる。これらは、長期国債の需給を直接改善する要因であり、長期金利にとっては低下要因だ。日銀の総裁・副総裁人事が発表されてから、長期国債の利回りが小幅ながら低下したのは、政府が発表した人事によってこうした予想が強化されたからだ。

長期金利の低下は、投資を喚起し、また株式や不動産などの資産価格の上昇要因でもある点で、デフレ脱却にとってプラスに作用するので、これは、当面の政策目的にかなっている。

一方、将来、たとえば物価上昇率が2%で実質経済成長率が2%、即ち名目経済成長率が4%といった望ましい経済状況が達成されると、長期金利は4%程度であっても全くおかしくない。つまり、アベノミクスが十分に目的を達したあかつきには、国債暴落が起こる公算はかなり大きいということになる。

それでは、金利が上昇すると、銀行システムにはどのような影響が出るのか。

昨年10月に日銀が発表した「金融システムレポート」では、銀行の国内債券投資に対するリスク量は、「全年限の金利が1%上昇した場合」に、大手行で3.7兆円、地域銀行で3.0兆円、信用金庫で1.6兆円と試算している(合計8.3兆円)。3%の金利上昇ともなると、日本の銀行システムに、20兆円以上の損失効果が発生することになり、中には破綻する銀行があってもおかしくはない。

但し、「景気が良くなって、金利上昇が起こる」ということなので、銀行が保有する株式や不動産の価格も上昇するし、融資先の経営内容の改善や、銀行のビジネス自体の利益拡大にもつながることなので、多くの銀行が破綻するというような事態には至らないだろう。

資金の運用が債券投資に偏っていた銀行、特に金利リスクの大きな運用をしていた銀行(傾向として、地域銀行、信用金庫に多い)が幾つか破綻する可能性がある、というくらいに考えておくことが現実的だ。

もっとも、「銀行破綻を起こさないために、経済を望ましい状態に持っていくことができない」ということなのだとすると、これは本末転倒だ。修正する必要があるのは、経済政策の方ではなく、銀行経営の方だ。後者は、政策論的には、金融監督の問題であり、金融庁と日銀が共に取り組まなければならない重要なテーマだ。

また、銀行が潰れない金融システムが良い金融システムなのではなく、経営が失敗した銀行を整然と潰しつつ経済への悪影響を限定できるシステムこそが、良い金融システムだ。

いずれにせよ、民間銀行の経営が、日本経済全体の成否を質に取るようなことがあっては良くない。

ついでに、はっきりいうと、十分起こりうる程度の金利変動に対応できない銀行は、あらかじめ何らかの形で整理されるべきだ。また、独自の判断で融資が出来ず、集めた預金の大きな部分を国債運用に回す銀行が、社会的に期待される金融業への役割期待を十分に果たしているともいいがたい。

とはいえ、現実にそのようなリスクがあるなら、投資家も対応を考えておく必要があろう。

長期金利上昇はどのように起こるか

仮に長期金利上昇が起こるとすると、それは、どのように起こるのだろうか。

論理的な可能性は二つある。

一つは、日本の財政全体が信用を失って、国債デフォルトの可能性が長期金利に織り込まれる「信用リスクによる長期金利上昇」であり、もう一つの可能性は、前述のような、景気が回復して物価が上昇するようになった場合の「経済の成功による長期金利上昇」だ。

日本の財政については、「危機的状況」が喧伝されることが多い。しかし、たとえばユーロ圏の経済危機の深刻化などで市場が「リスク・オフ」(リスクを減らそうとする動き)に向かった時に、円高になり、日本国債の利回りが低下することから見ると、日本政府の債務に対する世界の金融市場の評価は、現在、相対的に高い状況にあると理解するのが素直な見方だろう。

もちろん、一般に「政府」というものは長期的に信用できるものではないし、日本政府もその例外ではないと思われるが、インフレ率も成長率も上がらぬまま国債の利回りだけが上昇していくような状況は当面考えにくい。

たとえば、物価が上がらぬまま長期国債の利回りが上昇するなら、年金基金も保険会社など、長期の負債を抱えている主体は、喜んで国債を買うだろう。

一方、経済成長率が高まって、物価が上昇し、将来の物価上昇を織り込むような形で起こる長期金利の大幅な上昇(即ち国債暴落)は、一気に起こるものではないとしても、向こう数年以内に起こってもおかしくないと筆者は考えている。

率直にいって、日本の経済が今後「バブルっぽく」なる可能性は小さくない。将来経済に悪さをするようなバブルは困るが、ある程度まではバブル的な経済活動の活性化を後押しすることが、アベノミクスが有効に機能するための手段でもある。

