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第114回 成熟経済日本の成長戦略

2010年5月17日

日本経済の地力を削いでいるものは?

コモンズ投信の渋澤さんが米国のルース大使と会談した時、「眠れる獅子は、いつ目覚めるのだろうか」と尋ねられたとのこと。海外からみて、日本経済の混迷とジリ貧が20年も続いているなんて、またそれを克服しようとする意思や意欲がさっぱり感じられないなんて、どうにも理解できないようだ。

これはルース大使に限ったことではなく、同様の疑問というか不可思議さは海外の人とのいろいろな会合でしばしば話題にのぼる。やはり、40年にわたって世界の運用市場に身を置いてきた経験からも、日本経済がどうしてこうもダラシない状態に甘んじなければならないのか、さっぱり理解できない。

ここで政治の混乱や官僚統治国家の限界とかを持ち出すのは簡単だが、果してそれだけの問題なのだろうか? もちろん、日本の指導層が10年20年先までの国家運営ビジョンと具体的な道筋を明確に打ち出し、断固たる覚悟で政治にあたってくれれば、日本経済は5年もすれば蘇ってしまう。それだけの経済的地力は十分にある。だが残念なことに、日本は持てる国力を時間とともに削ぎ落とすばかり。

官僚主導による省益優先政治の弊害だって、政治がだらしないだけのこと。政治家が政策立案力を高め、硬直的な中央集権構造や事なかれ主義を一掃してしまえば済む話。官僚だって政治家がもっとしっかりしてくれれば、その指図の下に本来の実力を存分に発揮したいところ。

そうはいうものの、族議員と呼ばれる利益誘導型の政治家を、相も変わらず選んでいるのは国民である。いくら政治家の資質に問題があるといったところで、いざ選挙となると目先の利益をちらつかされた公約に引っ張られて、旧態依然たる政治家に投票してしまう。日本は曲がりなりにも民主政治が確立している。そこで選出される政治家の多くが地元への利益誘導型という現実は、国民の多数が日本経済の抜本的立て直しよりも、ジリ貧に甘んじることを選択していることになる。

ユデガエルになる前に

利益誘導型の政治も、高度成長が続き経済のパイが拡大している間はいくらでも地元民の期待に応えられる。そこへ日本では、郵便局という世界最大の集金マシーンで、第2の予算ともいわれる財政投融資制度を築き上げてきた。政府や中央省庁は国会承認を必要としないで、巨額の資金源をそれこそ我がもの顔にできた。戦後の保守政治が安定していたのも、選挙区を意識した利益分配が行き届いていた点が大きい。

族議員や高級官僚の天下りがばっこし、既得権益擁護でガチガチに固められた日本の政治体制でも、国民の多くはこれといって不満も不都合も感じなかった。長期の経済成長によって国民全般の所得は増加の一途だったし、財政投融資などによる公共事業でも地域経済をたっぷりと潤したから、みなが鷹揚だった。

しかし、バブル崩壊後は状況が一変した。日本経済の成熟化と、地価や株価下落がもたらした資産デフレとで、経済のパイが急収縮した。利益誘導型の分配をしようにも、その原資が十分に確保できない。それでも無理な予算拡大を重ねたから、財政赤字は先進国で最悪の水準にまで急拡大した。国の借金である国債発行残高も国内総生産(GDP)の2倍ほどにまで膨張してきている。

かつては地方へふんだんにバラ撒かれた公共事業費だが、どんどん削減される一途。そのため、地方経済はみるみる活力を失っていき、ますます国への依存度を高めるドロ沼にはまってしまった。

ジリ貧は地方経済だけではない。都市生活者にも給与収入の低下や雇用不安の波がヒタヒタと押し寄せている。中小企業の倒産も高水準で、日本経済の基盤が恐ろしいほどのスピードで崩れはじめている。

カエルをお湯の中に放り込むと、熱いから即座に飛び出る。しかし、水の中でゆっくり温めていくと、ジッとしたまま死んでいくらしい。このまま政治の迷走と経済ジリ貧への無為無策が続くと、日本はユデガエルになってしまう。国力の減衰がジワジワと進行し、気がついた時には手遅れということにもなりかねない。

利益分配のおねだり文化を捨て去ろう

今回はずっと日本的な利益分配文化に焦点をあてて書いてきたが、もともと収益獲得があってこその分配である。経済のパイを大きくするとか富の増殖があって、はじめて利益分配も可能となる。

