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第154回 一般生活者が応援株主となる経済や社会

2013年2月18日

企業なかりせば、われわれの日々の生活はない-逆も、真なり

経済や社会は、そこに住む人々の生活で成り立っている。そして、人々の毎日の生活をエネルギーや物資の供給で支えてくれているのが、企業のビジネス活動である。

いってみれば、生活者や消費者と企業とは紙の表裏の関係にあって、切って切り離せるものではない。このふたつが両輪となって、経済や社会が構成されるわけだ。

ところが往々にして、そのふたつが対立関係となってしまう。企業はともすると儲け第一主義に走り、消費者から利益をむさぼろうとする。それをみて、生活者が企業を敵とみなすこともしばしば。

これでは、良い社会を築いていくなど絵に描いたモチである。やはり、生活者つまり消費者と企業との間には、お互いを信頼し尊重し合う、しっとりとした関係が築かれなければならない。

そこで鍵となってくるのが、企業の所有者である株主の価値観である。消費者は企業が暴利に走らない適正な価格で、商品やサービスを提供してくれることを望む。それを、企業の株主がどこまで受け容れるかだ。

一般的に、企業の株主は業績を向上させ株価を高めることを経営者に求める。あるいは、たっぷり儲けて配当金を増やせと企業に迫る。

企業の利益はどこから来るかというと、ほとんどが消費者の財布からである。最近のアップルのように万人が買いたくなるような製品を世に出せば、消費者も財布をはたくことに躊躇しない。しかし、企業利益のかなりの部分は、いかにして消費者からしぼり取るかで決まってくるのが現実。

片やどんどん儲けてやろうで眼をギラギラさせ、片や稼がれまいと守りのガードを固くする。これでは、企業と生活者や消費者との間で、しっとりとした関係を築いていくなど望むべくもない。

また企業によっては、徹底的にコストを削り落とすことで利益を捻出しようとする。コスト削減の最たるものは、雇用を切ることと投資の抑制である。株主の圧力で過剰なまでの経営のスリム化に走らざるを得ない企業も多い。

富と雇用を創出し、将来社会を築いていくための投資を積極的に進めるのが、企業の社会的な役割である。ところが、利益利益とそればかりに走ると、企業の社会的な存在理由そのものを否定しかねない。

生活者や社会があってこそ、企業は持続的な発展ができることを片時も忘れまい。

機関投資家の限界

運用のプロを自認する機関投資家だが、もとはといえば一般生活者のお金を預かって運用するのが仕事である。ところが、その運用にあたっては生活者や社会のことはそっちのけで、とにかく成績数字を高めることが期待される。

ここに機関投資家の限界がある。本来ならば年金にしても保険にしても、生活者の資金を本格的な長期投資に向ける役割を果すはず。その目的は、長期スタンスの資金を経済の現場に投入してやって、より良い社会や世の中を築いていくことである。

長期投資で経済の拡大発展に貢献すれば、経済のパイが大きくなった分け前として、運用のリターンも後からついてくる。間違えても運用成績の追及が先ではない。

現実は、年金をはじめとして機関投資家運用の大半が、ただただ運用成績を出す競争に追いまくられている。それも、毎年毎年の成績が問われる資金運用に明け暮れているのだ。

そのしわ寄せが、企業をして四半期決算に汲々した経営を強いるは、株主利益の最大化に追い立てるはで、持続的な成長どころではなくなってしまっている。

この30年あまり、年金という巨額資金の運用を中心とした世界的な機関化現象の進展が、企業経営をやたら短視野化させてきた弊害は眼に余るものがある。それでも、企業は機関投資家という巨大な株主の意向に抗うことは許されない。

さらに問題なのは、年金資金が運用会社に「とにかく成績を上げろ。さもなくば、運用資金を引き揚げるぞ」と迫ることだ。それぞれの運用担当者は、「なにがなんでも毎年の成績を出さなくては、ビジネスを失ってしまう」で追い立てられる。それはそのまま運用の現場で「とにかく成績を出せばよい。後は野となれ山となれだ」の論理が支配的となるのは避けられない。

これは、完全に部分最適の追求であり、投資運用本来のありようから大きな逸脱である。年金をはじめとして機関投資家の巨額資金が、いろいろな運用現場で無節操に成績数字を追いかける自分最適化に走ると、経済全体はどうなるのか? そこに住む人々の生活はどうなるのか?

