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第119回 アクティブ・ファンドへの個人的な思い

2010年2月5日

(1)インデックス・ファンドの対談で

先日、「投資信託にだまされるな!」(ダイヤモンド社)の著者、竹川美奈子さんとインデックス・ファンドへの投資をテーマに対談した。対談は、後日、楽天証券のホームページに掲載される予定なので、詳細はそちらをご一読いただきたい。

対談では、インデックス・ファンドのメリットとして、(1)分かりやすさ(特に過去のデータの検証が容易)、(2)行き届いた分散投資(目標とする指数によるが、おおむねよく分散されている)、何といっても(3)手数料の安さ、を挙げた。アクティブ・ファンドに対しては、(A)運用成績の平均がインデックス・ファンドに劣り、(B)どのファンドの運用が優れているか「事前」には分からないので、(C)高い手数料を払ってまでアクティブ・ファンドを買える理由はない、と言った。どのように文章化されているか分からないが、これは、私の意見というよりも、事実なので、他に言いようがない。

対談の終わり頃、聞き手役のライターさんに「元ファンド・マネジャーとして、アクティブ・ファンドに対する個人的な思いのようなものはありますか?」と質問された。その場で思い出を語ったわけではないが、この言葉をきっかけに、アクティブ・ファンドを担当していた頃の自分の運用を思い出した。

(2)私のアクティブ運用経験

私が一担当者としていくつかのアクティブ・ファンドを担当していたのは、1986年から1991年だ。年齢にして27歳から33歳の頃だ。

最初に担当したファンドは、バランス型の投資信託だった。国内債40%、国内株式40%、外債10%、外国株10%くらいのアセット・アロケーションを標準とする公募の投資信託だった。この時の運用戦略は、外債を多めに(20%くらい)買うことと、日本株部分については一般のファンド・マネジャーが好む人気銘柄をアンダーウェイトすることだった。最近、個人投資家の運用で外債は不要だと述べることが多いので、私は「外債嫌い」だと思われることがあるらしいのだが、運用にあっては実は外債好きなのだ。

ただし、「高金利のインカム収入を狙って為替リスクを我慢する」というような当時の生命保険会社のような運用をしていたのではなく、為替を将来の金利分も含めたフル・ヘッジにして長期債と短期金利の金利差を取りに行きながら金利低下のキャピタル・ゲインも狙うというのが当時の戦略だった。これらの戦略はなかなか上手く行って、同時期に設定された他社の投資信託数本との比較で(新聞には横並びで基準価額が載っていた)10%以上の差を付けることができて、ファンド・マネジャーとしては気分のいいスタートを切ることができた。この頃、設定時期の異なる同種のファンドを合計3本運用したが、結果は悪くなかった。

次のアクティブ・ファンドはある外銀の年金資金の一部を預かって日本株で運用するファンドだった。ベンチマーク(TOPIX)を上回るリターンを目指す標準的なアクティブ・ファンドだが、ベンチマークに対するリスクをコントロールしながら、外国の顧客に説明の付く運用をしなければならなかった。この時に使った戦略は、アーニング・サプライズ(正確には収益予想改訂のサプライズ)とネグレクティド・ファーム・エフェクト(Neglected Firm Effect;無視されている銘柄のリターンが高い現象)を組み合わせたストック・ピックでプラスα部分を作り、これを組み込みながら、ベンチマークに対するリスクの小さなポートフォリオを最適化計算で作るといった運用戦略を使った(詳しくは拙著「ファンドマネジメント」金融財政事情研究会、の第16章をご参照下さい)。

これもなかなか上手く行った。計算通り、あるいは計算以上のアクティブ・リターンを4年間(後半は担当者が交替したが、運用のレシピは同じ)毎年安定的に稼いでくれた。東証二部や地方単独上場銘柄も含めて、地味な小型株を組み込みながらTOPIXに対する推定トラッキング・エラー(相対的なリスク)をコントロールする一風変わったポートフォリオだった。

マルチファクター・モデルと呼ばれるツールを使ってポートフォリオのリスクを計測したり最適化計算を行ったりするのだが、ストック・ピック(個別の銘柄選択のこと)のプロセスは人間が手作り的に判断している。コンピューターをかなり使うので、これをクオンツ運用だと称する人もいたが、私は「クオンツ」であるかないかはあまり本質的なことではないと思っている。コンピューターなりソフトウェアなりは単なる道具であって、運用の思想や戦略ではない。プロのファンド・マネジャーは、ポートフォリオのコントロールのためには、こうしたツールを自分で使いこなす必要があり、これができないファンド・マネジャーは単にスキルが劣るだけのことだ。もっとも、このスキルは期待リターンの大きな高低に影響を与えるようなものではないので、こうしたスキルがなくても、ファンド・マネジャーとしての「ごまかし」は利く。

