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第127回 中国の娯楽・レジャー産業

2008年5月7日

今日のまとめ

  1. オリンピックは資本集約的なレジャー産業の出現を可能にする
  2. オリンピックは「起点」であって「終点」ではない
  3. 娯楽・レジャー株は割安に放置されている

北京五輪は娯楽・レジャー株を見直す好機

日本で『観光白書』が創刊されたのは東京オリンピックの年、つまり1964年です。これはオリンピックのような国家の行事が娯楽・レジャー産業にどういう影響を与えるかを考える上で示唆に富む出来事だったと思います。

もちろん、オリンピック以前の日本人だって余暇を楽しんでいただろうし、年配の方なら楽しい思い出もいろいろあると思います。戦後の娯楽やレジャーに関する社会現象を思いつくままに書き出してみると、例えば1940年代後半には競輪・競馬のブームがありました。民放が最初にテレビ放送を開始したのは 1953年です。1950年代後半になると麻雀がブームになり、深夜喫茶、歌声喫茶などが繁盛しました。

しかしオリンピックの直前・直後あたりからの日本のレジャーの在り方はそれまでとは少し違った様相を呈し始めます。例えばこの頃からホテルの建設ブームが始まりました。そして1968年には最初の海外団体パック旅行の『ルック』が発売されました。それらの新しいレジャーはいずれも高速道路や空港などの社会的インフラストラクチャーが整備されて初めて実現可能なサービスや商品です。また娯楽が「レジャー産業」として事業化される必要が出てきたのはそれらのビジネスが以前に比べて資本集約的、つまり初期投資に巨額の資金を必要とするようになったからに他なりません。オリンピックのようなイベントはそういう巨額の投資を採算的に可能にする「特需」を創り出すという意味でレジャー産業の産婆の役割を果たしているわけです。

いま中国株に目を向けると、まさしくそういう新しい産業が飛躍しようとしています。それらの多くの企業は北京五輪を前に株式市場で資金を調達し、施設や設備を購入し、それらの先行投資の果実の収穫の機会を待ち構えている局面です。この場合、それらのビジネスは北京五輪という需要機会を想定してキャパシティーを設定していますから、現時点では必ずしも稼働率や価格の面で所期の需要をフルに享受しているとは言えないケースもあります。しかしオリンピックが終わってしまったら、それらのビジネスも終わりになるのかと言えば、それはそんなことはありません。日本の例を見てもわかる通り、五輪は「終点」ではなく、「起点」なのです。

その意味では現在の中国の娯楽・レジャー関連株というのは大変興味深い立場に置かれています。なぜなら株式を公開した当初の興奮が去って、人気の圏外に放置されている銘柄が多いからです。今日はそんな人気離散している企業の幾つかに焦点を当ててみたいと思います。

ホーム・インズ&ホテルズ(ティッカー:HMIN)

同社はビジネス・ホテルのフランチャイズを展開しています。同社のホテルのモットーは便利なロケーションにリーズナブルな価格のホテルを展開するという事です。現在、中国の66都市で266のホテルを展開しています。これを2011年頃までに1000ホテルにまで伸ばすというのが同社の長期の経営計画です。

しかし目下のところ同社の株価は低迷しています。その理由は去年の11月に買収した「トップスター」ホテル・チェーンのパフォーマンスが芳しくなく、ホーム・インズの経営陣のM&Aの手腕に投資家が疑問を抱いていること、それから積極的な地方都市への展開が客室単価、マージン、客室稼働率などの経営指標を短期的に押し下げていることなどが原因です。

