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第190回 バブルを未然に防ごうとするインド

2009年11月4日

今日のまとめ

  1. インド準備銀行はそろそろブレーキを踏むことを考え始めている

  2. 焦付きに対する引当比率の引き上げ指導が開始された

  3. 銀行側は積極的な経営姿勢を維持している

次々にバブル防止策を打ち出すインド準備銀行

春先の総選挙で与党連合が圧勝して以来、世界の事業会社や機関投資家はインドに熱いまなざしを向けています。選挙結果が判明した翌月曜日の立ち合いでムンバイ市場は+18%もの暴騰を演じたにも関わらず、その後も押し目らしい押し目も無いままにずっと堅調な相場が続いてきました。しかしここへきてそうしたインド・ブームも少し不都合な事の方が大きくなり始めています。

そのひとつは為替です。インド・ルピーは去年のリーマン・ショックの後のリパトリエーション(資金引き揚げ)現象、ならびにサティヤム・コンピュータの粉飾決算事件などの影響で基調としてはルピー安だったのですが、3月を境にルピー高に転じており、ITアウトソーシングをはじめとする輸出企業にとって頭痛の種となっていました。

インド・ルピー(対ドル、RatesFX)

また過度の融資の成長はバブルの種を蒔くことになります。そこでインド準備銀行は財政出動による景気刺激策は維持しつつも、その一方で銀行に対し、リザーブ・リクワイヤメントの引き上げ、ならびに焦付きローンへの引当比率の引き上げを通じてバブルを未然に防ごうとしています。

銀行の資産内容

現在のインドの銀行各行の遅延ローンの金額は下のグラフのようになっています。

遅延ローン(1000万ルピー、各行のディスクロージャーより)

もちろん、規模の大きい銀行も、小さい銀行もいっしょくたにして比較することは出来ません。そこで現在の各行の焦付きローンの引当比率を示したのが次のグラフです。

焦付き引当比率(%、各行のディスクロージャーより)

インド準備銀行の新しい指導では引当比率を来年秋までに70%に持って行くようにというガイドラインが示されました。上のグラフを見ると例えばHDFC銀行のように既に現時点で70%の引当率をクリアしている銀行も散見されます。しかしその一方でICICI銀行のように引当率が50%程度のところもあります。そこで新しいガイドラインに沿った形で引当率を引き上げるとして、不足額が幾らかを計算したのが次のグラフです。

インド準備銀行の新引当指導に準拠した場合の引当余剰(+)ないしは不足(-)額(1000万ルピー、各行のディスクロージャーより)

ステート・バンク・オブ・インディアとICICI銀行の不足額が大きいことがわかります。これをおのおのの銀行の税引き前利益の額と比較するとステート・バンク・オブ・インディアの場合、利益の約27%が、ICICI銀行の場合、利益の約34%が吹っ飛ぶ計算になります。

このような一連の指導の目的はいざという時の備えを積み増すということに加えて、過度の融資などによるバランスシートの膨張を抑える意図があります。

インド準備銀行の作戦は上手く行くでしょうか?

先日決算発表したICICI銀行のチャンダ・コーチャーCEOの決算インタビューを聞く限りでは同行はアグレッシブな融資経営拡大路線を修正する意図は無いように聞こえます。

ICICI銀行は今期焦付きの目立った無担保小口貸付に関してはローン残高を圧縮する予定ですが、住宅、自動車、企業向けローンはどんどん拡大してゆくとコメントしていました。

また、これはICICI銀行のみではなく、インドの、とりわけ地方の銀行に顕著な傾向なのですが、近年、庶民の間でようやく銀行に預金を預けるという習慣が定着しはじめ、その結果、小口預金から構成されるコア・デポジットが増加しつつあります。

コア・デポジットは低コストで、かつ安定的な貸付原資になりますので、これが増えることは貸付利鞘の点でも銀行経営の安定という点でも朗報だと思います。銀行監督当局からの引締めにもかかわらず銀行側が積極姿勢を維持している理由は銀行サービスの地方への浸透と、それによる預金増というポジティブなトレンドを見届けているからに他なりません。


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