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第159回 60分で説明するアセットアロケーション

2011年10月21日

持ち時間60分で何を伝えるか

今回は、「60分でアセットアロケーションの要点を伝える」という課題を考えてみたい。実は、筆者は、ある教育機関でインターネット配信する動画の形で、ざっと60分の持ち時間でアセットアロケーションを伝える番組を来週収録しなければならない。60分は、ある程度オーバーしても構わないのだが、番組があまり長くなると、受講生にとって負担が重くなる。なるべく時間を超過しないように構成したい。

視聴者は主にビジネスパーソンで、自分の費用と時間で勉強する気持ちのある真面目な人達で、収録はテレビのスタジオのような場所で行われ、女性のアナウンサーが進行役でつくが、ほぼ私が一人で授業を行うように進行することになる(掛け合い形式の台本を作ることは可能だが、事前に打ち合わせる時間がないので、現実的ではない)。

全体で10数回に及ぶ運用入門の講座1コマで、筆者が数回担当する中の1つなのだが、この回の構成が断然難しい。

実践的であることを標榜する運用入門講座なので、一般ビジネスパーソンである視聴者が自分でアセットアロケーションが出来るようになる必要がある。リスク(標準偏差、分散)とリターンの意味と計算方法については既知としていいが、機関投資家が通常用いるMean Variance法を各自が独力で出来るようにする、とうのは現実的でない。筆者は、企業年金の担当者を対象に、エクセルの使い方も含めたアセットアロケーション入門講座を開いたことがあるが、参加者が独力でワークシートを作って最適ポートフォリオを計算できるようにするには、数時間かかった。受講者がFPならこの程度のレベルまで引き上げる必要があるが、今回は一般ビジネスパーソンが対象なので、何らかの簡便法を考えなければならない。

一方、簡便法だけを教えると、アセットアロケーションのどこが難しいか、また、簡便法が何を簡略化したものなのかが分からないだろう。この辺りが悩み所だ。

出だしの5分

授業はスタートが肝心だ。テレビ形式での授業では、とりわけそうだろう。最初の5分で伝えるべき事は、第一にアセットアロケーションの重要性であり、第二に授業全体の構成だ。特に、今回は、前半に難しい話をして、後半に簡便法を説明する構成にするので、話の全体像をあらかじめ伝えておかないと、受講者が途中で脱落する心配がある。

断片的だが、受講者に伝えるべき内容を、台詞にすると、以下のような感じになる。

「アセットアロケーションは、通常、運用パフォーマンス全体の8割から9割を決定づけるとされる、非常に重要なプロセスです。」

「アセットアロケーションの基本的なやり方は、100兆円以上の資金を運用する公的年金でも、一個人の数百万円のお金の運用でも同じです。どちらも、たとえば、株式の『期待リターン』や『リスク』、株式と債券とのリターンの『相関係数』などを推計しなければなりませんが、それは簡単ではありません。」

「今回の講座では、一般の個人が電卓を使わなくても計算できるくらいの簡単さの『簡便法』をお伝えしますが、簡便法が、より厳密な方法と較べて何を簡略化しているのか意味が分からなければ、これを現実に用いる上で心配があります。
従って、今回の講座では、前半に、アセットアロケーションの一般的な枠組みを駆け足でご説明して、その後に、厳密な方法とどこが違うかを明確にしながら、簡便法を説明します。
前半の話は一回聞いてその場でマスターするには難しいかも知れませんが、一般的なアセットアロケーションの方法の『流れ』を掴んで頂けたら、それで十分であり、細かな計算を追う必要はありません。
後半の簡便法を楽しみに、気楽に聞いて下さい。」

前半の30分

先ず、複数の資産を組み合わせた時のリスクの計算方法を説明しなければならない。また、アセットアロケーションは、ポートフォリオの期待リターンとリスクからポートフォリオの効用を計算する「効用関数」を最大化する形で行われるので、この枠組みを簡単に説明する。

一般的な数式を見せただけでは受講生が理解した気分にならないだろうから、2資産で標準偏差が共に20%、これを半々に組み合わせたポートフォリオについて、相関係数を変えて分散投資の効果の変化を計算してみせることにする。

次に、実際の計算に近づけるために、3資産のアセットアロケーションを少し現実的な数字でやって見せて、これをエクセルのワークシートにするための基本的な構造をあっさり説明する。

リスクとリターンと効用を計算できるワークシートを作って、効用を最大化するようにウェイトを決める、というアセットアロケーションの基本的な流れを理解して貰う。機関投資家のアセットアロケーションも基本的な流れは同じであることを説明すると、やる気のある受講生は、自分でワークシートを作ろうとするかもしれない。

