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第116回 ヘッジファンドの意外な話

2010年1月15日

お金は単純なロジックでしか動かない。最近の円相場は米国債のトレードをやっているのと同じである。米国金利の動きがすべてだ。期待はずれに終わった米雇用統計や米小売売上高などの経済指標も瞬時に金利に織り込まれる。

米国の雇用の増減と失業率
米長期金利とドル/円
(出所:石原順)

以下のチャートはここ数年の円相場が10年国債の金利差と連動していることを示すものである。

米国10年国債と日本10年国債の金利差の推移とドル/円相場

ドル/円相場は長期金利差で決まる


(出所:石原順)

欧州10年国債と日本10年国債の金利差の推移とユーロ/円相場

クロス円相場も長期金利差で決まる


(出所:石原順)

ドル/円相場は、先週のレポートに書いた13日と21日移動平均線のバンド(帯=水色の部分)を終値で切ってしまったので、現在は調整相場となっている。この13日と21日の移動平均線バンドはトレンドフォロー(順張り)系のヘッジファンドの多くが注目している指標である。

ドル/円(日足) 13日と21日の移動平均バンド(水色の帯)


(出所:楽天証券マーケットスピード)

サポートは切ったものの、ドル/円相場の14日ADXや26日標準偏差ボラティリティは上昇していない。現在のドル下落はトレンド(方向性をもった動き)ではなく、ドル買われすぎの調整的な動きと思われるが、果たしてどうだろうか?

14日のRSIは50を割り込んでおり、テクニカル的な買われ過ぎ状況は解消された。26日標準偏差ボラティリティや14日ADXのピークアウトが示唆するのは、ボックス的な調整相場への移行である。今後、26日標準偏差ボラティリティや14日ADXが大きく上昇する時が次のトレンドである。それが円安なのか円高なのかは、まだわからない。

ドル/円(日足)

上段:14日RSI
下段:26日標準偏差ボラティリティ(青)14日ADX(緑)


(出所:石原順)

14日ADXや26日標準偏差ボラティリティが同時に上昇している局面(黄色の部分)の相場は強いトレンドを持っている。「15回 標準偏差ボラティリティでみるトレンドの判定」にも書いたが、現在の相場がトレンド期なのか保合(レンジ)期なのかの判定を、筆者は26日標準偏差ボラティリティや14日ADXをみて行っている。トレンドフォロー(順張り)派の投資家はこの黄色の部分で思い切って勝負に出るのが相場のセオリーである。

トレンドのない相場の期間(黄色以外の部分)は、「相場が特定のレンジに入っていれば儲かるポジション」をシカゴのオプション市場で作っているが、筆者が関係するオプションファンドは昨年、ボラティリティ(相場変動率)の大幅低下により年率118%のリターンを記録した。相場が動かないと儲かる人も世の中にはいるのである。契約上の守秘義務があり、詳しいことは書けないが、トレードで使っている指標は26日・26週の標準偏差ボラティリティとATRである。

さて、今週の相場は「1時間足」などの短期トレードはトレンドの発生する局面が多く、短期売買者には比較的収益を上げやすい局面であった。相場が21時間ボリンジャーバンドの1σ(緑のライン)を飛び出す局面(赤枠)を狙って、今後もこまめにトレードしていきたい。

ドル/円(1時間足) 21時間ボリンジャーバンド1σの飛び出し局面

移動平均線やボリンジャーバンドに「傾き」がないときは取引しない。


(出所:楽天証券マーケットスピード)

ドル/円(1時間足) 21時間ボリンジャーバンド1σと14時間ADX

相場のダマシを避け、より慎重に取引するには14時間ADXの上昇局面だけを狙う。


(出所:石原順)

今週はドル/円が売られたが、筆者はドルの押し目買いとの認識を変えていない。世間では円高予想が多いようだが、前年4Q(第4四半期)に大幅な円高が続いたときには、次の年の1~2月期は巻き戻しとなることが多いという確率に賭けて、しばらくドル/円の押し目買いを継続したい。

ドル/円(月足) 10~12月期のドル安相場と翌年2月までの相場

2008年は失敗


(出所:石原順)

最近のヘッジファンドの動きを紹介しておこう。現在、有力ヘッジファンド数社が、米国の長期金利上昇に賭ける投機的ポジションを構築しており、特にリスクを限定する形でのオプション購入が目立っている。「FRBによる景気刺激策でインフレ期待から金利が上昇する」というシナリオだ。これらのファンドはドル/円相場が米国の長期金利と連動していることから、ドル/円の買いも行っているところが多い。概ね「株買い・ドル買い・債券売り」のポートフォリオを組んでいるようだ。10年国債金利上昇のターゲットは4.0%~4.2%と言われている。

米10年国債金利(日足)


(出所:石原順)

また、いくつかの海外ファンドや海外年金および中国勢は、“日本株”や“日本の不動産”にも大きな興味をもっている。日本株の出遅れ感(世界で最も上がっていない)もあるが、彼らは日本のデフレ持続に限界をみているようだ。過去20年、日本株の長期投資は無残な結果に終わっているが、歴史的なデフレ期間の限界(概ね20年~25年)から、そろそろ日本経済もデフレ脱却の時期が近づいていると考えているようである。

1929年の大恐慌で米国は失われた20年を経験した。日本は1990年のバブル崩壊から失われた20年の渦中に現在ある。しかし、筆者は「NYダウと日経平均のバブル崩壊のアナログチャート」を見ていると、そろそろ日本株の買いも面白いのではないかと思っている。

米国の失われた20年 1929年~1948年

NYダウ1928-1954年(日足)米国の失われた20年 第二次世界大戦=公共事業 1939-1945(昭和14年~昭和20年)
(出所:石原順)

日本の失われた20年 1990年~2009年

日経平均株価1982-2010年 過去20年、長期投資は無残な結果に終わっているが、そろそろデフレ持統の限界(概ね20年)か?
(出所:石原順)

日経平均株価とNYダウのアナログモデル

この先どうなるでしょうか…?
(出所:石原順)

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