この運用方法は機関投資家の運用としてはなかなか具合が良かった。TOPIXに対する推定リスク(年率標準偏差%)の2倍以上のアクティブ・リターンが出ることが多かったし、マルチファクター・モデルのポートフォリオ分析機能を使って分析すると、銘柄選択効果の貢献が大きく出て見栄えが良かった。

信託銀行のファンドトラストの枠組みでこの方法を使った運用をセールスして、3件ほどファンドを受託した。うち2件は実際に運用を開始してまずまず期待通りの結果が出た。もう1件は「マーケットの環境が悪いから、しばらく運用スタートを見合わせましょう」と顧客にアドバイスして株を買わないままキャッシュで返した。その間平均株価は下がったので、結果的に、顧客にとって良かった。マーケット・タイミングそのものに関するアドバイスをするのはファンド・マネジャーにとってリスキーな行為であり、ある意味では過剰な親切だったが、幸い「結果オーライ」だった。

90年代に入って、年金合同口(信託銀行のファンドで複数の顧客の資産をまとめて運用する)の株式運用を担当した。

この時にも、このストック・ピックの方法は使ったのだが、運用金額が大きくなってきたこともあり、マルチファクター・モデルを使ったバリュー投資(割安株投資)を併用した。最初に担当したファンドは300億円くらいの残高のファンドだったが、確か300くらいの銘柄を持っていた覚えがある。もちろん、アクティブ・ファンドであり、勤務先の信託銀行の合同口の中では一番アクティブ・リスクが大きかった。「銘柄数が100を超えるとほとんどインデックス・ファンドだ」というようなことを言う人(素人投資家や学者や時にはプロも)がいるが、嘘である。このファンドも2年担当したが、ベンチマークに負けた年はない。

翌年になって、600億程度の資金を投入する大型のファンド(年金信託合同口)を設計した。今度は、リターン・リバーサル(過去の相対的なりターンが劣る銘柄の将来の相対的なリターンが高い現象)とバリュー効果の組み合わせで運用するものだった。リターン・リバーサルは回転率を考えて2カ月程度(複数の期間を合成した)のリターン・リバーサルになっていたはずで、各銘柄のβ値の効果を調整したリターンのリバーサル効果を計算していたと思う(記憶が曖昧だ)。

基本的に毎月リバランスするのだが、リターン・リバーサル効果とバリュー効果の合成の具合はマーケットの様子や売買コストを見ながら配合を変えていた。

このファンドも対ベンチマークでは上手く行った。私が信託銀行を辞めて、ひきついだ担当者が上手くやってくれて、その後何年か好結果が出て、資金が集まって大きくなったと聞いている。

振り返ってみると、それほど長期間、運用担当者をやっていたわけではないが、色々な戦略を試して、ベンチマークに負けた年がなかったのは、幸運だった。決して、自分のアクティブ運用で嫌な思いをしたことがあったから、今になって「インデックス・ファンドがいい」と言っているわけではない。

もっとも、自分の運用がベンチマークに負けていても全くおかしくなかったと思っているし、また運用したらベンチマークに勝てるだろうと思っている訳でもない。再び運用するチャンスがあれば、ゲームに勝とうとして頑張るだけだ。

(3)アクティブ・ファンドに期待すること

私は、現在ベンチマークとしてインデックス・ファンドに利用されている株価指数がポートフォリオとしてベストであり素晴らしいと思っている訳ではない。

一般論として、ではなく、個別の状況にあってアクティブ運用にも十分な可能性があると考えている。ただ、その可能性を試してみるとしても、アクティブ運用の投資信託が平均的に取る年率1.5%といった信託報酬は明らかに「取りすぎ」であり、ビジネスとしていささか「品がない」と思っている。

インデックスを改良するという運用改善の方法もあるが、アクティブ運用を安価に提供する方が本来は自然ではないだろうか。ファンド・マネジャーにかかる負担も、必ずしもアクティブ運用の方が大きい訳ではない。運用会社内のリサーチを実のところ利用しないファンド・マネジャーも多いし(私もその一人だった)、利用したからといって運用成績が改善するものでもない。インデックス運用の方が、銘柄数が多くなるから、システム的な負荷も大きい。

アクティブ運用のフィー(手数料)がかくも高いのは、一重に運用業界側の商売の都合だ。大衆向けのアクティブ運用の価格破壊を期待したい。


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