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第142回 新興国の金融機関を再点検する

2008年10月6日

今日のまとめ

  1. 中国を除く新興国の銀行は一般にコア・デポジットが貧弱である
  2. 金利の変動は利鞘縮小リスクを招来する
  3. 景気後退はローンの焦げ付きリスクを高める

過去の新興国の危機との違い

いまアメリカの金融界は金融システムに対する不安で揺れています。アメリカの金融不安は新興国へ飛び火するでしょうか? 今日はその可能性について考えてみたいと思います。

その前に指摘しておきたいのですが、金融不安がアメリカから新興国へ飛び火するというパターンは、実は過去とは違う順番です。昔なら、先ず新興国がおかしくなって、それが先進国の金融機関を脅かすという順番だったのです。これは1980年代のラテンアメリカの債務危機の場合もそうですし、1998年のルーブル危機もそうでした。

新興国の金融機関は住宅ローン関連の証券化商品への関与も限定的であり、その意味では一見、今回の危機には巻き込まれていないように見えます。しかしもう少し詳しく見ると、実はリスクと背中合わせであることがわかるのです。

リスクその1 ファンディングの問題

皆さんは「コア・デポジット」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは小口預金のような、銀行員の方がコツコツ集金して積み上げた預金のことを指します。日本の銀行はこの小口預金がファンディング(=貸し付けを行う際の原資の調達のことを指します)の大半を占めています。コア・デポジットの比率が高いことは良いことです。なぜなら往々にしてそのコストは低いし(=これは預金金利が低いことを意味します)、市場の状態に左右されにくい、安定的な資金だからです。

翻って世界の銀行、とりわけ新興国の銀行を見るとこのコア・デポジットの比率が非常に低い場合が多いです。我々日本人の感覚だと社会人になって自分の銀行の口座を開くと、先ず給与の振込みなど、貯金の面で銀行のお世話になり、住宅ローンなど借りる方で銀行にお世話になるのは、人生のもう少し後の局面であるということが一般的だと思います。

新興国の場合、庶民と銀行の「お付き合い」は必ずしも上のような順序を取りません。そもそも銀行に対する信頼感が低いので、銀行にお金を預けるという習慣自体がつい最近始まったばかりなのです。もちろん、コア・デポジットを積み上げることが好ましいことは新興国の銀行の経営者も皆、理解しています。しかし全般的に言えばコア・デポジットの充実は遅々として立ち遅れてきたと言わざるを得ません。例えばインドの銀行の場合、コア・デポジット対融資比率は3割程度です。

この一方で融資に対する需要は近年の新興国の好景気でどんどん増えました。ロシア、インド、ブラジルなどの国では融資残高は年々20%から35%程度も成長してきたのです。すると足らない差額は資本市場から調達してくるということが常態化します。ロシアの銀行業界は去年、総額にして700億ドル以上のファンディングを海外の市場から資金を引っ張ってくることで間に合わせました。市場から資金を調達してくると、資本市場が現在のように機能不全を起こしてしまうと借り換えがしにくくなります。また、為替市場が変動し、新興国の通貨の価値が下落すると調達した資金を返す際に返済負担が増えてしまうリスクもあります。今回の危機でもすでにロシアではこうした問題が生じ、ロシア政府がズベルバンク、VTBなど主要銀行に資金を用立てるなどの救済策が発表されました。

なお、中国の銀行は潤沢な預金を抱えているのでファンディングの問題はありません。

リスクその2 インフレと金利の問題

原油高からくるインフレ・プレッシャーを受けて、新興国ではこのところ各国とも金利の引き上げ局面にありました。インドでは8月の卸売物価指数は12.3%と、過去13年で最も高くなっています。インド準備銀行は6月と7月に都合3回にわたってレポ・レートを引き上げ、9%にしています。高インフレは金利の上昇を招き、金利が上昇すると借り手は利払いに苦しみます。また新規の借り入れ需要も減ります。さらに預金の期日が短い場合、金利上昇に合わせてどんどん預金の金利を上げないと預金が逃げてしまうリスクもあります。インドのICICI銀行の場合、下のグラフのように、定期預金の期日は1年以内の短期のものが殆どで、コア・デポジットのリプライシング(=ここでは金利が上昇すること)がどんどん進行しています。

一方、同行の融資のポートフォリオを見ると、住宅ローンにせよ、プロジェクト・ファイナンスにせよ、長期の貸付の方が多いのです。つまり貸し付けの側の平均的な融資期間と調達の側の期限がミスマッチを起こしている場合が多いのです。すると上手にリスクを管理しないと金利上昇局面では貸付利鞘がどんどん縮小しかねません。

なおブラジルは昔からハイパー・インフレを経験してきたのでブラデスコイタウ銀行、ウニバンコなどの現地主要行は、この手のリスク管理にかけては他の新興国の銀行より洗練されています。

リスクその3 景気の減速

インドでは過去3年間は毎年GDP成長率が9%を越えていました。しかし今年の第2四半期(6月期)は7.9%へと減速しています。住宅、自動車向けのローンも減速しています。このように景気が減速した場合、それが新興国の貸付ポートフォリオにどういう影響を与えるかはこれから細心の注意を払う必要があります。インドの場合、顧客の信用データ・ベースが未熟であり、信用リスクは一般に先進国より高いです。さらにそもそも消費者への貸付という事自体の歴史が浅いため、景気後退期にどのくらい焦げ付きが出るかという予測自体がたいへん困難な状態です。

ロシアの場合、不動産開発業者への貸付はすでに一部焦げ付きはじめているという報道があります。

中国の銀行は歴史的に法人や国有企業への貸付の比率が高く、個人への貸付の比率が低いです。このことは不動産開発や建設など、景気に敏感な貸付先が焦げ付くリスクが高いことを示唆していると思います。


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