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第91回 すこし長期で社会変化をイメージすると

2009年6月1日

長いこと投資運用の世界に身を置いてきたこともあってか、世の中が大騒ぎしてもそれに振り回されることなく、いつもその先を考えるのが習い性となってしまった。
今回も個人的な見解と断った上で、現時点ではかなり大胆な将来イメージを書いてみたい。

思いがけない変化でショックを受ける人々

よく「逃げ切り世代だから大丈夫」とか、「私は下流社会とは関係ない」とか、既得権に安穏としている人たちの間からちょっと身勝手だよなと思える発言を耳にする。他方で、若年層を中心に「給料は増えないし、いつ首になるか不安」とか、「俺達の年金どうなるんだろう」といった声も、あちこちから聞えてくる。

こういった世代間格差や生活レベルでの不公平感も、今後10年ぐらいで立場が入れ替ってしまう可能性がある。それは、30年ぶりの本格インフレが襲来した場合だ。現在の金融危機は100年に1度と騒がれるほどには日々の生活に影響は生じていない。しかし、インフレともなると人々の生活基盤に劇的な変化をもたらす。

インフレの根拠は、世界中の政府が史上空前のお金バラ撒きを続けていること。それは、金融危機が収束し世界の景気が本格回復するまでは中途で止められない。大量にバラ撒いたお金は、いずれ各国の金融市場で信用機能が回復し景気の足取りが相当にしっかりしてきた頃から、待ってましたとばかり暴れ出すだろう。

市中にあふれ返っているお金が暴れ出すと、まず最初に投機的な動きが高まり、モノの値段がどんどん上がっていく。その段階では、投機相場に乗った成り金たちが高額品を買い漁る動きが顕著となる。いわゆる、金持ち特集でマスコミが世の投機熱をどんどん煽っていく。

そのうち、インフレの波が社会全般に及んできた場合、諸物価が高騰しはじめる。とはいえ、給料などはそうそう上がらないから購買力がついていかない。どうしても買わざるを得ない生活必需品中心に、インフレの嵐が吹き荒れることになるだろう。一方で、不要不急のモノの消費はパタッと動かなくなる。

こうなってくると、年金生活者など退職世代の生活は一挙に厳しくなる。生活必需品中心に諸物価の高騰で、たちまち支出超過に追い込まれる。頼みの預貯金も購買力が激減する。デフレ経済が続き安心しきっていた老後設計だが、インフレ到来で計算根拠がガタガタに崩れてしまう。

その横で、現役世代もやはりインフレ下の生活に苦しむことになるが、まだ給与収入がある。一般的には物価高騰に1年から1年半ほどは後追いとなるが、給料もインフレ対応で上昇に転じるから年金生活者とは違い、なんとかやりくりできる。幸か不幸か、若年層はそれほど預貯金残高をもっていない。結果的には、インフレ進行による資産価値の目減りでショックを受ける度合いも小さい。

ほら、立場が逆転したじゃない。いま静かに不公平感を高めている若年層だが、インフレの嵐に右往左往させられるであろう既得権層をみてどう感じるだろうか。

それだけでは終らない。年金の制度や運用姿勢が現状のままだと、インフレ進行による市場金利の急上昇で債券価格が大きく下落するだろう。大半の年金は債券中心に運用しているが故に、資産評価の大幅減少に見舞われることが考えられる。それはとりも直さず、年金給付額の圧縮に直結する。こうなると、「年金がもらえて当り前」の世代も、「年金はもらえないかも」世代も、そう変らないことになりかねない。

「貯蓄から投資へ」の重要さが、しみじみ実感される

日本のように成熟度を深めている経済では、インフレの嵐が襲来しようとしまいと「貯蓄から投資へ」はきわめて重要な国民的課題である。もう高度成長時代のように給与収入がどんどん増えることはないのだから、「自分もしっかり働くが、お金にも働いてもらう」ことで、生活基盤を固めていく自助意識が不可欠となる。

お金に働いてもらうといっても、単に副収入を増やすだけではない。せっかくなら、経済の拡大再生産につながるような働きをしてもらいたい。それには、長期の株式投資が一番ではないだろうか。

どうして長期スタンスの株式投資が一番なのか? われわれ長期投資家は、不況時や景気回復過程での株価暴落時などみなが売り逃げに走る時に、ためらうことなく株式購入で経済の現場へ資金を提供しようとする。
買うのも、日々の生活を下支えしてくれている企業群を応援しようと投資対象を厳選する。

