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第92回 個人金融資産あるうちが花

2009年6月16日

これまでは増える一途だった

バブルがはじけて19年になるが、日本経済は年を重ねるごとに迫力がなくなっている。経済成長率をみても高度成長時代の年10%は遠い昔の話で、最近はようやく年1%台といった体たらく状態にある。

そこへ追いうちをかけるかのように、世界的な金融危機と景気後退の嵐が襲いかかってきた。結果、昨年そして今年とマイナス成長ということになるらしい。

これまで、国内総生産(GDP)に対する国の借金残高は先進国でも最悪だが、日本には膨大な個人の金融資産の蓄積があるといわれてきた。それも、先行きが怪しくなってきた。ちなみに、日銀統計でみると2007年末に1,545兆円あった個人金融資産が、2008年末には1,434兆円へと急減している。(兆円以下四捨五入)

もっとも、急減した要因は株式や投信資産の時価評価が大きく落ち込んだからであって、それほど大騒ぎすることでもない。預貯金残高は784兆円から791兆円へとむしろ増えている。

警戒しておくべきは、日本の貯蓄率が急低下してきて、個人金融資産の積み上がっていくペースが弱まってきていることだ。下手すると、純減のサイクルに陥りかねない。

個人金融資産残高は、家計所得から税金や社会保障費を支払った残りの自由につかえるお金、つまり可処分所得から生活費や住宅ローンの支払いなどを済ませて、手元に残ったお金の蓄積分である。その蓄積分を預貯金や証券投資で運用することによって得られる利息収入や評価損益も、個人金融資産残高に加算される。

これまで日本の一般家庭では、ひたすらまじめに働いては給料やボーナスを得ていた。そこから税金や社会保障費が天引きされた後の手取り収入で家族の生活費を賄い、同時にあこがれの耐久消費財を次々と手に入れていった。洗濯機・白黒テレビ・冷蔵庫からはじまって、カラーテレビ・自動車・クーラーを買い揃え、そのうちマイホームやピアノ・エレクトーンといった高額商品まで買いまくった。

それでも、終身雇用と年功序列の賃金体系が磐石で国民の所得が右肩上がりで増加していったから、手元に残ったお金は預貯金にまわすことができた。つまり個人金融資産も着実に増えていった。

また、人口増加が続き人口構成も見事なピラミッド型だったから、年金を積み立てる現役就労層が尻上がりに増えていく一方で、年金を受け取る高齢層はそれほど多くはなかった。結果、現役引退世代の年金受け取り額もどんどん増えていき、これも個人金融資産残高の積み上がりに貢献した。

おまけに高度成長経済下、企業の投資意欲は旺盛で資金需要が根強かったこともあって、日本の金利水準はいつも高めだった。年7%とか年8%の利息で10年定期にしておくと、満期時には元利合計が2倍になるといった具合で、預貯金資産は累増していった。これも、個人金融資産の恒常的な積み上がり要因として大きく貢献した。

すべての歯車がプラスの方向で高回転していたわけだ。

これからは急激に減っていく

ところが最近、個人金融資産の積み上がりの歯車がギシギシしてきて、一部で歯が欠けはじめてきている。このまま放っておくと歯車が動かなくなり、いずれ逆回転しはじめることになりかねない。

まず給与収入だが、終身雇用や年功序列で毎年大幅なベースアップといった日本独特の雇用慣行は、いつの間にか霧散してしまった。一部の企業で終身雇用に近い体制は残るものの、かつてのように年功で自動的に毎年の昇給を認めるほどの余裕はない。むしろ、世界経済のグローバル化による低賃金労働の波に押し流されて、日本の平均的な給与水準は年収で100万円ほど下がることも覚悟しておきたい。

一方で、国の財政悪化や国債発行残高の増加は加速しており、将来の税負担は消費税を含め著増は免れない。社会保障費だってどんどん高くなっている。これでは、可処分所得の大幅減少だってあり得る。

となると、これからは生活費や学費それに住宅ローンなどを支払って、「どれだけ残るか」どころではない。下手すると、毎月の収入だけではまったく足らず、生活費を切り詰めることにもなりかねない。あるいは、貯蓄を切り崩して生活費に充てていくか。もう、そうなると個人金融資産の増加はない。