(図1)ワークシートの構造説明

(図2)エクセル・ソルバーによる最適化計算の説明図

アセットアロケーションで難しいのは、「期待リターン」の推計をはじめとする、インプットの数字をどう作るかだ。理論が難しい訳ではないし、より複雑なモデルを作ったとしても、前提となるインプットが曖昧なままでは、複雑化にメリットがない。

こうしたことを説明した後に、リスクやリターンの現実的な数字の見当や、数字自体が変動しやすいこと、しかし、小さな変動に対しても、計算でもとめられるポートフォリオは少なからず変化することなどを伝えなければならない。

数字は、過去のデータから計算したものを使うよりも、敢えて大まかで計算しやすい数字で説明する方が、アセットアロケーションは主観的に行われるプロセスであることが伝わっていいだろうし、将来、データが変動した時にも、応用が利きやすいだろう。

あらまし、以下のようなことを伝える。

リスクについては、以下のような内容を紹介する。

  1. 「国内株式(TOPIX)」、「先進国(外国)株式(MSCI-KOKUSAI)」のリスク(標準偏差)は、15%から20%くらいの間で変動する。
  2. 「新興国株式(MSCI-EM)」は25%前後のリスク。
  3. 「株式」と「債券」は“景気”に関して逆に反応するが、内外ともに明確なマイナスの相関が期待できるほどではない(保守的には、両者・内外共に相関係数はゼロ)。
  4. 「国内株式」と「先進国株式」、「新興国株式」は近年連動性が大きく、相関係数は0.7程度に上昇している。
  5. 「国内債券」と「外国債券」の相関係数は金利変動を通じて緩く連動し相関係数は0.2程度。
  6. 「外国株式」と「外国債券」は相関係数は為替レートが一緒に動くので0.4程度。
  7. リスク(標準偏差)も相関係数も計測時期によって異なる。使用する数値は、最終的には、分析者の判断による。

期待リターンについては以下のような感じだ。

  1. 期待リターンはモデルによる予測を使う方法と「鉛筆を舐めて決める」方法がある。現実に多く用いられるのは後者。
  2. リスクに応じて「リスク・プレミアム」を積み上げる「ビルディング・ブロック方式」と呼ばれる方法がよく使われる。
  3. 株式(先進国)のリスク・プレミアムの大きさには多々議論があるが「5%~6%くらい」という意見が学者・実務家の間では多数説。
  4. 手数料も考えると、個人投資家は、現在、「国内株式」「外国株式(先進国)」で5%、「新興国株式」で7%くらいのリスク・プレミアムを見込んでもいいのではないか(個人的見解)。
  5. 期待リターンの予測はリスクよりもさらに難しい。使用する数値は、最終的には、分析者の判断による。

ここで述べた数値を使って実際にワークシートを作ってみて、具体的なアロケーションを計算してみるところまでを見せて、前半を終了する。

話としては、相当に盛りだくさんになるが、これをしつこくなく、スッキリと説明しなければならない。

簡便法と厳密な方法の関係

簡便法は、以下のような流れの簡便法を紹介する。

<アセットアロケーションの簡便法>

  1. 家計を把握・分析して「1年間で損をしてもいい額」を決める。
  2. 上記の額から逆算してリスク資産に投資できる上限比率を決める。
  3. 上限比率以内でリスク資産への配分割合10%単位の変化に対応するリスクと期待リターンの表の中から「最も居心地よく感じる点」を選ぶ。
  4. リスク資産の中身は「あらかじめ作ってある効率のよい組合せ」のワンパターン。

筆者が過去に使った方法でいうと「超簡単お金の運用術」(朝日新書)をもう少し丁寧にした感じだと思って頂けると、イメージに近い。

ただし、補足として、特にビジネスパーソンで健康で定職に就いている人の場合は、「人的資本」の価値が大きいので、「リスク資産の上限比率」はかなり高い場合が多いことを付け加えておくべきだろう。

この部分の準備に関しては、それほど心配な点は無い。

説明上のポイントは、この簡便法と前半で紹介した厳密な方法との関係だろう。あらまし以下のような図を用いて、説明したい。

(図3)エクセル・ソルバーによる最適化計算の説明図

厳密な方法による「最適解」と、(1)リスクの上限を決めて、(2)その中の点のリスクと期待リターンの組合せを評価して選ぶ、「二段階法」とでも呼びたい簡便法との結果が、そう大きくは違わないこと、また、厳密な計算による最適解もインプットの正確性が保証されない以上、それを「厳密」と言うには問題があること、などが十分に伝わるといい。

説明が上手く行くかどうか自信は無いが、こうした流れで一度説明してみたい。


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