ところが日本では、いつの間にか最初から分配ばかり念頭に置く文化が全国各地で深く根を下ろしていった。族議員や各省庁による国家予算の分捕りからはじまって、特殊法人などの官業ビジネスやら公共工事に至るまで、元はといえば税金や郵便貯金で集めたお金を分配し合っているにすぎない。

これをもって既得権益層とか利権屋集団というが、それも分配の原資がたっぷりあってこその話。現に、原資が枯渇の方向をたどってきているから、国債を大量発行したり郵貯の預け入れ限度額を2,000万円にするとかで、後世に重い負担を残しかねない無責任きわまりない政策に走っている。

このままで良いはずがない。喫緊の課題は日本経済のパイをとにかく大きくすること。そして、おねだり文化を一掃してしまうことだ。ここは、国民のみなが経済的自立に向けて汗を流すよう、意識を切り換えるべき時だろう。行動に移るのは、早ければ早いほどいい。

経済なんてもともと、人々の「どう稼いで生きていくか」が集ったものにすぎない。自立とかいう前に、「自分の食いぶちは、自分で働いて稼ぐ」は、国民一人ひとりが当然のこととしていなければならないこと。でなければ、国の独立も一家の自立もあり得ない。

たしかに、「働かざる者は食うべからず」と思うが、働きたくても仕事がない? それでも、なんとか仕事をつくって収入を得ようと、知恵を絞り工夫を重ねるのが経済の原点である。生きていくため、必死に努力するところに自立がある。

成熟経済はもう成長できない?

中国やインドといった新興国の経済発展エネルギーは、すさまじいものがある。かつては日本も経験したように、人々の豊かさへの願望は強烈で、不況などあっという間に吹き飛ばしてしまう。

そうはいうものの、どこの国の経済も発展拡大期を経て、いつかは成熟化の段階に入っていく。いまを時めいている中国やインドだって、そのうち成熟経済国の一員となる日を迎えるのは間違いない。

いつも書いていることだが、人々が豊かな生活を実現しようと猛烈に働いては、得たお金で次から次へと欲しかったモノを買いまくっている間は、どこの国の経済も急速に拡大発展する。ところが、国民の多くがあこがれていた耐久消費財をあらかた手に入れてしまった頃から、経済成長に急ブレーキがかかる。

「もう、これといって買いたいモノはない。買おうという気になれば洗濯機を10台ぐらい買うお金はあるが、洗濯機は1台あれば十分」で、モノへの消費はガクーンと落ち込んでしまう。これが経済の成熟化である。国中でかつてのようにモノをガツガツ買わなくなれば、工場閉鎖などで失業率は高まり、経済全体の成長率も鈍っていくのは避けられない。日本はまさしくこの状態にある。

もう日本経済は成長しようにも成長できない? いや、やり方次第でいくらでも成長できる。経済なんて動いているお金の量と回転スピードで、その規模や成長率が決ってくる。成熟経済でも、お金がどんどん動くようにしてやれば、どれだけでも成長できるし新しい産業も生まれる。

その前に、成熟経済で忘れてならないことがある。成長率こそ鈍ったものの、すでに出来上がって当り前のように存在している経済活動の規模は、高度発展段階の頃よりはるかに大きいということだ。

ひとえに、新たなる伸びしろが小さくなっているだけのこと。その横で資本の蓄積は進んでおり、ひたすら出番を待っている。きっかけさえ作ってやれば、たっぷり蓄積されたお金は動き出すし、それが新たな経済活動(伸びしろ)を引き起こすことになる。

そこで、投資というものの重要性が浮上してくる。ちょっとおもしろそうだと思えることに、ポンとお金を投入してやるのだ。われわれのように長期で応援したい企業の株を買うことでもいい。先ずはお金を放り込んでやることだ。それが起爆剤となって、お金が次から次へと経済の現場をまわっていく。

おもしろいもので、お金がまわりはじめると経済の現場でいろいろな新しい動きが出てくる。それらの中には一時的な現象もあれば、新しい産業に育っていくものもある。この循環が高まっていくにつれて、日本経済の再生も現実となる。

とにかく、経済の現場でお金をまわしてやることだ。そこから成熟経済の成長エネルギーは自然発生的に生まれてくる。

(2010年4月27日記)

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