「トップスター」チェーンは去年の第4四半期の客室稼働率が56%しかありませんでした。これはホーム・インズの92%に比べると大変悪い数字です。買収が発表された時点での客室稼働率のガイダンスより、実際の買収後の数字が悪化していた事も投資家が動転した理由です。しかしこれはもともと第4四半期がホテルのビジネス自体が低調な時期であるという季節要因に拠るところが大きく、買収後の統合に失敗したという風に結論付けるのは性急過ぎると思います。また「トップスター」買収に絡む特別損失が計上されていますが、その大部分は「トップスター」チェーンのホテル会計・予約システムのソフトウエアを廃棄処分にし、代わりにホーム・インズのシステムに組み込むための、最初から予想された費用であり、この損はあくまでもノン・キャッシュ、つまり評価上の損失であり、実損ではありません。

ホーム・インズ本体の話に戻ると地方都市への積極進出はマージンの悪化を招いています。この理由は地方で好立地のホテルを買収し、部屋の内装や看板をホーム・インズのブランドにリニューアルする際に必要となる改装費は都市でも地方でも一定であることが主な理由です。地方は客室単価が安いので自ずとマージンは悪くなってしまいます。また、全社的な客室単価(RevPAR)が圧迫を受けているのは大都市での客室料金が値下げプレッシャーを受けているからではなくて、地方への展開で客室単価の比較的安い物件が同社のポートフォリオにどんどん追加されていることが原因です。

ホーム・インズの足許の業績は第1四半期に中国を襲った記録的な豪雪の影響でかなり悪くなると思われます。従ってウォール街の投資家は目先、同社株を敬遠しています。ただ、記録的な豪雪というのは一時的な要因であって同社の長期的な財務的健全性とは何の関係もない材料です。

メルコPBLエンターテイメント(ティッカー:MPEL)

同社はオーストラリアのPBLと香港のメルコとの間のカジノ・ジョイント・ベンチャーでマカオにおける事業に特化しています。同社の現在の主力カジノは『クラウン・マカオ』です。タイパ島に位置する同カジノは主にハイ・ローラーと呼ばれる裕福層をターゲットにした施設です。これとは別にコータイ通り沿いの、ラスベガス・サンズ(ティッカー:LVS)の『ベネチアン・マカオ』の真向かいに『シティ・オブ・ドリームス』という巨大カジノを現在建設中であり、こちらの方は来年の春に開業の予定です。

同社の『クラウン・マカオ』はロケーションが悪いこと、中途半端な規模であることなどの理由から相当苦戦するだろうと思われてきました。メルコPBLの経営陣はそうした懸念に応えるため、すぐに『クラウン・マカオ』をハイ・ローラー向けに特化したカジノへと改装し、同時にジャンケット(団体ツアー)のオペレーターと提携し徹底的な集客戦略を展開しました。その結果、『クラウン・マカオ』はとりわけハイ・ローラーのセグメントでは強く、現在第1位の市場占有率(VIPで21%)を誇っています。この結果、同社はマカオで「一番駄目な会社」から「最もマークすべき強敵」へと変身しました。メルコPBLの株式は上場以来全く良いところ無しの展開でしたが、今はマカオで一番勢いのあるカジノになっているので株価的にも期待して良いと思います。

中国南方航空(ティッカー:ZNH)

同社は機体キャパシティー、旅客数などの指標で見ると中国最大の航空会社です。また安全運行のトラックレコードでも中国で第1位です。同社は広州と北京をハブ空港としています。売上高構成比は国内旅客が74.9%、海外旅客が14.1%、貨物が6.8%、香港・マカオ旅客が2.0%、その他2.2%となっています。

2006年から2007年にかけての旅客運行キロ数(RPK)は17.5%成長し817億RPKに達しています。一方、キャパシティーの指標である座席キロ数(ASK)は同期間に13.1%成長し1097億ASKに達しています。キャパシティーの増加より旅客運行キロ数の伸びの方が高かった為、ロードファクター(稼働率)は2006年の71.7%から2007年は74.5%へと改善しています。さらに顧客単価を加味したイールドで見ると2007年は 0.61人民元/RPKと2006年の0.60人民元/RPKより若干改善しています。

