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第301回 米国はドル高政策に転換か? 投機筋の間で囁かれる米国独り勝ちのシナリオ

2013年6月27日

ドル高の構造

筆者は長きにわたって通貨を動かすファクターとその相関関係について検証してきた。その結果、「米国の貿易赤字」も「雇用統計」も「介入」も通貨市場の動きを説明することはできなかった。長期的な検証を行うと、これらは通貨の変動と大きな相関関係はないのである。最終的に通貨の動きを説明できるファクターは1つしかなかった。それは<米国の金利>である。

筆者の通貨研究でわかったことは、

  1. ドルの動きを説明できるのは米国の金利のみである
  2. ドルは米金利が各国金利に比べて相対的に高い時期に買われる

という2点である。つまり、米国と他国との相対的な金利差の水準の結果としてドル高やドル安が起こっているのである。

そして今、米国の金利が大きく上昇してきた。これはもちろん量的緩和縮小観測の影響である。世界景気の停滞感は強いが米景気は比較的堅調であり、米金利が相対的に高くなりつつあるというドル高の条件が徐々に整いつつある。

FOMCの経済見通しを受けて、米国の長期金利は今月2.6%を超える水準まで急上昇した。一方、日本の長期金利は黒田日銀総裁の「長期金利の高騰回避に最大限努力する」という姿勢を受け、0.8%台で比較的安定している。出口に向っているFRB に対して、長期金利を上げられない日銀の事情を考えると、ドル/円相場の大局はドル高となりそうだ。

ドイツ(左)・日本(中央)・米国(右)の長期金利の推移(日足)

2013年1月~6月


(出所:石原順)

クリントン政権を真似て2期目のオバマ政権もドル高政策に転換?

米金利上昇とドル高を受けて、現在のマーケットはカオス状態となっている。QE3縮小観測により米金利が上がったことで、5月以降一斉にドルキャリートレードの巻き戻し(手仕舞い)が進んでいるからだ。新興国から投機マネーが抜けるときはいつもいっせいであり、新興国は外的ショックに弱い。中国やブラジルの株価急落はこうした流動性パニックが原因である。

さて、現在の通貨運用者の最大の関心は「米国の政策転換」だ。FRBが量的緩和の縮小の観測気球を上げだした5月頃から、「2期目のオバマ政権はドル高政策に転換した可能性がある」という観測が浮上している。

「高金利で米国(ドル)への資金流入を誘い、ドル高傾向を促すことで資金流入による株高と債券高を狙う」という2期目のクリントン政権の政策を、2期目のオバマ政権もコピーしている可能性があるというのである。

1期目(1993年~1997年)のクリントン政権はドル安政策を明言していた。1995年に円が79円75銭まで急騰したのは、クリントン大統領が「米国は円高をのぞむ」という為替市場の常識を覆す発言をしたからだ。ところが、2期目になると「強いドルは米国の国益」と180度為替政策を変えてきた。米国の通貨政策の転換はおそろしく単純だ。米国は景気が良くなるとドル高政策を採用し、景気が悪くなるとドル安政策を採用する。

クリントン政権とオバマ政権のドル/円相場(月足)

1期目はドル安政策・2期目はドル高政策
(1期目=水色・2期目=緑色のゾーン)


(出所:石原順)

「米国がドル高政策に転換した」と考えると、QEの早期縮小もバーナンキの退任も合点がいくというものだ。オバマ大統領も「シェールガス革命」で自信をつけたのか内需中心の経済政策に転換しており、2013年に入ってからは「ドル安」や「輸出倍増」とかを言わなくなった。アベノミクスの「円安誘導」にも反対していない。最近の長期金利の急上昇に対しても、「懸念していない」という当局者のコメントが多い。

以上の状況証拠から、米国の通貨政策の転換が投機筋の間で取り沙汰されているわけだが、目先のドル高は穏やかなものとなるだろう。

クリントン政権では1994年から1997年の間にFFレート(政策金利)が2倍に上昇している。その後、タイムラグを経て大きくドル高が進んだ。しかし、2013年6月時点では米国の政策金利引き上げはまだまだ先のことである。世界景気が停滞しているなかで、米国も景気停滞となれば金融緩和をやめられない可能性もある。その辺はフレキシブルな対応となりそうだ。

米FFレート(政策金利)とドル/円の推移 利上げ後のドル上昇は平均7カ月遅行する

現在は9月QE縮小方向でまだ利上げの段階ではない


(出所:石原順)

あるファンドの幹部は「米国がドル高政策をやって成功するか否かは、アベノミクスの成否にかかっている」と語っている。今のドル高はリパトリ(ドルキャリートレードの巻き戻し)が原動力だ。世界からマネーを米国に呼び込もうとしても、世界的な景気の停滞から余力のある国は少ない。唯一資金を出せるのは異次元緩和を実施している日本しかない。

