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第118回 金鉱株の近況

2008年2月15日

今日のまとめ

  1. ドルのファンダメンタルズの悪化が金価格高騰の一因
  2. 需給関係面から見ても金価格は先高観が強い
  3. 操業上の問題などが産金各社の株価の明暗を決めている

1000ドルを窺う金価格

このところ金価格は堅調に推移しています。去年前半675ドルから725ドルのレンジで取引されていた金価格は9月から上昇トレンドに入り、現在911ドルに達しています。ゴールドの市場の調査会社として定評のあるジー・エフ・エム・エス社は今年の或る時点で金価格が1000ドルをつけるだろうと予測しています。それでは何故金価格がこのように堅調に推移しているのか、その背景を考えてみましょう。

蝕まれたドル

ゴールドに投資家の関心が向かう最初の理由はドルに対する不信感だと思います。近年、イラク戦争への戦費投入やポーク・バレリングと呼ばれる既得権益に絡む予算の奪い合いなどでアメリカの財政は悪化しました。実はこのような放埓な金融財政政策には前例があります。1961年、ケネディー大統領はベトナム戦争の戦費調達をやりやすくするためFEDに金融を緩和しろと圧力をかけました。同時に大型減税案を打ち出します。このときは議会がそれを阻止しました。ところが1963年にケネディー大統領が暗殺されてしまい、アメリカ人は強烈なショックを受けます。副大統領だったリンドン・ジョンソンはケネディーの後を受けて大統領に就任すると「ケネディーの遺志を継ぐ」という事を宣言し、ケネディーのやり残したイニシャチブを全部実行に移します。それまで健全財政などの見地からケネディーに反対していた反対派はケネディーに同情する圧倒的な世論の高まりに負けて大型減税を通してしまうのです。そればかりではなく、メディケアなどの社会福祉制度もこのケネディー暗殺後の、アメリカ国民がエモーショナルになっているときに相次いで可決します。これはちょうど9・11の同時多発テロの後にアメリカの世論が右傾化し、財政の悪化を招いた過程と酷似しています。ジョンソン大統領は低金利維持を最優先の政策とします。FRBはどんどんドル紙幣を増刷し、アメリカの国際収支は悪化しました。こうした、「不況のときにはどんどん財投をした方が良い」という考え方は経済学者ジョン・メイナード・ケインズの理論であり、それを信奉する人たちはケインジアンと呼ばれます。ジョンソン大統領のこの政策は当初成功を収めます。そこで米国の雑誌、『タイム』はWe are all Keynesians now.、つまり「我々は皆、ケインズ派だ!」と宣言するわけです。ところで相場の世界では『タイム』の表紙に載る様なアイデアはそれがピークで、後は下り坂になるというジンクスがあります。ケインズ派がわが世の春を謳歌したのも、やはり束の間のことでした。なぜなら1971年の8月にはジョンソン大統領の後を継いだニクソン大統領がドルの切り下げを発表せざるを得なくなってしまったからです。さらにベトナム戦争遂行に絡む放埓な金融政策ならびに財政政策がインフレの芽を世界経済にしっかり植えつけてしまいました。その後、1973年にOPECのカルテルによる原油価格引き上げが世界的なインフレの直接的なきっかけになるわけですけど、上で見てきたようにもうそれ以前にインフレになる環境は整っていたわけです。ケインズ派は「ベトナム戦争さえなければ我々の実験は大成功を収めていたのに」と嘆きました。でもそれは物事の順序を勘違いしていると思います。ベトナム戦争を遂行せんがためにケネディーはケインジアン的なレシピーを取ることを決めたわけであり、そもそも戦争やケネディーの暗殺という事件が無ければこういう展開にはならなかったのです。今回、ベトナム戦争をイラク戦争に置き換えてやるだけで1970年代初頭の資本市場のおかれた環境と今の環境が酷似していることがわかると思います。これはアメリカが70年代に経験したスタグフレーションがもう一度起こるリスクが高くなっていることを示唆していると思います。これまでのアメリカ、ヨーロッパ、日本などの経済成長を振り返ってみると、サブプライム・ローンに代表される新しい金融商品が仕掛け人となって経済成長や需要が創造されてきた部分が大きいです。でも、マネー・ゲームに打ち興じた時代は終わりを告げようとしているのです。このことはゴールドのような実物資産の価値が上昇することを意味します。現在の金価格はインフレ修正後の価値に直して考えるとまだまだ1980年の高値より遥かに安い水準にあります。

供給側からの説明

次に金の需給関係から最近の金相場の高騰の原因を考えてみましょう。ゴールドの需給関係をタイトにしているひとつの理由は生産が余り伸びていないことによります。下のグラフでもわかるようにゴールドの供給のうち最も大きな部分を占めるのは金鉱からの金の生産です。

しかし世界の金鉱からのゴールドの生産高はここ10年余り頭打ちが続いています。その理由は主要金山の埋蔵量が枯渇していること、金鉱がどんどん深くなり採掘コストが上昇していることなどによります。

