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第39回 Cash is King 資産デフレと現金のバブル

2008年9月5日

先週のレポートで「世界的な景気後退でインフレが終息しデフレ色が強まるなら、投資家は何もしなくてよい。そういった局面は現金がバブルするからだ。オーバーレバレッジの解消にともなってスケールダウンが始まると、運用の世界では資産売却と現金化に拍車がかかる。現在、世界の市場で最も輝いて見える商品はCASH=現金なのである。基軸通貨であるドルは世界の現金なので、現在そこに運用資金が滞留している」と述べたが、ドミノ倒しのように不動産・株式・コモディティ・ドル安・円安といったバブル相場が連鎖的に崩壊中である。

9月4日のメリルリンチのレポートによると、「ニューヨーク証券取引所のブローカーの口座にある当座資金の額は過去最高水準にある」「ヘッジファンドは借り入れを減らし現金残高は過去最高になっている」らしいが、ファンドや機関投資家の持ち株比率が7割を超えているニューヨーク証券取引所の現金残高をみてもファンドバブル崩壊は明らかである。今は「Cash is king」の状況だ。

世界的な景気後退が誰の目にも明らかとなりつつある現在、デカップリング・シナリオは崩壊中である。現在、売る商品はあっても買う商品は短期の債券くらいしか見あたらない。投資サイクルから言えば、通常、景気後退の前半の局面は現金がバブルする。したがって、クレジットデリバティブや仕組み債、あるいは代替投資的な複雑なロジックの金融商品は敬遠され、安全性と流動性を備えた単純な金融商品が嗜好されよう。この「単純への逃避」は今後しばらく続くことになる。

「へッジファンド、年初から7月まで成績は1990年以来で最悪」(WSJ)「ヘッジファンドのアティカス・キャピタルが年初から50億ドル余りの損失」(ブルームバーグ)とファンドの苦戦が伝えられているが、運用パフォーマンスの悪化→解約・解散→資産売却といった悪循環が続いている。ここ数年ファンド資本主義が続いてきたが、第31回「レバレッジの解消とセーフティーネット」で述べたように、ファンドを使ったオーバーレバレッジのビジネスモデルはすでに崩壊している。「欧米の銀行が過去5年間に展開してきたレバレッジを拡大すればするほど儲かる金融ビジネスのモデルは破綻した。バブル崩壊という循環的な変化ではなくビジネスモデル自体の破綻である」と英銀行協会会長のスティーブン・グリーンが述べているように、金融機関が新しい収益(ビジネス)モデルを作らない限り世界経済の低迷は続く。金融機関の貸し渋りが世界同時に起こっており、経済の血液ともいうべき金融機関が機能麻痺に陥っているうちはリスクマネーが縮小していく。

このファンド資本主義の崩壊で現在バブルしているのが、世界の現金である米国のドルである。17兆6000億ドルを超えるといわれる国際分散投資資金(米ドル以外の通貨資産)の一部が米国に還流してくるだけでも、ドル高の圧力は相当なものになる。敗戦処理によるリパトリエーション(海外資産を売却し自国に資金を戻すこと)は最も強力なドル買い要因である。日本でもリパトリエーションによる円高があった。1998年9月のヘッジファンドLTCMの破綻を契機とする超円高は強烈であったし、1990年日本のバブル崩壊時には、景気後退にもかかわらず海外投資の引き上げで160円(1990年)から79円(1995年)まで大幅な円高進行となった。

ドル/円(日足)とリパトリエーションによる通貨高局面(黄色)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

したがって、リパトリエーションから発生するドル買い圧力を軽視しないほうがよいだろう。日本の投資家にとって残念なのは、現在ドル安・円安(バブル)の巻き戻しが起きているので、外為市場はドル高・円高バイアスになってしまうことだ。しばらくはユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円、ニュージランド /円といったクロス円通貨を値頃感で売買するのは危険である。クロス円通貨ペアの年内の戻りはテクニカルなリバウンドに限られよう。

比較的堅調な推移となっている新興国通貨も、筆者の情報網ではヘッジファンドが売り崩しを狙っていると聞いている。コモディティの下落で膨大な損をこうむったヘッジファンドは9月に「日本人のポジションの偏りを突いて円買いで一発勝負を狙っている」と8月から囁かれていたが、産業インフラが未成熟な新興国通貨は同時多発的に売りが集中するので投資家はレバレッジを掛けすぎないように注意していただきたい。市場は暴力的であり常に弱いところを狙ってくる。1997年のアジア危機・1998年のロシア危機を経験している筆者としては、なんだか気味が悪い感じがしている。