現在170兆円の日銀のポートフォリオはこれから290兆円まで増えていく。世界の流動性はFRBに変わって日銀が供給することになるので、目先はどうあれドル/円の長期円安観測は動かないと見られる。ゴールドの下落、日本株の急落、新興国のトリプル安などに代表される現在の市場の混乱は米国の「QE縮小観測」がもたらしたものだが、痛手を負ったファンド勢は「米国の政策転換を甘く見ていた」と語っている。

以上、米国の通貨政策転換の可能性について述べてきたが、これはあくまで市場の一部で囁かれている観測であり、相場観に過ぎない。より重要なのは現実の相場の動きであり、価格そのものの分析であろう。

新興国の混乱

ブラジルや中国といった新興国市場の急落について照会が多いので、筆者なりの見通しをここで述べておきたい。

新興国の混乱は過去2週間のレポートでもとりあげたが、世界的な景気停滞のなかでドル高が進行すると新興国危機が起こりやすいということである。このロジックで、1990年代にはアジア危機やロシア危機が起こっている。筆者は1997年7月のアジア危機は免れたが、1998年8月のロシア危機では痛い目にあった。

ブラジルは米国の量的緩和縮小観測がトリブル安の引き金を引いたとはいえ、より問題なのはルーラ、ルセフと続く政権の腐敗やインフレ(政府発表とは違い、10~15%物価上昇となっている)であろう。

ソシエテ・ジェネラルの新興市場戦略責任者は6月4日のブルームバーグTVで「新興国は半年間続く調整で、まだ始まったばかりだ」との見方を示したが、ブラジルの現地の運用者の声を聞くと、「株の上げ下げはともかく、景気の停滞があと1年は続くだろう」という見方が多い。

今後、ブラジルに海外マネーが流入する条件は、

  1. 金利が10%以上になること(現在 7%)
  2. ドル/レアル相場が2.40以上になること(現在 2.19)

で、この2つの条件を満たせば、ドルベースでみた割安感からブラジルへの投資が海外勢から出てくるとみている。

ボベスパ指数(左)とドル/レアル(右)の日足

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段;21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

中国情勢は6月19日に利回り曲線が逆イールドとなり、6月20日にSHIBOR(上海銀行間出し手金利翌日物)が13.44%に跳ね上がったことから急に騒がしくなった。

「2013年の7月危機」は2年前からの周知の事実(国務院発展研究センターの李佐軍研究員による内部報告)であり、シャドーバンキングによるバブル退治を中国は始めたのである。習政権にとっては早めに膿を出しておきたいというで、これは予定調和的なバブル退治であった。事が大きくなったのは、米国の量的緩和縮小観測で海外マネーが一気に引いてしまったからだ。

地方政府による不動産開発などの資金手当てのために販売された高利回りの「理財商品」1兆5000億元(24兆円弱)が6月末に満期を迎えることで緊迫感が高まっているが、ニューズウイークが報道している「共産党支配下の市場経済という中国独特の経済形態のおかげで、リーマン・ショック的な惨事は避けられる」という見方があるように、中国は完全な市場経済ではないだけによくわからない。しかし、中国株を買うより米国株や日本株を買った方がよいということは言えるのではないだろうか。

上海総合指数(日足)

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段;21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

NYダウ(日足)新興国のような下げは起きていない

まだPOMO頼みだが、米国独り勝ちの構図が浮かび上がりつつある
火曜日の相場(矢印)と移動平均リボン(赤)


(出所:石原順)

ドル/円相場は調整中・豪ドル/円に基調の変化

5.22のバーナンキショックから世界の市場が混乱しているが、ファンド勢も目先の相場はむずかしいと語っている。相場に方向感がないからだ。ドル/円相場は円高トレンドが終了し、14日ADXと26日標準偏差ボラティリティが低下するなかでの典型的な調整相場となっている。直近の相場で21日移動平均線を上抜いてきたことから、戻りを試す展開が続いているが、半値戻しの98円75銭を超えられるかどうかに焦点が集っている。

ドル/円(日足) 調整レンジ相場

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日移動平均線(赤)・移動平均リボン(緑)


(出所:石原順)

相場に大きな変化が見られるのは豪ドル/円相場である。ようやく円買いトレンド相場が終了しそうだ。豪ドル/円は26日標準偏差ボラティリティのピークアウト感が強まっており、相場も21日ボリンジャーバンド1シグマの内側に入ってきた。

また、筆者が豪ドル/円の反転のポイントとして注目していたユーロ/豪ドルのユーロ買いトレンドもようやく終了した模様だ。豪ドル/円は下げ相場からレンジ相場に移行する可能性が高まっている。

豪ドル/円(日足) 標準偏差はピークアウト? レンジ相場へ移行か…

上段:26日標準偏差ボラティリティ
中段:21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)
下段:9日RSI(赤)


(出所:石原順)

ユーロ/豪ドル(日足) 強烈な豪ドル売りトレンドも一旦終了か?

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段;21日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

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