主要な金生産国の中での生産高の変化を見てみると中国が近年生産高を伸ばしていることが注目されます。その反面、これまで成長のエンジンの役割を果たしてきたペルーは落ち込みを見せています。さらに歴史的に大きな生産高を誇ってきた南アフリカも近年どんどん凋落しています。

需要側からの説明

さて、需要の方に目を転じてみましょう。ゴールドの消費の中に占める最大の需要先はジュエリーのファブリケーション(加工)です。

ジュエリーのファブリケーション需要の増減を見ると最近原油高で好景気に沸いている中東からの需要が大幅に増えていることがわかります。これに加えて中国や、伝統的にファブリケーションの需要の多いインドなどからの引き合いが伸びていることがわかります。

金の需要で最近注目されているのはETFを通じた金投資からの需要です。ETFというのは上場投資信託のことを指しますが、投資家が株式市場を通じてこれらのゴールドETFを購入した場合、その購入額に相当する金の延べ棒をETF証券の発行根拠として指定信託銀行に保管する必要があります。従って金ETFの売買代金とETF向けの延べ棒の需要には或る一定の相関関係があります。ETFが人気になればなるほど現物の延べ棒への需要も増えることは言うまでもありません。ゴールドのETFはニューヨーク証券取引所や大阪証券取引所をはじめ世界の株式市場に存在します。とりわけ最近ではインドなどの新興国の株式市場でのゴールドのETF上場が計画されており、今後もETFの人気は持続すると考えられます。

ゴールドの需給関係からの最近の金価格高騰の説明をまとめると、近年、金の掘り尽しからだんだん生産が困難になっている状況にあって、中東、インド、中国などの新興国が豊かになることで需要が増えていて、さらにETFのような利便性の高い投資商品の開発によって新しい需要が生じたことが原因であるとまとめることが出来るでしょう。

金価格と金鉱株の株価のデカップリング

こうした長期での強気要因に加えて最近、南アフリカで電力が不足し、操業上の理由から金鉱の生産が相次いで停止に追い込まれたことも逼迫間を煽りました。このため金価格が上昇する一方で操業停止に追い込まれた産金会社の株式は売られるというデカップリングが進行中です。こうした状況を反映して現在の産金会社各社の株価は主に操業面での安定度、若しくはキャッシュ・フローの予測の立てやすさを切り口として序列が決まってきている印象があります。その観点からは最大手であるバリック・ゴールド(ABX)や財務管理に定評のあるゴールドコープ(GOLD)などが「勝ち組」として人気を博しています。その反面、南アの老舗の産金会社であるハーモニー(HMY)やゴールド・フィールズ(GFI)は最安値近辺をウロウロしています。南アの発電キャパシティーの不足は新しい発電所が完成するまで今後も慢性的に続くと思われます。それを断った上で、現在はこれらの金鉱は操業を再開しており、目先の業績に対する影響は一時的なものであると認識されています。また、ゴールドのみならずプラチナなどの値段も騰がっていますから、生産量で予想を下回った分はある程度市況価格の上昇で取り返せます。一方、アジアに目を転ずるとモンゴルのオユ・トルゴイ鉱山を所有するアイヴァンホー(IVN)の株価は最近の金価格の上昇に余り反応していません。これは同社の鉱山が未だ生産を開始していない準備段階であることに加えて、同社とモンゴル政府との間で締結される投資契約(Investment Agreement)がまだ調印に至っていない事を投資家が問題視していることによると思います。今年の6月にモンゴルの総選挙が予定されており、その投票の後に調印が持ち越される公算が高いです。モンゴルのバヤル首相はアイヴァンホーとその事業パートナーであるリオチント(RTP)の両社に対しては好意的であり、これまでに作成された投資契約の草案の条件を変更することなく早急に契約調印をすべきだと演説しています。また最近行われたモンゴルの国民に対するアンケートでも国民の79.5%はこのプロジェクトを支持するという意向を表明しています。オユ・トルゴイの所有権(エクイティー・インタレスト)に関しては現行の比率を改変すべきだという野党の声もありますがその一方で「あまりアイヴァンホーとリオチントに不利な条件にすると将来、どの企業もモンゴルのプロジェクトに参加したがらなくなる」ということを懸念する声も強いです。結局のところIAのエコノミクス(政府、参加企業のコスト負担比率ならびに分け前の分配比率)は現在の草案と余り大差ない水準で最終的に妥結するものと考えられます。これとは別に2月の上旬にリオチントは同社の現場責任者としてはエース級のキース・マーシャル氏をモンゴル担当にすると発表しています。リオチント社にとってモンゴルのプロジェクトの重要さを物語る人事だと思います。オユ・トルゴイからの本格的な生産開始は2011年にずれ込むことはほぼ避けられない状況ですが、それはすでに現在の株価水準に織り込み済みだと思います。


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