フレディマックとファニーメイのXデーが噂になっているが、金融市場の動揺は当面続くだろう。9月4日の市場ではNYダウが345ドル安となったが、米国株はPERが高すぎて、今後しばらくは売られすぎによるテクニカルなリバウンドか空売り規制くらいしか買い材料はない。11月の大統領選挙まで米国は政治的空白が続き財政出動はやりにくい。とりあえず金融危機をしのぐにはセーフティーネットの強化と投機規制しかないが、最終的には利下げまで追い込まれる可能性があろう。当面経済のファンダメンタルズは改善しないので、この先は「投機筋の売りVS当局の対策の構図」となる。ポールソン米財務長官率いる「金融市場のための大統領ワーキンググループ」(President's Working Group on Financial Markets)の動向に注意したい。8月19日に米証券取引委員会(SEC)のコックス委員長は「投機的な空売りを規制するための新たな規則を今後数週間以内に提案する」と発表しているが、空売り規制でも下落が止まらないようだと事態は深刻である。

外為市場はリスクマネーの急激な収縮をうけてドル高・円高が進行している。9月4日の高値からレポートを書いている現在(9月5日7:00AM)までのクロス円の下落は、豪ドル/円(91.02→85.89)・ニュージランド/円(74.60→69.90)・ユーロ/円(157.76→150.60)・ポンド/円(193.61→186.22)と凄まじい下げである。この円高の最大の要因は、クリック365のポジションに代表される大幅に偏った日本人のキャリー取引のポジションを狙った投機筋のストップロス・ハンティングにある。現在の局面の投資判断は値頃感ではなくポジションの偏りが解消されたか否かが重要となろう。このところくどいほど書いているが、年末までのキャリートレードはリスクが相当高い。

毎度の繰り返しになるが、ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)これまで、円安の持続、すなわち円安トレンドの発生は低変動率(変動幅)が最重要ポイントであることを述べてきた。キャリー取引を行っている読者のみなさんが今回の円高を回避されたかどうか心配だが、今後もATR(アベレージトゥルーレンジ)の推移を注視していただきたい。一方、デイトレーダーにとっては現在の相場は絶好の収益機会である。変動率(変動幅)の上昇はデイトレーダーにとって最高の環境である。

投機であれ金利取りであれ、相場の要諦は「防御」であり「資産管理」が命である。金利収益を主眼としたキャリー取引は有効な投資手法だが、長期の価格変動に耐えられるレバレッジはせいぜい2倍程度である。(第5回 「生きのびるためのデザインー長期計画―」参照)したがって、レバレッジ2倍以上の取引はすべて投機であり、くれぐれも資産管理を徹底していただきたい。相場は1に損切り、2に損切り、3、4がなくて5に損切りである。

円からの海外投資は昨年までは成功したが、現在は5年サイクルからみた長期的なトレンドは円高に転換している。過去の成功体験から投資家は円売りバイアスがかかりすぎている状態にある。キャリートレードが一斉に巻き戻された98年の相場はおおよそ市場予想の埒外にあったが、今後3年程度は常にその危険にさらされているのである。投資家が取りうるリスク額は破産のシミュレーションから始まる。月に一桁のパーセンテージ以上の元本を減らしてはいけない。

筆者は1987年のブラックマンデーの年から20年にわたって相場の世界と関わってきた。この20年間というもの失敗の連続である。相場にはゴールデンルールや絶対の法則などないので、ストップロスを徹底した資産管理が一番重要だ。利益のコントロールは不可能だが、リスクのコントロールは可能である。言うはたやすく、行うは難しい。しかし、リスクマネージメントのない投資に成功はない。

ユーロ/円(日足)と支持線


(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(日足)と支持線


(出所:石原順、ブルームバーグ)

円相場とATRの推移

ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。この手法は将来の収益を保証するものではなく、ATR上昇で円安、ATR下落で円高となることも多々あるので注意されたい。現在のような信用収縮過程では変動率が上昇し円高になりやすい。変動幅上昇過程での円売りはやはり分が悪い。

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ランド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。


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