現在地
ホーム > マーケット情報 > レポート&コメント > 澤上篤人「さわかみ経済教室~中長期の資産形成~」 > 第110回 がんばれ世界の長期投資家

第110回 がんばれ世界の長期投資家

2010年3月16日

年金運用本格化で長期投資家の影が薄くなっていた

世界的にみて、この30年ほど投資理論の高度化と運用技術の精微化やコンピュータ化は驚くほどの進化を遂げた。逆に、長期スタンスで株式投資を展開できる本格派の投資家がずいぶんと減った。

1970年代後半から先進国中心に年金運用が本格化し、いわゆる機関化現象が急進展した。それにともない、欧米諸国や日本などで運用ビジネスが天文学的に巨大化していった。その流れに逆行するかのように、本格派を自認する長期投資家の影が薄くなっていったわけだ。

年金運用って長期投資の典型じゃないの? 10年20年30年後の年金給付を視野に置いて、長期的な運用蓄積を最大化しようとするのが、年金本来の運用じゃないの? その主力が長期の株式投資じゃないの?

たてまえ上はそうだ。しかし、年金には多くの人々の将来設計が懸かっている。いくら長期投資が年金運用の本来あるべき姿といっても、20年30年たってから運用が下手だったでは、取り返しがつかないことになる。やはり、毎年毎年の運用状況や成績をチェックして、手遅れにならないよう万全を期す必要がある。そういった考え方が、年金運用の現場でいつの間にか主流になっていった。

毎年きちんきちんと成績を評価する。そして2年3年と成績が悪かった運用担当者は外すとなれば、オチオチと長期視野でどっしりした株式投資なんてやってはおれない。どの運用会社も預り資産があってはじめて商売ができる。いまや巨大な投資家顧客となってきた年金サイドから運用が下手と烙印を押されたのでは、飯の食い上げとなってしまう。といった考え方が主流となり、年金サイドはもちろん運用担当者もみな1年毎の成績に追いまくられるようになっていった。

年金運用が本格化する前は、機関投資家の間でも4年~6年ぐらいかけて将来有望株をじっくり仕込んでおき、8年後10年後の投資リターンを狙う長期投資はごく一般的であった。それが、年金運用本格化の流れとともに、運用の現場では企業の四半期決算に一喜一憂する短期指向がどんどん高まっていったのだ。

「買えば上がる」の楽な株式投資を享受してきたが……

年金運用本格化は世界の機関投資家に運用の短視野化をもたらしたが、もうひとつ副産物を産んだ。それは世界の運用者に「楽な運用を覚えさせた」ことである。

楽な運用? 公的年金にしても企業年金にしても、加入者の年齢構成が若いと積み立て額はどんどん増加する。一方、給付を受ける高齢者層の数は比較的すくない。すると、年金資産は急速に積み上がっていく。この現象が1970年代から世界的に顕著となり、拡大一途の年金資金が運用を求めたわけだ。

年金といった巨額資金の運用ともなると、株式や債券投資が中心となるのは仕方ない。金や商品などでは市場規模が小さすぎて、ほんの一部の資金しか受け入れられない。そこで株式投資や債券投資だが、尻上がりに増え続ける資金で力まかせに買いまくる運用は楽である。とにかく買えば成績が出てしまうのだから。

豊富な資金を背景とした「買えば上がる。資金が入ってくるからさらに買う」の好循環が、1980年代90年代と20年間にわたり世界の株式市場に未曾有の上昇相場をもたらした。日本だけが例外で、90年代に入ってからはバブル崩壊で暴落と低迷相場に喘いでいる。ともあれ、世界のほとんどの運用担当者がさして経験や実力がなくとも、そこそこの成績を残せたのはひとつの事実である。

さすがに2000年代に入ってからは、企業の利益向上スピードが急激な株価上昇についていけなくなり、株価の上昇力も落ちてきた。そんなところへ2001年の同時多発テロや金融バブル崩壊などもあって、株式市場全般は波乱含みとなってきた。こうなってくると、「買えば上がる」の楽な株式運用にどっぷり浸ってきた機関投資家は手も足も出ない。個別企業をていねいにリサーチしておいては、暴落相場や低迷相場を待ってましたとばかり狙いを定めた企業の株を仕込む、株式投資本来の行動がからっきしできないのだ。

債券投資の良き時代は終りつつある?