つまり同社は中国の経済成長そのものよりかなり早いペースで業容を拡張しているわけですが、その拡張に合わせて旅客数もきちんと増えており、収益を犠牲にしていないということです。同社の営業費用のうちフライト運行費用は54.9%を占めており、その中でもジェット燃料費は63%を占めて最大の支出項目です。2006年から2007年にかけてのジェット燃料費の増加は13.1%であり、便数の増加などを考えた場合、この増加率は極めて低い気がします。その理由は中国政府がジェット燃料を価格統制している為であり、国際市況の実勢とはかけ離れていると考えられます。ただ今後、原油価格が若し下落し、ジェット燃料の国際市況も沈静化すれば大幅な価格改定で収益性が損なわれるリスクが減ることから同社の株価にとってはプラスに働くと考えられます。

チャイナ・デジタルTV(ティッカー:STV)

同社はケーブルテレビのデジタル化を促進するアクセス制限ソフトウエアを作っている会社です。中国ではケーブルテレビ自体はすでにかなり普及しています。現在1.48億世帯がケーブルテレビに加入しており、毎年、少なくとも1,000万世帯程度この数字は増えています。しかしそれらの多くはデジタル対応になっていません。デジタル対応の普及率は7%に過ぎません。中国政府は2015年までにデジタル化を完了し、アナログ放送を終わらせる計画です。北京五輪はデジタル化を促進するひとつの契機です。

デジタル化するには放送局の側の、所謂、ヘッドエンドと呼ばれる機器をアップグレードするとともに各家庭のセットトップ・ボックスにデジタル信号を解読するスマートカードを差し込む必要があります。同社はヘッドエンド側の装置とスマートカードの両方を作っていますが売上の9割はスマートカードから発生します。

現在、同社のマーケットシェアは51%で圧倒的に首位です。スマートカードの価格は安定的に推移しています。同社の営業マージンは54%であり、これは近年の数字に照らしてやや見劣りする数字です。販売管理費などの急増がマージン悪化の原因です。この他エレクトロニック・プログラム・ガイドのビジネスを立ち上げるためにその分野での研究開発費を積み増したりしているのもマージンを圧迫しています。同社の場合、売上成長の数字は顧客であるケーブルTV会社のデジタル化計画が事前にわかっているため比較的予想しやすいです。従って費用をいかに厳格に管理するかが経営のポイントになります。

シー・トリップ(ティッカー:CTRP)

同社は旅行の予約サービスをオンラインならびにオフラインで提供する会社です。顧客が同社のウエブサイトなどを経由してホテルや航空券を予約した場合、一定のコミッションを受け取るビジネス・モデルです。12月期の決算では総売上高は54%成長、ホテル予約は42%成長、航空券予約は72%成長、パッケージ・ツアーは71%成長でした。ホテル予約コミッションは売上の53%、航空券予約コミッションは売上の39%、パッケージ・ツアーは売上の6%程度を占めています。

ホテル予約部門では予約全体の約半分が大都市のホテル、残りの半分が地方都市のホテルの予約です。成長率で言うと地方都市の予約の成長の方が高い成長を示しています。このため当面は地方都市での業務提携先を積極的に拡充する戦略をとっています。いまのところ約6000のホテルと提携関係にあります。

一方、中国の航空業界自体は年率15%程度で成長しています。従ってシー・トリップの成長率はエア・トラベル自体の成長よりかなり早いスピードで成長しているわけです。現在同社は内外の75のエアラインと提携しています。

同社のウエブサイトに登録している顧客数は4200万人であり、これは2006年年末の3600万人から増えています。同社のグロスマージンは81%で、これは去年の80%から若干改善しています。同社は特に営業費用などの管理が行き届いています。今期の税率は7%と通常よりかなり低かったです。但しこの税率は今後また上昇する可能性もあります。なお心配された豪雪の影響はほとんどありませんでした。但し今年の旧正月はとりわけ寒かったので例年より旅行自体が若干低調だったと報告されています。今日紹介した銘柄のうちシー・トリップだけが新高値を更新中です。


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