年金に関しても、いまや大半の日本人が「果して、どれぐらいもらえるのか」で、不安や懐疑心が高まっているのが正直なところだろう。少子高齢化の進展で、年金を積み立てる現役層が減り支払いを受ける高齢者層が急増しているのだから、どう楽観的に考えても年金の支払い原資は減っていく。おそらく、年金の受け取り額は相当に減らされるのだろう。

すでに15年ほどゼロ金利あるいは超低金利政策が続いており、頼みの預貯金も個人金融資産に対する利息収入の貢献は雀の涙ほどでしかない。これだけ巨額の預貯金残高があるのだから、かつてのように年7%とか年8%の預金利子がつけば、利息収入がもたらす個人金融資産の増加分は相当な額にのぼるはず。もっとも、超低金利政策が永久に続くことはないが、高度経済成長時代の高金利も期待できそうにない。

やはり、歯車が欠けてきている? そう考えておく方が自然だろう。

景気さえよくなれば

もちろん、景気が本格回復し日本経済に活力が戻ってくれば、個人金融資産の減少傾向に歯止めがかかり、再び増加に向うこともあり得る。その場合でも、税収の大幅自然増で国や地方自治体の借金残高が猛スピードで減っていくという前提があってのこと。

中途半端な景気回復ぐらいでは、国にとっては国債の利払い負担が重くのしかかったままだから減税は考えられない。家計所得がすこしばかり増加しても、税負担や社会保障費に食われてしまうのがオチだろう。

やっかいなのは、景気回復とともに本格的なインフレ襲来の懸念も否定できないこと。よくインフレ目標を設定して国や中央銀行が物価や金利をコントロールするというが、それはデフレ経済下で景気を浮揚させようと懸命になっている時の発想でしかない。本格インフレ到来ともなれば、諸物価は高騰し生活コストは一気に跳ね上がる。国債など債券売りが集中し市場金利が暴れ出したら、もう誰も止められない。

給与収入や利息収入の増加は、インフレの波に1年以上は遅れかつ小幅となるのが通常だから、預貯金残高の目減りはあっという間となる。年金生活者はインフレ時の諸物価急騰には、まったくをもって無力である。

インフレが襲来すると、いまのままの個人金融資産だと大きく目減りしてしまうのは避けようがない。なにしろ、1,434兆円の個人金融資産残高で55%は現金ならびに預貯金に置いてあり、購買力低下の波をもろに食らう。また、3.1%を占める債券保有分はもちろんのこと、28%を占める年金・保険の大半が債券投資に向けられており、インフレ時の市場金利上昇時は眼もあてられない。

ということは、日本が誇る巨額の個人金融資産も前途多難で、よほどうまく対応しないと資産価値は大きく目減りすると懸念される? そういうことなんだろう、なにもせず手をこまねいていれば。

考え方とやり方次第

日本の景気対策も経済活性化案も、いまのままだと先行きにそれほど明るい期待がもてそうにない。政府与党は選挙対策もあり景気浮揚予算の大盤振舞いをしつつあるが、バラ撒くお金はタダではない。40兆円を超す過去最高の国債増発で、これまでの800兆円を超す長期債務にさらに大借金を上乗せしようとしている。先々の大幅増税は避けられず、国民へのツケは後で必ずまわってくる。

また、大盤振舞いも既得権擁護に傾きがちで、新しく産業を興したり本当に国民生活を支える方向での思い切った資金投入という観点に欠けている云々、各方面から指摘されている。その通りだろう。場当たり的あるいは後向きのお金のつかい方をしていると、せっかくの資金投入も死に金となってしまう。もはや選挙とかは横へ置いて、長期戦略に立った日本経済活性化策をどんどん打ち出してもらいたいもの。

一方、われわれ国民一人ひとりも国や政治にすべてを頼る他力本願を脱皮し、民間サイドで何ができるかを考え実行すべきである。そうしないと、税負担やインフレというツケに苦しむことになる。

いつもの繰り返しになるが、預貯金に眠る791兆円の10%でも長期投資にまわるだけで、日本経済は瞬時に元気一杯となる。株を買うのも国が景気対策予算を投入するのも、経済の現場へお金を放り込むという意味ではまったく同じである。

たとえば、791兆円の10%にあたる79兆円が長期の株式投資に向うと、500兆円のGDPに対し15%強の成長加速要因となる。日本経済が15%強の成長をしてくれたら、これはすごいこと。国民全体の所得も増えるし、年0.1% とか0.2% の利息収入を期待して預貯金に寝かせておくよりはるかに効率的な資金運用となる。

(2009年5月25日記)

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