どんな運用をしても構わない、とにかく成績数字を出せば良いという部分最適の追及を、年金運用は止めようとしない。それどころか、もともとの資金の出し手である個人の生活や社会の全体最適を一顧だにしない。どう考えても機関投資家の限界というしかない。

企業経営の立場からも、いかに機関投資家とはいえ短期視野の利益追求と株価上昇をやたら求められるのは、いい加減にしてくれだろう。それでいて、一時的にしろ業績が悪化すれば容赦なく売ってくる。

企業の長期的な成長戦略をじっくり応援してくれる、まともな機関投資家は世界的にみても絶滅危惧種になってきているのだ。

生活者株主という価値観

われわれ一般生活者が、預貯金に寝かせてある資金の一部でも長期投資にまわしたら、世の中どうなるのだろう? 機関投資家に代って生活者が、自分の資金を自分の意思と意欲で経済の現場へまわしてやるのだ。

長期投資にまわすといっても、やることは簡単。だが、その意義は大きい。企業あってこその、毎日の生活である。だったら、生活者からみて絶対になくなってもらっては困る企業を応援するのは当然だろう。生活防衛のためにも、企業を応援するのだ。

応援にはふたつある。毎日の生活消費で、これはと思う企業の売上げに貢献すること。そして、株価が売られて安い時には、積極的に株主となって経営を応援することだ。後者は今後とりわけ重要になってくる。

相場暴落時や不況時など株価全般が売られて安くなっている時は、どんな株主が新たに登場してくるか知れたものではない。せっかく生活者にとって好ましい経営をしてくれていた企業でも、新しい株主が目先の利益追求に走らせでもしたら、毎日が実につまらないことになる。

それが嫌だったら、われわれ生活者が株価が安い時にはどんどん株を買って、強欲株主の登場をブロックすればいい。株価を買い支えるというよりは、生活者が応援団として続々と集まってくるイメージだ。うまい具合に、相場暴落時や不況時は株価も安いから、長期投資の買いを入れるには絶好のタイミングである。

まして、自分たちの生活に欠かせない、つまり毎日の売上げに貢献している企業の株を買うのだ。なにがあっても潰れっこない投資対象である。なんの不安もなく、どんどん応援買いを入れられる。

企業からみれば、生活者投資家の登場は、ただ単に機関投資家に代る存在というよりも、はるかに重要な意味をもってくる。なにしろ、応援株主として株価が安い時ほど積極的に買ってくれるのだから。

機関投資家であれば運用成績しか考えないから、業績悪化や景気の落ち込みを嫌気してすぐ売ってくる。そういった時に応援株主として登場してくる生活者投資家は、どれほど企業にとって有り難いことか。

新しい文化をつくろう

今年から、いよいよ本格的に「生活者投資家という考え方」を広めていきたいと思う。とりわけ企業城下町といわれるところでは、工場の存在が地域住民にとって生活の基盤であり、長期の財産づくりの一番安心できる対象となるのだから。いってみれば、生活者投資家と企業とは運命共同体の関係にあるのだ。

自分たちにとって大事な工場であり会社だ。ゆっくりでいいから成長し続け、末永く繁栄してもらいたい。大切な工場をみなで力を合わせて守り育てたいと願うのは、地域住民だけではない。出入り業者さんや関連会社そしてその家族だって、だれもが同じ価値観を持っていいはず。

だったら、みなで「おらが町の企業」の熱烈なる応援株主になればいい。目先の利益計算しか考えない機関投資家や一般投資家が売ってきたら、片っ端から買ってやるのだ。状況が好転して彼らが買い群ってきたら、しばらくは応援を彼らにまかせようと、保有株を売り上がって利益確定する。そして、次の応援場面を待ち構えよう。

これが本物の長期投資であり、この単純作業の繰り返しで自分年金づくりができてしまう。同時に、自分達の生活を自分達で守ることができるのだ。

経済活動や社会の大半を構成している生活者と企業とが、しっとりとした持続性の高い関係を築き上げるのだ。これほど安心できて、皆が大切にできる仕組みはないだろう。まったく新しい文化を創っていくことになる。

(2013年1月10日記)

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