個人の備え方

では、名目経済成長率の高まりによって起こるかも知れない国債暴落に、個人はどう備えたらいいのだろうか。

「国債暴落!」というと、多くの人がイメージする対策は、外貨預金のような外貨建て資産ではないだろうか。

しかし、アベノミクスの初期にあって、経済が望ましい方法に動くためには円安が必要だが、日本の経済が望ましい状況(マイルドなインフレ+高成長)になり、長期金利までが上昇した場合、為替レートは一転して円高に向かう可能性がある。

たとえば、今後、為替レートがさらに円安に動いた場合、これを見て確信を抱いて外貨リスクを積み増す投資家が今後出てくる可能性があるが、こうした投資家は、将来、大きな損を作る可能性があるだろう。

アベノミクスの初期の時点で外貨のリスクを(円安方向への賭けで)取ったり、円安によってもたらされる株価上昇を期待して投資したりすることは悪くない。しかし、特に外貨リスクをいつまでも大きく取り続けているのは危険だ。

問題は、時期で「いつまで」、あるいは為替レートで「いくらまで」なら大丈夫なのかを自信を持って当てることは、誰にとっても難しいことだ。マーケットでは、多くの参加者が「こうなるだろう」と予測する将来の状況が一致すると、その状況が直ぐに現在の価格に織り込まれてしまう。

現段階では、「政府も日銀も円高になると困るから、そうなった場合は何らかの追加的な手段を講じるだろう」と予想することができ、筆者もそう思うが、市場の大半の参加者がそう思うなら、その予想は、現在の為替レートにも株価にも既に反映してしまっているはずだ。

この場合、今後の市場価格の動きに影響するのは、現在知られていなくて将来発生する情報、つまり予測の難しい情報だ。

株式の場合は、利益成長率が長期金利の上昇を上回る改善を見せるなら、長期金利が上昇する中でも高いリターンを上げ続けることが可能だ。この点で、外貨投資の為替リスクを取るよりは、名目成長率が上昇することで起こる長期金利上昇には強いだろう。とはいえ、金利上昇はそれ自体としては株価の下げ材料であり、また長期金利の上昇が、金融政策の引き締めへの転換を呼ぶ可能性があり、金融引き締めは株式投資の敵だ。

不動産は、家賃をスピーディーに上げていくことが、好調企業が利益を伸ばすことよりも難しいので、長期金利が上昇する局面では損をする可能性が小さくない。

また、現物の不動産投資は、他の投資対象と比較して、売りたい時に買い手を見つけるのに時間とコストが掛かり、流動性の点で難がある。不動産運用に参加するなら、REITがよりいいように思うが、インフレ率が上昇し、長期金利も上がるような局面では、値崩れする公算が大きい。ポジションを逃がすタイミングには、常に気を遣う必要がある。

安全資産の中では、既に低金利でもあり、相変わらず、普通預金、MRF、個人向け国債の10年満期・変動金利型、といいたいところだ。

しかし、日銀の金融システムレポートを読むと、「債券投資のリスクが大きい銀行の預金にはリスクがある」と考えざるを得ない。預金については、銀行を選ぶ必要があるということだし、「一人、一行、一千万円まで」という預金保険のカバー範囲を強く意識することが重要だ。

「10年・変動」の個人向け国債は、将来長期金利が大幅に上昇して、長期国債が暴落するような事態になった場合、二回分の利払いを払って元本で償還できるという強力な「金利上昇への保険」がついている。従って、国債暴落に特に強い商品は、実は個人向け国債だという、多分大方の人にとっては意外なことがいえる。

もっとも、国債暴落が、日本国債のデフォルトリスクを反映したものであり、現実にデフォルトが起こるような状況になれば、個人向け国債も安全な商品とはいえないのは当然のことだ。但し、この場合、預金も含めて、金融資産の価値は総崩れになるので、他の金融資産が個人向け国債よりも安全だというわけではない。

但し、先にも記したように、「信用リスクによる長期金利上昇」の可能性は、当面、大きなものではないように思われる。

好景気で長期金利が上がる状態は金融政策が、緩和から引き締めに変わる状況である。いざ引き締め過程に入ると、株式も、債券も、外貨投資も、何れも損をする公算が大きい。この場合、仮にインフレ率がプラスであるとしても、金融資産の中では、現金ないし、現金に近いものがベストな置き場所になる状況がやって来る公算が大きい。

この時の合い言葉は「キャッシュ・イズ・キング」だ。願わくは、その時が来るまでに、ビジネスや投資で大いに儲けておきたいものだ。


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