前者は、民間版の景気対策として経済活動の活性化に寄与する。つまり、自分たちの投資が経済を拡大発展させ、まわりまわって自分たちの収入増加につながるわけだ。

後者は、自分たちの生活を支えてくれている企業活動がなくなったり、マヒ状態になったら困るからだ。生活防衛のためにも断固として応援する。また、インフレになっても生活必需品への出費は抑えられない。どんなに値段が上昇しても買わざるを得ないが故に、そういった企業群の売り上げ増加に乗って、インフレ対応の財産づくりができてしまう。経験則的にも、長期の株式投資がインフレに最も強い。

そう上手くいくものなのか? 上手くいくとかどうかではない。本格的な長期投資のひとつひとつの行動が、どれも地に足がついたものなのだ。だから、不況時に応援企業の買い仕込みを淡々とやっていくだけだし、好況到来の波にもインフレのような嵐にも自然体で乗れてしまい、投資リターンが後からついてくるのを待つ。

本格的に「貯蓄から投資へ」を実践していた人と、なにもしなかった人とでは大きな差がつく? 現状のような経済情勢が続いていても、そのうち間違いなく差がつく。インフレ到来ともなれば、決定的な差となってしまうのだろう。

なにもかも国まかせで、自助努力をしなかったツケは

バブル崩壊後20年になろうとしているが、日本全体ではいまだに高度成長時代の考え方が抜け切れていない。いろいろな問題を抱えていても、ガマンして「待っていれば、なんとかなる」といった漠たる期待感で、結局は何もしない人が多い。

たしかに、かつてはどんなヘマをやらかしても時間の経過とともに、問題が自然解消していってくれた。それほどまでに経済成長のスピードが速く、ほとんどが結果オーライとなってくれた。それで、「ガマンして待っていれば」式の他力本願的な処世術が定着していったわけだ。

しかし、日本経済が急速に成熟度を深めている昨今、もはや、「いくら待っても、なんともならない」のが現実。高度成長時代の「勢いにタダ乗りするだけ」の生き様や、「まじめに働いていさえすれば、なんとかなる」がもう通用しないことを、一刻も早く認識しなければならない。

経済はもともと生きていくための活動である。生きていきたいのは自分自身なのだから、いつも自助意識を高めて日々の仕事に精を出すのは当然である。汗を流して働いて、その日の糧を得るわけだ。

この当たり前のことが、人々の脳裏から消え去ってしまったようだ。「国がなんとかしてくれる」からはじまって、「国がもっと景気対策をやって、予算をどんどん投入してくれなければ」まで、他力本願の甘えが日本中に充満している。

経済において、タダで得られるものはない。景気対策でもなんでも国におねだりすれば、後で必ずツケがまわってくる。金融危機克服や景気浮上で国に対策を求めれば求めるほど、財政赤字の拡大は避けられず、いずれは増税かインフレ到来という形で将来のツケ払いが大きくなる。

現時点でいうならば、もう既に684兆円という途方もなく大量の国債発行残高が積み上がり(日経2009年5月9日)、今年さらに40兆円を超す国債増発が予算化されようとしている。大量の失業発生を食い止め景気を回復させるには背に腹は変えられないということで、国債発行残高の急膨張を黙認している。

高度成長時代であれば、一時的な財政赤字急拡大もその後の景気急回復による税収増加で、結果オーライとなった。2度の石油ショック時がその典型で、日本は世界に先がけて例外的に早く本格回復した。

いまは残念ながら、当時の経済ダイナミズムは願うべくもない。国債発行残高の著増は国民経済的に税負担などで長く重い足カセとなるだろう。そこへ、インフレが到来すると、年金生活者中心に国民の生活基盤はズタズタになる。

一方、国はどれほど巨額の債務残高を抱えていても、インフレ到来で返済負担は大幅に軽減される。いつのインフレ時でも、債権者は泣き債務者は笑うのが世の習い。

お金の面で考えたら、さらにゾッとするはず。自分のお金は後生大事に預貯金にしまっておき、国の景気対策に頼っていた挙げ句、インフレ到来で虎の子の預貯金資産を大きく目減りさせてしまう。

そういうことなら、はじめから自分のお金に働いてもらえば、民間版の景気対策をやれて将来の税負担も軽減できる。その上、インフレを乗り越えた財産づくりにもなるというのに。

(2009年5月8日記)

本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。


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