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第286回 アベノミクスの終点とその結末

2013年3月14日

先週から今週にかけてファンド勢とミーティングを持った。話のテーマは「アベノミクスが頓挫するとき」である。日本でも海外でもアベノミクスは「デフレ脱却政策」ということばかりが強調されているが、グローバルマクロ系のヘッジファンドのアベノミクスに対する見方はまるで違う。

アベノミクスの目的であるべきは「財政再建」であり、デフレを脱却しても意味がないというのが彼らの見方である。それはそうだろう。日本がデフレを脱却しても「悪性インフレ」で景気が低迷していれば意味がない。景気回復による「税収増」で財政再建を行なっていくのが、アベノミクスの成功の姿である。

細かい話を端折ってしまうと、アベノミクスの結末は「インフレ」なのである。長いデフレで追い詰められた日本政府が物価目標2%を掲げた以上、この「政策の転換は難しい」というのが上記のヘッジファンドの結論だ。失われた20年を経て、もう日本経済には後がない。財政ファイナンス懸念で長期金利が上がろうが、円安でコストプッシュ・インフレになろうが、物価目標2%が達成されるまでは日本の量的緩和は続くというのである。

筆者は景気回復による税収増で日本国債金利が上がるのはよいが、「悪い金利上昇」が起これば財務省・日銀は大胆な金融緩和を修正する可能性があると思っていた。しかし、2%の物価目標を達成するまでは、「過去の反省からなんだかんだと理由を付けて日銀は緩和を続けるだろう」というのが海外勢の見方だ。

財政が破綻している日本では日本国債の金利が上昇するとファイナンス・コストの上昇が心配されるが、財務省の予算編成ベースの長期(10年)国債金利は現在でも1.8%となっている。3月14日現在の長期金利は0.63%であり余裕の状況だ。悪い金利上昇を懸念するような状況ではない。現状、「日本の2%インフレ目標は達成不能」との見方が多いが、2%の物価目標を達成するにはかなりの時間を要することは間違いない。だから、「日本で資産バブルが起こることは間違いない」と投機筋の鼻息は荒い。

日本の長期(10年)国債金利(日足)

長期金利は3月14日現在0.63%と低い。悪い金利上昇の始まり? と言われる2%水準を超えてくるまでは資産バブル相場が続く可能性がある。


(出所:石原順)

早い話が、アベノミクスが成功しようが失敗しようが、アベノミクスの結末は良性であれ悪性であれ「インフレ」になるということである。ファンド勢がみているのは「デフレ脱却」ではなく「インフレ」だ。

このアベノミクスの本質に気づかないと、これからリスクヘッジをしない日本人は貧乏になる可能性がある。長く続いたデフレ経済は「何もしない人」たちを潤してきたが、これからは「現金バブル」の崩壊が起こる可能性がある。昨年9月からの円安の過程で、既に円の価値はドルからみて2割以上も目減りしている。インフレ期待による資産バブルは株や不動産の価格を押し上げるが、そういった資産を持っていないとインフレ分資産が目減りしていく。

先週、紹介した2枚のチャートをみてみよう。

日経平均株価(月足) 1989年からの長期抵抗線を上抜く

①2008年からの三角保合・②は1989年からの長期抵抗線


(出所:石原順)

日経平均株価は1989年からの抵抗線や月足の移動平均リボンを明確に上抜いてきた。これで焦っているのが株の運用者である。最近、筆者は株の運用者の愚痴ばかり聞いている。よく相場は「恐怖と欲望のゲーム」だと言われるが、株の運用者にとって現在は「恐怖と恐怖のゲーム」となっているらしい。

「自分だけ上昇相場についていけない。他の運用者にパフォーマンスで大きく負けている」「株式インデックスに大きく負けているのでクビになるかも知れない」「株のベンチマーク指標が上がっているので、売りたい(利食いたい)けど売れない」と、その焦り方は尋常ではない。買わない、あるいは買っていない脅迫観念が日毎に増大しており、「バーナンキやアベノミクスと心中するしかない」というトレーダーが増えている。

為替市場も同様である。為替は相手のあることなので、株ほど単純(株価上昇を反対する人はいない)ではないが、良い円安であれ悪い円安であれ、インフレは円の価値を下げていく可能性が大きい。直近の相場は米雇用統計を受けて96円71銭まで上昇した。上げ下げを繰り返しながらも、早晩97円~100円近辺まで上昇することになるだろう。

ドル/円(月足) 1982年からの長期抵抗線を上抜く

①は2007年からの長期抵抗線・②は1982年からの長期抵抗線


(出所:石原順)

「シェール革命」と「バーナンキ・プット」で2013年の米株やドル相場は大きく売られるような材料がない。ゴルディロックス・エコノミー(インフレでもなく景気後退でもない心地よい経済状態)というパリバショックやリーマン危機前に聞いた言葉がまた囁かれている。

しかし、運用者の多くは「危機がないのが危機だ」と述べている。相場に対する楽観(慢心)への恐怖だ。だから、相場に素直に乗れていない。「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(米株のインデックスSP500を対象とするオプション取引の値動きから算出)をみると、市場参加者は楽観しすぎているというのである。「VIX指数の11はやり過ぎというか低すぎる。そのうち跳ねて株の急落が起きるだろう」と楽観的状況からのブラックスワン的展開を心配する声が多い。

VIX指数(赤)とSP500(青)の推移 1995年~2013年


(出所:石原順)

VIX指数(週足) 1999年~2013年

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・55日標準偏差ボラティリティ(紫)
下段:VIX指数 チャートの赤はボラティリティ・パニック相場


(出所:石原順)

筆者も警戒していないわけではない。現在の楽観的な相場がその反動から一転悲観的に傾くリスクはあるだろう。VIX指数は20ポイント超えの反発はいつあってもおかしくない。ただし、現在の相場は2003年からリーマンショック前までの住宅(サブプライム)バブルの時のような「超楽観相場」とは様相が異なる。基本的にバブル相場はこれからも継続される可能性の方が大きい。

株の調整と言うことで言えば、筆者は「10月末買いの4月売り」という循環の方を気にしている。米株や日本株が4~5月に押しを入れるというのはよくあるパターンであり、4月以降の株や株価と連動するクロス円の調整には注意を払いたい。

日経平均とNYダウの月別推移と「半年間」運用した場合の運用開始月別のリターン(戦後62年間の平均)=「180日ルール」

『1949年に戦後の株式市場が再開されて以来、62年間の経験則で「上がり始めるのは10月」という月別変動パターンが見て取れる』『年初から4月末に掛けて5.8%値上がりし、4月末から10月末に掛けては1.9%の上昇にとどまり、10月末から年末に掛けて2.9%値上がりするというのが、2011年までの62年間の平均パターン』


(出所:『日本株転機のシグナル』前田昌孝)

為替市場は投機筋が「ポンド/ドル」と「ドル/円」相場に群がっている。ポンドも円も「追加の量的緩和観測」で売られている。ドル/円は調整相場を経て、円安トレンドが発生している。NY株連動の豪ドル/円相場も堅調だ。ここからもう一段の円安に期待したい。

ポンド/ドル(日足) トレンド相場

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:26日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

ドル/円(日足) トレンド相場

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:26日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足) トレンド相場

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:26日ボリンジャーバンド1シグマ(緑)


(出所:石原順)

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