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第163回 先進国のお手本となる中国の銀行行政

2009年4月10日

今日のまとめ

  1. プロ・シクリカリティーの議論とは?
  2. 雨の日のための準備を怠らなかった中国
  3. 次に誰が信頼されるパートナーとなるかは自明だ

外交問題評議会でのスピーチ

ベン・バーナンキ連邦準備制度(FRB)議長が3月10日に外交問題評議会(CFR)でスピーチを行い、この日を境に世界のマーケットは急反発しました。

外交問題評議会は雑誌『フォーリン・アフェアーズ』の出版元でもあり、アメリカの実業界が政府関係者と政策討論する重要な場です。従ってCFRにおける議論はアメリカ国内のみならず世界の政府関係者から注意深く観察されています。

さて、バーナンキ議長は3月10日のスピーチでいろいろな事柄に言及しましたが、その中で特にマスコミや日本の市場関係者に良く伝えられなかった発言はプロ・シクリカリティー(Pro-cyclicality)の問題です。プロ・シクリカリティーというのは平易な言い方に直せば、「悪い時に悪いことが重なるような規制や金融行政をわざわざやってしまうこと」という風に形容できるでしょう。

つまりサブプライム問題でアメリカの銀行の体力が衰えている今日このごろ、わざわざこのタイミングで「銀行の自己資本比率規制は低すぎる」とか「会計ルールをもっと厳格にしなければ」などという議論がどんどん出てきてしまうことを具体的には指しているのです。

本当なら、そういう事は景気が良くて銀行の体力が充実しているときに「備えあれば憂いなし」の心構えから準備するべき事であり、今のように問題が起きてしまってからでは「後の祭り」なのです。

つまりバーナンキ議長は「この局面で規制を強化するのはただでさえ下降線に入っている世界経済の落ち込みを、一層助長(=つまりpro- cyclical)する結果に終わるだけだ」と主張したわけです。このバーナンキ議長のスピーチ以降、議会による「覆水を盆に返そうとするような」低レベルの発言は鳴りをひそめました。

人民銀行のG20宣言

さて、中国の人民銀行は先のG20に先立って中国のG20に向けての抱負を盛り込んだステートメント(宣言)を発表しましたが、その中に「中国はプロ・シクリカリティーの問題には一昨年の景気が良かった頃にしっかり取り組んできた」という一文が盛り込まれてありました。これはバーナンキ議長のCFRでの呼びかけに答えるものであることは間違いありません。つまり中国は「われわれは、ちゃんとやるべきことをやっている。」と主張したわけです。

バランスシートのリストラクチャリングは好景気時にやるべきだ

それでは具体的に中国の銀行セクターでのプロ・シクリカリティー問題への取組というのは何を指すのでしょうか?それは景気が良い時を選んで不良債権の焦げ付きに悩まされていた中国の四大銀行に対して政府が資本を注入し、回収の見込みのない債権を損金計上するとともに、株価が高いときにちゃんと公募増資して自己資本を補強しておくということを指します。

公募のタイミングという事に関する評価

我々投資家は一般に有償公募増資を嫌います。公募は株式の供給を増やし、需給関係を壊すことからそれが嫌気されるのは当然ですが、逆にイシュアー(発行体)の側からすれば多少人々に嫌われてもやっておかねばならないことなのです。

例えば製造業の場合、原料をなるべく安いときに仕込んでおいて景気の良い時に完成品を売るということは誰にでも納得できる企業行動です。いまそれを公募増資に置き換えて考えると経済の状態が良く、企業も儲かっており、株価が高いときというのは逆に資金調達のコストは安い状態なのです。なぜなら高い株価で増資すると同じ金額を調達するにも発行する株数は少なくて済むからです。難しい言葉で言えば「希釈化が少なくて済む」というわけです。

銀行にとって自己資本は融資(=それはメーカーの場合の「商品」に相当します)を実行するための「原料」です。原料はコストが安いときに仕込むに越したことはありません。つまり中国の銀行はどこもコストが安い時に沢山原料を手当て済みになっているのです。

ゴールドマンの中国工商銀行株売却取りやめでアメリカの投資は我に返った

先々週、「ゴールドマン・サックス(GSが中国工商銀行(1398)の持ち株を場で処分するのではないか?」という観測がニューヨーク市場 に走りました。バンク・オブ・アメリカ(BAC)が中国建設銀行(0939)の株を一部処分し、UBSとロイヤル・バンク・オブ・スコットラン ド(RBS)が中国銀行(3988)の株式を処分した経緯などから考えて、「背に腹は代えられない」と投資家は覚悟を決めていたわけです。しか しゴールドマン・サックスは如何に経営環境が厳しいとはいえ、わざわざ安値を叩いて本来「中身の良い」中国工商銀行の株を処分するような「ダサ い」ことはやりたくなかったに違いありません。ゴールドマンが「中国工商銀行の株式は保有し続ける」と宣言したことでアメリカの投資家は(そう か、ゴールドマンにとって中国工商銀行は「虎の子」なんだな)とハッと我に返ったわけです。そうしてよく考えてみれば中国の銀行は上に書いたよ うに「コストが安いときに原料を仕込んでいる」ことに気づいたわけです。香港に上場されている中国株に対して、アメリカの投資家の関心が俄然高 まったのはこのためです。

投資銀行の「飯のタネ」

さて、これまで書いてきたように中国の銀行セクターは今回の世界金融危機に際して極めて準備万端整った立場でこれに臨んでいます。従って回復も早いでしょう。世界の資本市場が安定すればいずれ予定表に乗ってくるのは中国農業銀行のIPOです。その場合、折角、安定株主になってもらおうと考えて中国銀行や中国建設銀行が西側銀行に割り当てた株式が今回のような形で市場に出てきてしまったことは中国の金融関係者は後々まで忘れないと思います。バンク・オブ・ アメリカやUBSなどが中国の金融関係者の信頼を取り戻すのは容易ではないと思います。


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