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第348回 ドル/円はなぜ100円75銭を割りこまなかったのか?

2014年5月22日

投機筋はドル/円の下値を攻めきれず…

5月21日の相場でドル/円は100円81銭と2月4日安値の100円75銭に接近した。日経平均の14,000円やドル/円の100円75銭は当局にとって重要な防御線であり、ここが切れたらまずいということで、PKO的なドル買いが出たであろうことは想像に難くない。

それでも、昨日はこのところの危機(リスク回避)相場を煽っている感のある欧州勢が円買いを仕掛けに行ったという。ストップ・ロスが大量にあるトリガーポイントである安値の100円75銭が見えているのだから、円買いの投機筋としては強引に落としに行くはずである。それでも結局2月4日安値の100円75銭は維持された。なぜだろう?

ドル/円(日足) 危機一髪で100円75銭を維持…

上段:200日移動平均線(紫)の攻防
下段:ストキャスティクス5.3.3


(出所:石原順)

ブローカーによると、ドルの安値を叩きに行ったのは短期筋や超短期のアルゴリズム売買を行っているファンドであり、腰の入ったドルの売り方はいないというのである。腰の入った売り方とは通常グローバル・マクロ型ファンドのことを指すが、今年はグローバル・マクロ型ファンドの成績が悪く、どうやら大きなリスクを取りに行く体力がないらしい。

あるグローバル・マクロファンドの運用者は「円買いを仕掛けても日本の当局のPKOで何をされるかわからないので怖い。なにより面白くないのはシカゴの円売りポジションがピークの14万枚から6万枚に減ってしまっていることだ。ポジションが大きく偏っていないと仕掛けは成功しにくい。加えて、日本の貿易赤字分の実需のオーダーもこなさなければ円買いは進まない。これでは円買いを仕掛けても大円高とはならないだろう」と冷めた見方をしていた。

円のポジション(CFTC発表 5月13日現在)


(出所:石原順)

恐怖(VIX)指数はなぜ上がらないのか?

ウクライナ情勢(5月25日大統領選挙)等の危機を煽っているのは欧州のファンド勢であり、米国勢は意外にもそれらの危機に鈍感である。それは俗称恐怖指数と呼ばれるVIX指数の動きをみれば一目瞭然であろう。

恐怖(VIX)指数の日足 なぜ恐怖指数は上がらないのか?


(出所:石原順)

では、なぜ恐怖指数が上がらないのか?それは下がっても「恐怖」がないからだという。先のファンド運用者は、「4月末で手仕舞いした君もそうだろうが、5月現在、われわれのファンドもかなりポジションを落としてしまって、大きなポジションを持っていない。だから怖れを抱く理由もヘッジをする理由もない」「S&P500のポジションはずっと横ばいで、買いポジションが15000枚を超えると上値が重くなるだけだ。買いポジションがもっと増えれば危険だが…」と言う。なるほど、ポジションが大きくなければ恐怖もない。

S&P500のポジション(CFTC発表 5月13日現在)


(出所:石原順)

S&P500(日足) 最高値更新相場と囃しているが実は横ばい相場


(出所:石原順)

今年の前半相場は「ポジション解消相場」

もう勘のいい読者は気づいていると思われるが、今年の前半相場は実は「ポジション解消相場」だったのだ。今年前半の相場の上下動は、相場のあてが外れた結果としてのポジションの解消が原動力となっている。以下のCFTCのポジションをみると、豪ドルの買戻し、米国債の買戻しをはじめとして、投機筋の<投げ>が相場を動かしていることがわかるだろう。

豪ドルのポジション(CFTC発表 5月13日現在)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
中段:21日ボリンジャーバンド
下段:ストキャスティクス5.3.3


(出所:石原順)

米10年国債のポジション(CFTC発表 5月13日現在)


(出所:石原順)

米10年国債(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド


(出所:石原順)

ユーロのポジション(CFTC発表 5月13日現在)


(出所:石原順)

NYダウのポジション(CFTC発表 5月13日現在)


(出所:石原順)

ポジション解消というと聞こえは悪くないが、要は投機筋の損切である。この結果、年初来のファンド勢の成績は散々な結果となっており、グローバル・マクロなどの投機的なファンド勢はリスクをとる余力が減少していると思われる。また、高頻度(HFT)取引も「フラッシュ・ボーイズ」騒動で司直の手が入り、活発に動けない事態となっている。

投資銀行部門で大規模なリストラが断行されていることも出来高減少につながっている。ブルームバーグの報道によると、ある投資銀行のCEOは「投資銀行は債券・通貨・商品(FICC)事業のボラティリティにさらされ過ぎている。1四半期の税引き前利益はFICC事業の減収が響き、前年同期比49%減だった」「市場は循環的というよりもむしろ構造的な低迷に直面しているとの見方を示し、投資銀行事業の収入は当分、低いままだろう」と語ったという。

このような投資銀行部門の大規模なリストラのなかで、ポジション解消だけが進んでいるのが今のマーケットだ。誰も無理をしない相場なのである。相場は恐怖と欲望のゲームだが、恐怖と欲望は裏返しの関係であり、恐怖もない代わりに欲望もないのが現在の相場なのである。

「ニュー・ニュートラル(New Neutral)」で面白くない相場が続く?

米債券運用会社PIMCOは5月13日に向こう5年間の長期見通しを発表した。その報告書の中で、「われわれは低成長期(米国は他の地域よりはましだが)にあり、投資家にとってはあまり面白くない数年になる」「近い将来、投資家にとっては見返りよりもリスクの方が多そうだ。しかしながら、ニュー・ニュートラルが実現すれば、成長トレンドは鈍化するがより安定的になるので、リスクは低くなるかもしれない」と述べている。

驚くのはPIMCOがニュー・ニュートラルの時代は米景気に中立的な政策金利の水準が2%になるという見方を示したことだ。景気に中立な米国の政策金利は4%近い水準といわれているだけに、債券関係者に衝撃を持って受け取られている。このニュー・ニュートラルはローレンス・サマーズの「長期停滞論」と軸を一にしている。

PIMCOの「ニュー・ニュートラル」やローレンス・サマーズの「長期停滞論」が跋扈するなか、いきおい米国債の動向に目が向いているが、6月は米国債が反転しやすい月といわれる。現在の米金利低下がファンドのポジション解消に過ぎないのか、あるいはイールド探しでさらに米国債の金利低下が進むのか、やはり本当の勝負は6月となりそうである。

米国の金融政策と米10年国債の推移 QEをやめると金利が下がる?


(出所:石原順)

米国の金融政策とドルインデックス QEをやめるとドルは上がるはずだが…


(出所:石原順)

円相場はしばらく要注意

昨日、投機筋がドル/円の下値を叩きにいった。しかし、100円75銭を付けることができずに、本日は101円75銭まで買い戻されている。ただし、下値不安が払しょくされたわけではない。ドル/円は200日移動平均円や2月4日安値100円75銭をめぐる攻防を継続中である。

今週の週足の引け値がアベノミクス相場のサポートで21週ボリンジャーバンドの-1シグマを上まわるか、102円をしっかりこえてこないと下値不安の強い相場に変わりはない。筆者は現在100円75銭にストップを置いて、比較的短期の売買しか行っていない。ここは、無理をする必要はないだろう。

ドル/円(日足)と200日移動平均線  アベノミクス相場の日足のサポート


(出所:石原順)

ドル/円(週足)と21週ボリンジャーバンド -1シグマがアベノミクス相場のサポート


(出所:石原順)

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。

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