一方、世界の債券市場は年金など機関投資家による継続的な買い越しで、80年代から今日に至るまでずっと上昇トレンドを維持している。債券価格と債券利回りつまり市場金利は反比例の動きをするから、世界の長期金利は債券相場の堅調を受けて1983年からもう30年近くも低下傾向を続けてきたわけだ。これだけ長期にわたって債券利回りが低下し続けるなんて驚きもいいところだが、結果として「債券投資の安全神話」みたいなものが醸成されていった面は否定できない。

国債にしろ社債にしろ、債券の発行体が万全の経営をしてくれていれば半期毎に利金はもらえるし、満期時に元本は確実に戻ってくる。だから安心した投資ができる。それは、その通り。

しかし、債券価格はその時々の金利水準で上下変動するから、金利上昇局面で中途売却すると値下がり損を蒙ってしまう。現在のような超低金利時に低利回りの債券を購入して保有していると、すこし金利が上昇するだけでも価格下落でゾッとさせられる覚悟はしておいた方がいい。

金融危機による世界景気の後退で、いまは先進国中心にジャブジャブの金融緩和と超低金利政策を導入している。それが功を奏して、いつかは景気が浮上してくるだろう。同時に、やっかいな問題が世界を襲う可能性も頭に入れておきたい。それは世界中がこれだけ国債を大量発行しており、いずれは供給過剰による債券価格の値崩れと市場金利の急上昇が懸念されることだ。

そうなった時、一体だれが債券を買い支えるのだろうか? 頼みの年金だが、世界的にみてこれまでのような力強い買い主体であり続けることは徐々に難しくなっていくと思われる。

どういうことかというと、公的にしろ私的にしろ年金制度が充実しているのは主に先進国である。先進国はどこも人口構成の高齢化に直面している。年金を積み立てる現役層に対し、給付を受ける高齢者層の比率が高まれば、それだけ年金の取り崩し圧力も強くならざるを得ない。つまり、世界の年金運用はこれまでの買い一途の投資家から、中立あるいは徐々に売り主体に転じていくことも意識しておく必要があろう。一方、中国やインドなどの年金制度はまだこれからの話である。

年金以外の債券買い主体となると、残るは日本の個人マネーを大量に抱え込んでいる銀行や郵貯資金ぐらいだろう。とはいえ、もし世界的な債券価格の値下がりと金利上昇という展開になった時、果してどこまで買い続けられるだろうか。どちらにしても、30年ぶりの本格的な金利上昇局面が到来したら年金の債券運用のみならず、低金利は続くと想定している投資家にとっては大きな試練となる。

世界経済は長期の資本を必要としている

新興国中心に世界中で成長を求めるエネルギーは爆発している。経済インフラの建設からエネルギーなどの資源開発や生産力増強投資まで、お金はいくらあっても足らない。

こうなってくると、やはり長期投資家の出番となる。そこで、世界の機関投資家中心に運用担当者たちが短期指向で「買えば上がる」の楽な株式投資を覚えてしまった点は重い足カセとなる。どんな問題? 世界の成長に長期スタンスで堂々と資金供給できる主体が少なくなってしまったことだ。

金融バブルが膨れ上がっていた時は、投資マネーはあふれ返っていた。世界中が金あまり状態にあったし、証券化商品もどんどん開発されていったから信用はいくらでも供与された。ところが、サブプライム問題発生やリーマン・ショックで世界の金融は一挙にしぼんでしまった。それどころか、証券化商品やデリバティブ(金融派生商品)への投資で大きな損失を蒙った金融機関が続出し、いまやヘッジファンドや投資ファンドなどへの銀行融資に規制が課されようとしている。

一方、年金運用を中心として世界の機関投資家全般に短期の成績を意識した株式投資スタイルが強く根を張ってしまい、おいそれとは長期投資にシフトできそうにない。資金の出し手も運用を担当する方も、毎年の成績に追いまくられるようになって長い年月が過ぎた。ちょっとやそっとで舵を切れないのが現状である。

そうはいうものの、世界の投資ニーズはエネルギー・工業原材料・食料・水といったモノの供給体制確立に向っている。また、地球温暖化阻止など環境投資も高まる一途である。これらのどれもが長期スタンスの資金ニーズであり、かつて年金運用ニーズが急拡大したのに次ぐ新しい歴史の流れでもある。これから世界中で、本格的な長期運用を展開できる個人投資家や機関投資家がどんどん台頭してくるのだろう。

(2010年2月23日記)

本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。


楽らくサポート

個人確定拠出年金iDeCo

口座をお持ちでない方へ

まずは無料でかんたん

口座開設

口座開設中のお客様

クイック口座開設手続き中のお客様

楽天証券へ資料請求して、今すぐご利用いただけます。

楽天証券資料請求はこちら

今すぐご利用いただけます。

ポートフォリオ一覧を表示

楽天証券にログインしてご利用ください。

楽天証券へログイン

上記より楽天会員にログインしてください。

ポートフォリオ機能とは?

よくあるご質問

お問い合わせランキング

マーケットスピード IIダウンロード

Marketspeedダウンロード

Marketspeed for Macダウンロード

MarketspeedFXダウンロード

投資情報メールサービス「マーケットアロー」

 お友達紹介プログラム

お客様の声をカタチに